北アメリカからメキシコへと大移動をするオオカバマダラ
どうしてこれだけの距離を方角を見失わずに、しかも世代をまたぎながら移動できるのか不明な点が多かったのですが、ワシントン大学の研究によって脳の仕組みについてまた1つ明らかになりました。
オオカバマダラの生態
英語でMonarch Batterfly(モナーク・バタフライ、蝶の帝王)と名づけられている蝶で、大きさは5cmほど。カナダ南部とアメリカ北部に多くが分布していますが、西インド諸島やオーストラリア、ニュージーランド、カナリア諸島などにも生息しています。
そのなかでも渡りをするのは北アメリカのオオカバマダラだけで、8月の下旬に花の蜜をすいながら1世代のうちに南下していきます。北アメリカを出発する蝶は寿命が9~10か月なのに対し、南部アメリカやメキシコを出発して北上する蝶は1~2ヶ月しかありません。
#HaftanınFotoğrafı: Kral kelebekleri (Danaus plexippus), Meksika. pic.twitter.com/ShscjsGD6G— WWF-Türkiye (@WWF_TURKIYE) 2016年4月11日
そのため北アメリカに戻るのに3世代あるいは4世代をかけて移動し続けるのです。このときには南下のときと違い、一斉ではなくそれぞれに北上していきます。幼虫の餌となる植物を見つけたところでメスはそこに卵を産みつけて一生を終え、次の世代がまた北アメリカを目指して移動していくのです。
2004年には越冬の移動を推定で5億5000万匹が一斉に南下していたのが、2013年には3300万匹に激減しました。森林伐採や気象条件のほか、除草剤の使用などの影響で、産卵の場所であり幼虫の餌になるトウワタが減少してしまったことが大きな原因だと考えられています。
森林伐採や除草剤の影響で減っているトウワタの葉を食べるオオカバマダラの幼虫Enlist Duo: Effective New Herbicide or Monarch Butterfly Threat? https://t.co/y00z9U28j9 #gmo #24D #glyphosate pic.twitter.com/1w5ew8zihf— GMWatch (@GMWatch) 2016年11月30日
オオカバマダラとトウワタの関係はとても深く、毒性のアルカロイドが含まれていて、幼虫はこれを体内に蓄積することで鳥などの天敵から身を守っています。この毒は蛹や成虫になっても体に残存します。
オオカバマダラの脳の構造
科学者たちによってその脳の構造が明らかになりました。これまでにオオカバマダラが1日の中の時間と地平線の太陽の位置を把握する能力があることがわかっていましたが、それらの情報をどのように集め、処理しているのかが不明なままでした。
ワシントン大学の研究チームを率いるエリ・シュリザーマン教授によると、オオカバマダラは視覚的な能力を使って、あらかじめ決めたルートを通って移動をしているそうです。
2つのニューロンメカニズム
この脳の機能を説明するのが2つのメカニズムです。
- 触角に備わった体内時計ニューロン
- 目に備わった方位ニューロン
これらの能力によってオオカバマダラは太陽の位置を常に把握することができているということです。
シュリザーマン教授はBBCの取材に対し「神経回路が2つの信号を受け取ると、それらを統合します。それは、正しいコースから外れないように修正が必要になったときに知らせてくれる、制御信号とどうつながっているかによっている」と説明しています。
もちろん、メキシコに南下するときだけではなく、北米に帰るときにもこのメカニズムによって正しいルートを通って戻ります。その際、コンパスの先を南西から北東へと変えての家路になります。
まだまだシュリザーマン教授たちの考えたモデルには、オオカバマダラの脳や体の構造、行動のそれぞれと照らし合わせた検証が必要ですが、将来的にはこの神経回路を備えたロボットの昆虫を製作することも目指しています。
長距離移動の起源
これまでオオカバマダラの大移動は西インド諸島やオーストラリア、ニュージーランド、カナリア諸島などの地域の個体は移動をしないことから、1800年代になって始まったものだと考えられてきました。しかし、マーカス・クロンフォースト氏らが「ネイチャー」誌に寄稿した論文によると、数百万年前の進化からすでに長距離移動を行っているということがわかりました。
クロンフォースト氏たちはマダラチョウ101種類の遺伝子を調べ系統樹を作り上げたところ、オオカバマダラの祖先はおよそ200万年前に集団移動をする種類であることが判明しました。
その種類が約2万年前くらいに北アメリカ南部や南米に渡り、おそくても2000~3000年前くらいには太平洋や大西洋を横断して生息するようになったということです。越冬のために長距離を移動する必要がなくなったために、熱帯地域に生息しているオオカバマダラはその能力を失ったのではないかとクロンフォースト氏は考えています。
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参照
http://www.pteron-world.com/topics/world/monarch.html
http://naturescene.jp/wl/wl007.html
http://www.afpbb.com/articles/-/3027836
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