「食品ロス」の現状や対策は世界でどのようになっているのか。





どうすれば削減できるのか。世界の食品ロス事情

食料事情に余裕がある社会になってくると、過剰に食品を生産してしまったり賞味期限が切れてしまったりして、大量の食べ物が廃棄されます。日本だけでも外食やコンビニ産業での食料廃棄が問題になっていますが、世界規模で考えるとなんと消費されている量の3分の1にあたる量が捨てられているんです



そもそも食品ロスとはどんな意味なのか、そしてその問題点や現状、世界各国の対策についてクローズアップしたいと思います。







食品ロスとは?英語では2つの意味に分かれる

日本でも最近では食品に関するニュースとして、食料廃棄について食品ロスやフードロスという言葉を耳にするようになりましたが、日本の行政ではそれらを「まだ食べられるのに捨てられる食料」という意味で使っています。


しかし、英語で"food loss"というキーワードで検索すると、一緒に"food waste"という言葉も結果に出てきます。これは国連食糧農業機関(FAO)の定義では以下のようになっています。




  • 食品ロス/フードロス(food loss):食料の量的、あるいは質的な価値が下がること
  • 食料廃棄(food waste):まだ食べられるのに廃棄されるもの。食品ロスの一部だが、人の価値観や経済観念によって生み出されていることに注目するために設定したもの








FLW-Definition-and-Scope-version-2015.pdf



世界の食品ロスに関する統計



現在のアメリカ国内で流通している食品の30%~40%は廃棄されているという統計が農務省の推計で出ています。食料として出回りながら、人の口に入ることがなく無駄になってしまう食べ物がそれだけの量あるんですね。




世界全体で見てみると、廃棄される食品の量は毎年13億トンになります。これは世界の食料消費の3分の1にあたります。その半分の量で充分な栄養が取れていない発展途上国の飢餓状態の人たち(8億500万人)が一人残らずちゃんとしたご飯を食べられることになります(国連世界食糧機関 2014年10月の報告より)。



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国連環境計画の統計では、経済的に豊かな国が廃棄する食料の量は、サハラ砂漠より南のアフリカで生産する食料と同じくらいだと見積もられています。



ちなみに日本の食料廃棄量は1800万トン前後で、市場に出回っている食品のうちの2割を超すくらいになっています。まだ食べられるけれど賞味期限が近づいたりパッケージに傷がついてしまって市場に出回らない食料は年間500万~800万トンになります。660万トンとしたら、平均的な成人男性の体重で10万人分になります。






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食品ロスが出る原因は?



食料廃棄の原因は国によって特徴があり、30%~40%が廃棄されてしまうアメリカや日本のような先進国ではそのような商品価値が下がってしまったものや、食べ残しなどの食品ロスが多い傾向にあります。



  1. 生産過程での、生産調整(豊作時など)や規格外品の除外
  2. 保存過程での、劣化
  3. 加工過程での、規格外品の除外や流通からの返品
  4. 流通過程での、売れ残りや食べ残し、準備超過による処分
  5. 消費過程(家庭)での、食べ残しや期限切れによる処分




さきほどの世界における食品ロスの定義で言うと、規格外品の除外や準備超過、食べ残しなどは食品廃棄(フードウェスト)に入る原因となるでしょう。




特に日本では賞味期限、消費期限への意識がいい意味でも悪い意味でも高く、また外食産業の持ち帰り禁止の習慣に加えファストフードのオペレーションといった要因が挙げられます。






一方、インドでは道路や鉄道網が発達していないため、収穫した果物の30%が廃棄されてしまっています。



気温が高いインドでさらに時間のかかる輸送のあいだに果物が腐ってしまい売り物にならなくなってしまうからです。












食品ロスの問題点



必要な人に行き渡らない食糧問題や、経済的な損失だけではなく食品廃棄は環境にも悪影響を与えます。国連環境計画では以下のように食品廃棄の環境問題への側面を指摘しています。




「食料を大量に廃棄することは、環境にも悪い影響を及ぼします。肥料や農薬などの化学物質の無駄に利用しますし、運送するための燃料を過剰に利用することになります。また食品が腐敗すると、気候変動の原因の一つである有害な温室効果ガス、メタンガスが発生します


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つまり、気候変動といった地球温暖化に食品ロスがつながっているということです。



また、食品ロスや食品廃棄のための人件費など、経済的なコストがかかるという問題点もあります。





食料廃棄を削減する海外の国々の改善、解決策



世界的に問題になっている食料廃棄について、少しずつ削減するための取り組みが広がってきています。それぞれの国の動きを見てみましょう。




フランス

2015年5月21日にまだ食べられる食品を大型スーパーマーケットが廃棄することを禁じる法案が全会一致で可決されました。「食料廃棄禁止法」と呼ばれるこの法律では廃棄を禁止すると同時に、慈善団体への寄付が義務付けられています。違反するたびに3750ユーロ(約48万円)の罰金が科せられます。




