フェイクニュースの事例と対策

フェイクニュース



深刻さを増すフェイクニュースの影響

近年、私たちはスマホやパソコンを使ってインターネットから情報を得る機会が格段に増えています。しかし、ネット上では誤った情報も少なくなく、最近ではフェイクニュースという意図的に作られた誤報が出回るようになり、時には世論を大きく動かすほどの影響力を持つようになっています。

参考記事:新型コロナウイルスについてのインフォデミックとは?








「いつわり」の情報を多くの人が騙されてしまうのはデマと似ているような気もしますが、本や雑誌、新聞などよりも拡散する力のあるフェイクニュースは世界中で広がりを見せすっと人の心に入り込んでしまう怖さがあります。



それではフェイクニュースをクローズアップしてみましょう!




「フェイクニュース」の意味とは?


フェイクニュースは虚偽のニュース、情報という意味ではデマや虚報と同じ性質のものです。しかし、デマは人から人への伝聞を媒体とし、虚報はマスメディアによるものです。必ずしも意図的に流したものではなく、発信源の憶測や誤解から生まれた場合も多く含みます。



一方、フェイクニュースは次の点でデマや虚報とは異なった性格を持っています。


  • ネットやSNSを媒体にしている
  • 目的を持って意図的に流される


つまり、私たちの生活で時間と空間をぎゅっとインターネットの特徴を悪用した嘘のニュースなのです。



世界でインターネットを利用している人の数はおよそ35億人(2016年)におよび、世界の人口が73億人なので47.9%の人がインターネットを利用していることになります。また、Facebookの利用者(アクティブユーザー)は18億6000万人、ツイッターのユーザー数は3億1000万人。




新聞やテレビ、本などと違い、コンテンツを誰もが発信できるインターネット上で虚偽の情報を流し、またたく間に広まってしまうという特徴があります。



フェイクニュースの内容は、まったく最初から作り上げたものもあれば、実際にあったニュースの一部に手を加えてそれらしくしたものもありますが、その多くがインターネットやSNSの情報を拡散する力を利用して人々を意図的に動かそうとする人物によって流されています。実際にあったフェイクニュースを例に、どんな目的がその背景にあったのか見てみましょう。









フェイクニュースの事例




イギリスのEU離脱キャンペーン


イギリスで2016年6月23日に投票が行われた国民投票は、これまで加盟していたEU(ヨーロッパ連合)からの離脱の是非を問う重要な国民投票でした。当時、野党の英国独立党の党首だったナイジェル・ファラージ氏は離脱派の急先鋒でした。そんな彼がイギリスのEU離脱(ブレグジット)を実現するためにキャンペーン中に次のような主張をしていました。


「イギリスはEUに対して約3億5000万ポンドもの負担を毎週支払っている」


我々の国はEUから責務ばかりを負わされていて、それに見合うだけのメリットを享受できていないとファラージ氏は訴えていました。


6月23日の投票で当初の予想を裏切り、EUからの離脱に賛成する人が反対を上回りブレグジットが決定しますが、実は負担金は彼の言っていた数字の半額にも満たないことがわかり、本人もそれを認めたのでした。


情報を流したのが政治家であり、メディアにも露出していたことからいくらか他のフェイクニュースよりは既存のプロパガンダに近くはありますが、SNSなどでも拡散されている点では共通しています。


ファラージ氏の目的はポピュリズム政党である英国独立党の主張を実現するため。移民の排斥をするためには、人の流れに制限をかけないEUと袂を分かつ必要があったのでした。



ちなみにファラージ氏は役目を終えたとばかりに国民投票後にあっさりと党首の座を譲っています。



アメリカの大統領選挙


2016年の海外ニュースでブレグジットと並んで大きな注目を集めたのがアメリカの大統領選挙でした。多くの人が予想しなかった共和党候補のドナルド・トランプ氏が党の予備選を勝ち抜き、民主党のヒラリー・クリントン氏を破って第45代アメリカ大統領に就任しました。



特にクリントン氏との選挙戦が始まると、さまざまなフェイクニュースがアメリカ国内を駆け巡りました。



  • クリントン氏は悪魔崇拝者。また、児童奴隷、小児性愛者の組織の中心的人物
  • それに関する「ピザゲート」陰謀論
  • オバマ大統領はケニア出身のイスラム教徒
  • ローマ法王がトランプ氏を支持


その中でも大きな話題になったのが「ピザゲート」事件です。「ピザゲート」陰謀論はワシントンにあるピザショップ「コメット・ピンポン」がクリントン氏が関与している児童奴隷、小児愛者の拠点となっている偽の情報がTwitterに何者かが投稿し、6000回以上リツイートされました。











もともとは4chやredditなどの匿名掲示板で流布した情報だったものがTwitterでさらに拡散したものでしたが、大きなニュースにまで発展したのは話を信じたノースカロライナ州に住むエドガー・ウェルチ容疑者がコメット・ピンポンにライフル銃を所持して発砲するという事件が発生したためでした。


けが人は出ませんでしたが、ウェルチ容疑者は「ピザゲート」の真偽を確かめるために乗り込んだのだと供述しています。



トランプ氏、クリントン氏のいずれも根強いアンチが存在していた大統領選挙でしたが、クリントン氏を強く嫌う人たちによってピザゲートなどのフェイクニュースが流されたのでした。



また、一部の報道ではマケドニアの青年がトランプ氏を支持する人をターゲットにした政治サイトをいくつも立ち上げ、そこで支持者を呼び込むようなフェイクニュースを投稿し、Facebookで広めていたとされています。


