「ボコ・ハラム」に対するための軍事費150億ドルを前政権内の人物たちが詐取
ナイジェリアのグッドラック・ジョナサン前大統領の政権時代に、イスラム過激派「ボコ・ハラム」との戦闘のために充てていた150億ドル(およそ1兆6000億円)に相当する財源を失くしていたという事実がイェミ・オシバジョ副大統領によって明らかにされました。
「消えていました……。詐欺と不正行為で……。前政権の防衛費のものでした」
3日にオシバジョ副大統領が執務室から放送した声明で、そうコメントしています。
150億ドルの財源は詐欺の武器契約によって消えてしまっていて、現在グッドラック前大統領の側近数人がそれに関わっていたとして公判中。
オシバジョ副大統領がイバダンの大学で行った演説で、政権内の不正によって消えてしまった1兆6000億円は、ナイジェリアの外貨準備高270億ドル(およそ2兆8800億円)の半分以上に当たる金額だと説明しています。
元国家安全保障顧問のサンボ・ダスキ氏や軍隊幹部、請負業者が被告として法廷に立っている人物は、全員が罪を否認しています。中心人物と見られているダスキ氏はジョナサン前大統領の選挙資金を獲得するために武器の契約をでっちあげ、その分の軍事費数十億ドルを流用した罪に問われています。
また、アレックス・バデー前防衛長官は軍関係者のための給料から1980万ドルを不正に流用し、個人目的に使用した罪で起訴。
繰り返し行われてきた公的資金の横領
ライ・モハメッド情報大臣の調査報告では、2006年から2013年までの間に公的資金を盗み出した人間は55人、67億ドル(7160億円)に上ります。ジョナサン前大統領の就任期間は2010年から2015年。それよりも前から公的資金の横領が行われていたということ、そして、今回の150億ドルという金額の多さにも
それに対し、昨年に就任したムハンマド・ブハリ大統領は資金の回収を急ぐとともに、政治の腐敗を一掃する姿勢を見せています。
「この国の公職につく者は決して国の資産をかすめ取ることはできないし、それをして逃れられるとも思わないで欲しいというメッセージを送ることが重要である」というイバダンの大学でオシバジョ副大統領の言葉からも現政権の意気込みが伝わってきます。
原油価格下落による経済難に政治腐敗、失われた150億ドル。ブハリ大統領に課せられた使命
ナイジェリアは今深刻な経済危機にあり、国の36州の3分の2が労働者に給料が払えない状況に沈んでいます。それもアフリカの中でも有数の産油国のナイジェリアは、昨年から続く原油価格の大幅な下落の影響を受けていることが原因にあげられます。
参考記事:原油価格がそろそろ回復に向かう?OPEC加盟国の思惑は
前政権から引き継いだ直後、ブハリ大統領は財政状況を確認して「空の金庫」だと驚くとともに嘆く一幕もありました。
横領された財源は、2009年にイスラム国家を樹立するという目的のもとに活動を開始した武装勢力「ボコ・ハラム」に対抗するために必要な軍備を整えるために予算に組み込まれたもの。元軍の将軍だったブハリ大統領は「気が遠くなるよう」な金額を、政治の秩序とともに資金を回復する重責を果たしていかなければなりません。
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