国連の安全保障理事会の決議にもとづいたものと、各国独自に行っている北朝鮮への制裁措置とは
トランプ大統領の就任以来、アメリカと緊張がもっとも高まっている国の1つが北朝鮮です。トランプ政権になり、アメリカは軍事化を進める北朝鮮への対応が一変していますが、これまで国際社会はミサイルの発射や核実験を繰り返す同国に国連決議による制裁と各国独自の制裁を実施しています。
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北朝鮮に対して国際社会はどのような制裁措置を取ってきたのでしょうか。
ニュースなどでもあまり伝わっていない北朝鮮への制裁についてクローズアップしたいと思います。決議の番号がずらずらと並んでいますが、ポイントは黄色のハイライトになっているので、そこを中心にご覧ください。
また、それぞれのトピックでさらに深く北朝鮮情勢を知るための書籍も紹介しています。ご活用ください。
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国連安保理の制裁決議の一覧
国連安保理の決議にもとづいた北朝鮮に対する金融制裁措置は2017年4月現在までに7つの決議が採択されています。
- 安保理決議 第1695号(2006年7月15日)
- 安保理決議 第1718号(2006年10月14日)
- 安保理決議 第1874号(2009年6月12日)
- 安保理決議 第2087号(2013年1月22日)
- 安保理決議 第2094号(2013年2月12日)
- 安保理決議 第2270号(2016年3月2日)
- 安保理決議 第2321号(2016年11月30日)
- 安保理決議 第2356号(2017年6月2日)
- 安保理決議 第2371号(2017年8月5日)
- 安保理決議 第2375号(2017年9月12日)
第1695号(2006年7月15日)
2006年7月5日に北朝鮮が弾道ミサイルを発射したことを受けて採択されました。同国に対する経済制裁はこれが最初のものとなります。
核、弾道ミサイル、大量破壊兵器の計画に関連する物資と資金の移動を凍結する内容となっていますが、後のものと違い、加盟国に要求するのにとどまっています。
のちの第1874号で要求から要請へ、第2094号で決定となり義務付けの扱いとなりました。
第1718号(2006年10月14日)
制裁の実施が加盟国に義務付けられたのは2006年10月9日の核実験の実施発表後に採択された第1718号以降です。
内容は安保理または制裁委員会が指定した私人が所有する資産の凍結でした。
日本はこの決議をふまえて北朝鮮への奢侈品24品目の輸出禁止を実施。
第1874号(2009年6月12日)
2009年4月5日のミサイル発射発射実験、そして5月25日核実験の実施に対する決議が第1874号です。
第1695号の内容を加盟国に対して「要請」から「要求」に格上げしたのに加え、北朝鮮への支援や援助(公的・民間両方の貿易関連の支援・援助を含む)の凍結も要求しています。
第2087号(2013年1月22日)
2012年12月12日に北朝鮮が「人工衛星」と発表していたが、実際はミサイルの発射が行われたとみられ、国連安保理は制裁決議を採択。
第1718号の内容で、指定する私人を追加しました。
第2094号(2013年2月12日)
2013年2月12日に核実験が実施され、第2094号が採択されます。第1874号で「要求」だった兵器関連の資産と北朝鮮への支援・援助に対する凍結が「決定」となり、資産凍結の私人もさらに追加されます。
そうしたこれまでの制裁内容だけでなく、加盟国内での
- 北朝鮮の銀行の開設の禁止
- 北朝鮮の合弁企業の設立の禁止
- 北朝鮮の銀行持ち分の取得の禁止
- 北朝鮮のコルレスの確立や維持の禁止
- 北朝鮮の金融機関員の追放
が要請されました。コルレスとは、銀行が外国為替取引をする際に自行の海外支店のような役割をしてもらう契約をすることです。
また、加盟国においてFATF勧告(マネーロンダリング対策およびテロ資金供与対策に関する国際基準)の奨励を決定しています。
第2270号(2016年3月2日)