イギリス

大型スーパーの「Tesco(テスコ)」は展開しているチェーン店のうち10店舗で売れ残り食品を寄付する活動を開始しています。寄付先はDVから避難してきた女性を保護する施設や貧困家庭にいる子供に朝食を提供する施設などになっています。




また、Community Shopというスーパーはちょっと変わったシステムを取っています。ロンドンとヨークシャー地方に2店舗あるスーパーなのですが、始めから低所得者にのみ開かれていて、「お店の近くに住んでいる」ことと、「生活保護や失業保険のような国から何かしらの援助を受けている」ことが条件になっている会員制になっています。商品は賞味期限が迫っているものやパッケージに傷がついているもので、通常の30%ほどの値段で販売されています。




また、Sehunoh Design Studioが開発した「Foodee」というアプリは食品の消費期限が近づくとスマートホンで教えてくれる機能を持っています。さらに登録した食材でできる料理のレシピまで教えてくれる優れものです。



冷蔵庫の中で食材を腐らせてしまい無駄になってしまうのを防ぎ、家庭内での食品廃棄を削減する助けとなってくれます。






デンマーク


賞味期限切れだけを扱うスーパーマーケット「WeFood」が2016年2月22日にオープンしました。賞味期限切れの食品を売るスーパーはイギリスのCommunity Shopなど他にもありますが、このお店はそれだけを扱っています。これは世界初のこと。オープニングセレモニーには女王のマルグレーテ2世や環境食糧大臣も出席しています。




価格は最大で50%くらいの割引きがされていて、ホームレスを支援する非営利団体Fødevarebankenとキリスト教系の慈善団体DanChurdAidが共同経営しています。




フィンランド

フィンランドではクラウドソーシングという現代ならではの方法で食料廃棄を減らそうとしています。2015年9月1日にリリースされた「Froodly」というアプリではスーパーマーケットの賞味期限切れの食品をシェアすることができる。




Contributor(コントリビューター)と呼ばれる情報提供者が、賞味期限が近づいていて割引価格で販売されている商品をスマートホンで撮影してアプリにアップロードします。それを一般ユーザーが割引商品の内容や販売場所、価格などを参考にしてシェアする食品を決めるという仕組みです。




アメリカ

アメリカのスターバックスは2016年3月22日に、複数のNPOと連携して全米国内にあるおよそ7600店舗で売れ残った賞味期限切れの食品をフードバンクに100%寄付するという発表を行いました。


スターバックス 軽食 食品ロス


フードバンク」とは、まだ食べられるのに捨てられてしまう食料(食品ロス)を、なくて困っている施設や人に届ける取り組みのことをいい、食料問題を解決する方法として注目を集めています。




食べられるのに食べられなくしてしまっている食べものを減らそうという、食品廃棄への対策は世界中で広まりつつあります




スターバックスのアイデアはチェーン店で働く従業員が考えたそうですが、2010年からペーストリーの寄付を始めていて、今回は売れ残りの食品すべてに及ぶことになります。




スターバックスは最初の1年で500万食を配布し、2021年までにはその10倍の5000万食にし、その時点で売れ残り商品の100%寄付を達成する計画だそうです。




実はアメリカのファストフードではケンタッキー・フライド・チキンやタコベルなどもすでに取り組んでいて、これは食品の無駄を削減だけでなく、経済格差の大きなアメリカではフードバンクによる食事の提供で生活に困っている人たちを助ける目的も持っています。






また、ネスレやテスコなどのCEO40人以上からなるChampions 12.3は2030年までに持続的発展の目標達成を目指すSDG Target 12.3という運動の促進を提唱しています。同年までに小売業や消費者の1人当たりの食品ロスを現在の半分に減らすというのが彼らの目標となっています。





この取り組みによると、フードロスやウェストへの対策に1ドルかけるごとに14ドルコスト削減につながる費用対効果が得られるという発表を行っています。環境への負担という面だけでなく、ビジネスにとっても食品ロスを減らすことがメリットになると、SDG Target 12.3はコメントしています。





また、ハイアット、インターコンチネンタル、ヒルトンなどの大手ホテルは2017年3月から食品ロスを減らす12週間の試験期間を実施することを決定しています。ロックフェラー財団やWWF、アメリカホテル協会(AHLA)が主導して行われたもので、やはり2030年までにフードロスの量を減らすことを目的としていて、その啓発を兼ねているようです。











日本でも「訳ありアウトレットGL(楽天市場店)」で、賞味期限が近いものやパッケージの破れ、凹み、つぶれなどがある訳あり商品を低価格でこうにゅうすることができます。この機会に利用されてみてはいかがでしょうか。














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参考記事
http://foodlosschallenge.com/foodloss.html
http://www.csmonitor.com/Business/The-Bite/2017/0315/How-businesses-can-grow-1-to-14-by-reducing-food-waste
https://www.greenbiz.com/article/these-hotels-are-fighting-food-waste-one-guest-time



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