初のイスラム教徒のロンドン市長に当選したサディク・カーン氏と「公営住宅」


8年ぶりに労働党の市長



5日にイギリスの首都であるロンドンの市長選挙が行われ、労働党に所属するサディク・カーン氏が当選しました。西洋諸国では初となる、イスラム教徒の市長誕生です。現在の市長はイギリスのEU離脱を支持した保守党のボリス・ジョンソン氏で、8年の任期が終了していました。


参考記事:英国のEU離脱に賛成の立場の人、反対の立場の人









カーン氏の得票は1310143票で得票率は57%。対立候補だった保守党のザック・ゴールドスミス氏は次点で994614票の得票率は43%という結果になっています。歴史的な勝利に、カーン氏は「恐れを乗り越えて希望を選択し、分裂を乗り越えて団結してくれたロンドンっ子を心から誇りに思う」というスピーチを行っています。



自分のような公営住宅で育ったような人間がロンドン市長になる日が来るとは思わなかったとも述べています。



労働党のジェレミー・コービン党首はツイッター上でカーン氏に「すべての人にとって公平なロンドンを作り上げるために、これから君と一緒に仕事をすると思うと今から待ちきれない思いだ」と祝福の言葉をつぶやいています。ちなみにつけていたハッシュタグは"YesWeKahn"。




一方、現職のジョンソン市長は選挙の結果を受けて次のようにコメントしています。


「イギリス国内の政治をよりよき方に導けるだけの、大きな権威を持った座につくことになるサディクにとにかくおめでとうと言いたい。何事もうまくいくよう願っている。明日の朝にでも電話をするつもりだ」




対立候補のゴールドスミス氏と対照的なカーン氏





サディク・カーン氏は現在45歳。演説の中で公営住宅出身と自身のことを語っていましたが、父親はパキスタンからイギリスに移住してきた人でタクシードライバーでした。大富豪の家に生まれたザック・ゴールドスミス氏とは対極的な環境だと言えるでしょう。



政府の補助金が出る住宅で生まれ育ち、3つの寝室に7人の兄弟と部屋を分け合いながら生活をしていました。中産階級の人間であっても、ロンドンの高い家賃と物価の中で暮らすのは楽なことではなかく、公営住宅で不安なく暮らせたことがとてもありがたかったとカーン氏は当時を振り返っています。



人権弁護士として活躍したカーン氏は、フランスやベルギーなどの同時多発テロ事件を受けてイギリス国内のイスラム教徒への反感が強まっている中で、「過激派と戦うイギリス人ムスリム」になると宣言して今回のロンドン市長選挙に挑んできました。




現在のロンドンには820万人の人が暮らしていますが、2011年の統計ではそのうちの8人に1人はイスラム教徒。そして35%が海外から渡ってきた人たちで構成されています。



ヨーロッパ各国では現在イスラム系移民によるテロなどが多発し、極右の政党が支持を伸ばしてムスリムに対する圧力を強めつつある中で、カーン氏の存在は重要なものになるかもしれません。



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また、彼が生まれ育った地域は家賃や物価が高騰し住宅の供給が十分でなくなってきてしまい、地元の若者が安心して住める場所ではなくなってしまいました。カーン氏はそれに対しロンドン市内新しく5万軒の家を新しく建築する計画を立てています。



所得によって将来の道が狭まってしまわないようにする。少年時代を過ごした公営住宅が彼に与えてくれた恩恵をこれからのロンドンっ子にももたらせるよう、カーン氏はこれから重大な責務を負っていくことになります。





そんなカーン市長は8月に、計画が滞っていたロンドンの地下鉄を週末に限り終夜営業する「ナイト・チューブ」の実施を決定。ジョンソン前市長のころからあった構想を関係機関との交渉をまとめ、ロンドン経済活性化に寄与すると期待されます。



カーン氏による推進でロンドン地下鉄の終夜営業「ナイト・チューブ」が実現





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