2016年1月6日の核実験、そして2月7日の弾道ミサイル発射を北朝鮮が行ったことに対して採択されました。
あらたな内容ではありませんが、1695号と1874号の追加措置、1718号の追加指定、2094号の「要請」が「決定」となり「奨励」が「要請」へと変わっています。
2016年の9月に行われた核実験に対して採択されたのが11月30日の第2321号でした。やはり、1718号の追加指定と1695号、1874号、2094号の追加措置が実施が決定されました。
特にこの採択で2015年の輸出の38%を超える石炭を北朝鮮が輸出できないように定めています。これまで無制限に北朝鮮から石炭を輸入していた中国がこの決議に賛成したことが大きなポイントでした。
弾道ミサイル実験を繰り返し実施する北朝鮮に対して採択された制裁措置。
金正恩(キム ジョンウン)朝鮮労働党委員長の資産管理を行っている部署とつながりがある高麗銀行や朝鮮人民軍の「戦略ロケット軍」など4団体・14個人を資産凍結や渡航禁止の制裁対象に追加することが決定しました。
大陸弾道間ミサイル級(ICBM)の発射に対する制裁措置が前回の採択から2ヶ月後に全会一致で決まりました。
前回から焦点となっていた原油供給の遮断は今回も除外されたものの、石炭、鉄鉱石、鉄、方鉛鉱、鉛、海産物などの北朝鮮からの輸出が止められることになりました。また、北朝鮮の労働者が国外で働くことや合弁会社の設立も禁止されました。
第2375号(2017年9月12日)
9月3日に実施された6回目の核実験に対し決議が取られ、全会一致で採択されました。
今回も全面輸出禁止は除外されたものの、初めて石油の供給に上限が設けられました。また、繊維製品の輸入禁止、国連加盟国への北朝鮮籍の海外労働者に対する労働許可の発給禁止などこれまででもっとも厳しい措置が取られました。
また、北朝鮮へのコンデンセートと天然ガス液の輸出は全面禁止となっています。
あらたな内容ではありませんが、1695号と1874号の追加措置、1718号の追加指定、2094号の「要請」が「決定」となり「奨励」が「要請」へと変わっています。
第2321号(2016年11月30日)
2016年の9月に行われた核実験に対して採択されたのが11月30日の第2321号でした。やはり、1718号の追加指定と1695号、1874号、2094号の追加措置が実施が決定されました。
特にこの採択で2015年の輸出の38%を超える石炭を北朝鮮が輸出できないように定めています。これまで無制限に北朝鮮から石炭を輸入していた中国がこの決議に賛成したことが大きなポイントでした。
第2356号(2017年6月2日)
弾道ミサイル実験を繰り返し実施する北朝鮮に対して採択された制裁措置。
金正恩(キム ジョンウン)朝鮮労働党委員長の資産管理を行っている部署とつながりがある高麗銀行や朝鮮人民軍の「戦略ロケット軍」など4団体・14個人を資産凍結や渡航禁止の制裁対象に追加することが決定しました。
第2371号(2017年8月5日)
大陸弾道間ミサイル級(ICBM)の発射に対する制裁措置が前回の採択から2ヶ月後に全会一致で決まりました。前回から焦点となっていた原油供給の遮断は今回も除外されたものの、石炭、鉄鉱石、鉄、方鉛鉱、鉛、海産物などの北朝鮮からの輸出が止められることになりました。また、北朝鮮の労働者が国外で働くことや合弁会社の設立も禁止されました。
第2375号(2017年9月12日)
9月3日に実施された6回目の核実験に対し決議が取られ、全会一致で採択されました。
今回も全面輸出禁止は除外されたものの、初めて石油の供給に上限が設けられました。また、繊維製品の輸入禁止、国連加盟国への北朝鮮籍の海外労働者に対する労働許可の発給禁止などこれまででもっとも厳しい措置が取られました。
また、北朝鮮へのコンデンセートと天然ガス液の輸出は全面禁止となっています。
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各国の独自制裁
北朝鮮の核実験やミサイル発射の実施に対し、国連の安保理で決定した内容とは別に、それぞれの国で制裁を行っています。
日本
