過去最大の額となる7億7900万ドルの債務不履行
アメリカ自治領のプエルトリコは1日に、この日が期日だった20億円の債務のうち7億7900万ドル(約800億円)の返済ができない債務不履行(デフォルト)を宣言しました。かねてからデフォルトが続いていたプエルトリコですが、初めて一般財源債のデフォルトとなりました。
参考記事:プエルトリコがふたたびデフォルトに。その背景とこれから
これまでよりも大きな額の不履行で、さらにこれまでは関連債務のデフォルトだったのに対し、今回は一般財源債の元本と利払いという内容でした。
「政府はこれまでずっとプエルトリコ国債の返済能力がないと言ってきた。これで音楽も鳴りやむことになるだろう」
と債務取引を管理するプエルトリコの政府開発銀行(GDB)は声明を発表しています。また、同銀行によるとプエルトリコ政府には現在2億ドルしか財源がなく、これから半年先までの投資家や退職者への支払いを行わなければなりません。
また、プエルトリコが年末に確保できる財源も昨年より減少して9500万ドルにまで落ち込むと予想されていて、GDBは公共サービスに影響が出かねない水準の財源だと警告しています。
オバマ大統領が前日に救済法案に署名
債務不履行となる期限を迎える7月1日の前日、6月30日にバラク・オバマ大統領は上院が29日に可決したプエルトリコの債務再編についての法案に署名しています。これを受けてプエルトリコのガルシア知事は債務モラトリアムを宣言。債権保有者からの訴訟も一時停止されることになります。
他の州と違い、自治領という溝のある立場にあったプエルトリコへの救済措置は議会の反対を受けて実現を見ずに6月末までずれ込んでいましたが、ようやく連邦政府の管理下で裁判での債務削減などが可能になりました。
参考記事:プエルトリコのデフォルトに対するアメリカ議会の債務再編に関する動き
世界経済への影響はまだ小さいが、プエルトリコ再建への道のりは長い
これによって債務返済への見通しが立ったことからS&Pプエルトリコ債券指数は上昇し、デフォルトの見通しをガルシア知事が発表する昨年の水準にまで戻しています。
州税、地方税、連邦税が免除され課税面で優遇されているプエルトリコ国債を保有する投資家は世界でも数多くいるため、今回の連邦政府の救済が決定したことに安心感が広がり、世界経済への影響は今のところ少ないようです。
プエルトリコ領内の公共サービスを滞らせないためにデフォルトを繰り返してきて、1日には一般財源債で過去最大となる金額の不履行が現実になったことでこれまで人気があったプエルトリコ国債を購入する人が回復するまでにはかなりの時間がかかるはずです。
プエルトリコが抱えている債務の総額は700億ドル。GDBが予想する今年の税収が9500万ドルにとどまっていることを考えると、債券にほぼ依存している現在の経済構造を根本から立て直す必要があります。
一時期、本土の大手企業の進出によって潤っていた経済が、連邦政府による法人への優遇措置の取り消しとともに波が引くように冷え込んでしまった現状をこれから先も持続的に成長していけるようにするには人材育成など地道な政策が求められるのかもしれません。
参照
https://www.theguardian.com/world/2016/jul/01/puerto-rico-default-debt-economic-crisis
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM02H29_S6A700C1NNE000/
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-06-30/O9LXG26KLVRA01
http://www.bloomberg.com/view/articles/2016-07-01/congress-s-work-with-puerto-rico-isn-t-done-yet
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