このサイトにもネット広告が張られていますが、それによる収入を見込んでセンセーショナルな利益目的のフェイクニュースを流すケースは、日本で起きたDeNAのキュレーションサイトの問題にも通じるところがあります。




現在流布しているフェイクニュースはこうした広告収入を目的にしたものが多いようです。



また、熊本地震のライオン脱走情報の拡散のように、多くの人がリツイートし、記事を目にしてくれることから、注目を集めているという射幸心を満たす部分も見逃せません。









その他の海外フェイクニュース事例



Fake News Archives | Snopes.com



フェイクニュースをまとめたサイト、Snopes.comには世界中のフェイクニュースと思われる情報を集め、その真偽を判定しています。


  • ウィキリークスの創設者ジュリアン・アサンジ氏がエクアドル大使館から拉致され、ロンドンの道端で遺体となって発見された⇒嘘
  • カナダで145kgのエビを釣り上げた⇒嘘(過去にあったナマズの写真をエビに差し替え)
  • テキサス州でマリファナが合法化⇒嘘(合法化ではなく、個人の楽しむ範囲で許されている)
  • ニュージーランド人の女性がワニとセルフィーで写真を撮ろうとして死亡した⇒嘘
  • 45歳女性がかつて付き合っていた男性を襲うようにリスを調教し逮捕された⇒嘘(2014年に義理の父の家にレンガを投げ込んで窓を割った罪で逮捕された女性の写真を加工)
  • イギリスのエリザベス女王が退位し、孫のウィリアム王子が即位する⇒嘘(王室からそのような情報は発表されていない)





フェイクニュースへの対策


Googleは現行のアルゴリズムでは虚偽の情報を選別することはできないことから、ファクトチェックを専門にしているサイトや機関に協力してもらい、都市伝説や政治、健康、メディアそのものなどのテーマを中心に、そのページの信ぴょう性を確認できるタグを設置しました。



ファクトチェックラベルがGoogleニュースに登場。そもそもファクトチェックとは?




アメリカ大統領選挙におけるフェイクニュースの流布に大きく寄与してしまった、登録者数18億人を超えるFacebookも対策に乗り出しました。



こちらはFacebook上に流れてきたニュースに関してユーザーが虚偽の疑いがあると判断した場合に、同社に報告できるようにし、それをAP通信やファクトチェッカーが真偽を確かめてくれるというもの。


偽ニュースであると判断された投稿に関しては、シェアしようとすると警告メッセージが表示されます。



しかし、2017年9月24日に連邦議会選挙が実施されるドイツではまだSNS各社の対応が不十分であると指摘しています。3月15日にドイツ政府はヘイトスピーチやフェイクニュースの削除を怠ったSNS会社に最大5000万ユーロに上る罰金を科す法案を提出しています。



イギリスのEU離脱やアメリカの大統領選挙の例を見ても、ポピュリズムを支持する人たちをターゲットにしたフェイクニュースが流されています。保守系の連立与党であるメルケル政権にとっては移民の排斥を訴えている「ドイツのための選択肢(AfD)」に勢いを与える偽ニュースが選挙に影響してしまうことを危惧しています。




また、広告分析会社のMoatは記事の虚偽性を測定する「フェイクニュース指数」を開発しています。その指数をもとにジャーナリストや編集者、ファクトチェッカーと協力して同社がブラックリストを作成します。名を連ねてしまったサイトは広告のインプレッションが無効となる、つまりサイト訪問者が広告を見ていないのと同じ状態となり、収益が得られなくなります。




フェイクニュース撲滅の最善策は? 広告収入をなくしてしまえばいい|WIRED.jp





私たちユーザーができること


GoogleやFacebook、Moatのような取り組みはこれからさらに広がり、精密なシステムへと変化していくでしょうが、それでもフェイクニュースを拡散させているのはユーザーに他なりません。もちろんいかなる目的にしても偽の情報を流す人に罪がありますが、それを助長する役割は避けなければなりません。


フェイクニュースを広めないために、ユーザーとしてできる対策には次のようなことが挙げられるのではないでしょうか。




  1. 1つの情報源だけはなく、複数の方法で真偽を確かめる。また、そのサイトにしか掲載されていないニュースではないか別のサイトや媒体に当たる
  2. 自分自身のリツイートや「いいね!」が欲しいという気持ちで怪しい情報を拡散しない
  3. Facebookの虚偽情報について同社に報告する




Zuckerberg says Facebook has a new mission as it deals with fake news and hate speech(CNBC英字サイト、「ザッカーバーグ氏、Facebookはあらたにフェイクニュースとヘイトスピーチへの対策を課題にするとコメント)




少し面倒くさいと思ってしまいますが、悪意を持った誤情報による被害を未然に防ぎたいものです。こうしたフェイクニュースを確認した場合にはSNSなどで共有するのも1つの方法かもしれません。









参考サイト

米国の学校は「フェイクニュースに踊らされないためのリテラシー」を教え始めている|WIRED.jp
















☆ニュース・イングリッシュ☆


  • フェイクニュース…fake news
  • ~の利用者数…the number of ~
  • 18億6000万人…1.86 billion
  • 警告メッセージ…warning message
  • 罰金を科す…carry a fine, impose a fine





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参照

https://www.theguardian.com/media/2016/dec/18/what-is-fake-news-pizzagate
https://gaiax-socialmedialab.jp/post-30833/
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/12/post-6501.php
http://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-38179131
https://www.buzzfeed.com/sakimizoroki/fake-news-on-sns-and-democracy?utm_term=.mtnmwbX9QB#.qdy4Vra9Yg
http://wired.jp/2017/03/13/quash-fake-news/











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