やはり2006年7月に行われたミサイル発射から日本の北朝鮮に対する経済制裁は始まっています。その後も続いたミサイル発射や核実験を踏まえてこれまでに次のような制裁を行っています。
- 不定期貨客船の万景峰(マンギョンボン)92号の入港禁止
- 北朝鮮の政府関係者の入国を原則禁止
- 日本の国家公務員が北朝鮮に渡航するのを見合わせ、一般の人にも自粛を要請
- 北朝鮮のチャーター機の入国禁止
- 兵器関連の輸出管理を厳格化
- 北朝鮮国籍の人の原則入国禁止
- すべての北朝鮮籍の入港禁止
- 北朝鮮へのすべての輸出禁止
- 北朝鮮からのすべての輸入禁止
- 第三国を通しての貿易の禁止
- 北朝鮮への原則支払い禁止
- 支払手段等の携帯輸出の届け出義務金額の引き下げ
しかし、2014年5月の日朝合意のもとに、一時人の往来に関する制裁が解除されましたが、2016年9月の核実験に対して再び制裁の強化を決定。北朝鮮に渡航した後の再入国を禁止するなどの措置が取られています。
韓国
北朝鮮との関係で常に最前線にある韓国も、やはり日本と同じように大量破壊兵器や核の開発につながるような資金源を断つ制裁を実施しています。
2016年12月には国内で働いていた核・ミサイル関係の外国人研究者が北朝鮮に渡った場合の再入国や寄港した船の入港の禁止を強化しています。
また、労働党や党中央軍事委員会、高麗航空、石炭の輸出や海外への労働者派遣を行う36の企業や団体や、黄炳瑞(ファンビョンソ)軍総政治局長、崔竜海(チェリョンヘ)党副委員長を含む3人の個人をあらたに経済制裁の指定に追加し、資産の凍結と韓国との取引禁止を決定しています。
アメリカ
アメリカは2008 年 6 月に「国際緊急事態経済権限法」と「国家緊急事態法」にもとづいて、大統領令第 13466 号と大統領布告第 8271 号が発令されています。経済制裁プログラムの所管は財務省の外国資産管理局があたっています。
北朝鮮国籍の人が所有する資産や利益の凍結は2000年6月から現在も継続しています。さらに、北朝鮮への送金や支払、預金引出しを禁止しているほか、同国とつながりを維持している海外企業に対しては2次制裁を加えるという大統領令が出ています。
2017年9月26日には北朝鮮の8銀行および中国、ロシア、リビア、アラブ首長国連邦(UAE)で活動する北朝鮮の銀行関係者を制裁対象に指定し、資産の凍結とアメリカ人との取引が禁止されました。
EU
EUでは2007 年 3 月の「北朝鮮に対する制限措置に関する EU 理事会規則」があり、その後の北朝鮮の軍事拡張に対応して内容は強化されています。
2016年には核・弾道ミサイルを対象とした投資だけでなく、これまでの兵器関連事業や金属工学、金属細工、航空宇宙分野にまで適用範囲を広げました。
さらにコンピューターや鉱業・化学物製造業・精錬業と関連するサービスを北朝鮮国籍の人や企業に提供することを禁止しています。
☆ニュース・イングリッシュ☆
- 経済制裁…economic sanctions
- 国連安全保障理事会…United Nations Security Council Resolution
- 大陸間弾道ミサイル…Intercontinental Ballistic Missile(ICBM)
- 核実験…a nuclear test
- 決議を採択する…adopt a resolution
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参照
http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_10249599_po_0933.pdf?contentNo=1
http://cistec.or.jp/export/keizaiseisai/saikin_keizaiseisai/index.html#3_kitachousen
http://japanese.donga.com/Home/3/all/27/792756/1
http://www.jiji.com/jc/article?k=2016120200409&g=prk
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