2015年通期は162億ユーロ(約2兆円)赤字
ドイツ自動車メーカー、フォルクスワーゲン(VW)は排出ガス不正試験が原因でかかった費用が2015年通期だけで162億ユーロ(およそ2兆円)におよんだことが同社の発表によって明らかになりました。不正ソフトを搭載したこの問題に対する関連費用は今も膨らみ続けています。
昨年9月にフォルクスワーゲン社はカリフォルニア州の排ガス規制試験を不正にクリアするために「無効化機能」を備えたソフトウェアを使用していたことが、アメリカの環境保護局によって告発され世界的に有名なそのブランドを大きく失墜させてしまいました。
また、22日にドイツ政府はフォルクスワーゲンとその傘下であるアウディ、ポルシェ、ダイムラー、オペルの5社に対して、一定の気温を下回ったときに排ガスを浄化する機能が低下することが判明したために、対象となる63万台についてリコールするよう要請しています。
エンジン改善費用や制裁金、訴訟費用
フォルクスワーゲンは排ガス不正の問題によって2015年度は13億ユーロ(1631億円)の赤字に転落。同社にとって赤字は1993年以来となり、創業以来の悪化を示しています。アメリカ司法局に支払う制裁金や、エンジンの改善に必要な経費だけでなく、信用の失墜により株価はおよそ4割にまで下落。
2015年のフォルクスワーゲン社の支出は当初67億ユーロの予定であったのが、162億ユーロに上り、また、これから世界各国で不正に対するユーザーからの集団訴訟や、ヨーロッパの投資家の中には市場価格に関わる重要な情報をすぐに公開しなかったことに対する訴訟など、法廷関連の出費も増えていく見通しです。
フォルクスワーゲン社、マティアス・ミュラーCEOは会見の場で、2015年通期は以上のような結果になったものの会社の経営は「まったく健全な状態」にあり、「フォルクスワーゲン社にはこの困難な状況を越えられる力があると信じている」と答えています。
米司法局や環境保護局との暫定合意
一方で、フォルクスワーゲン社は21日にアメリカの司法省、カリフォルニア州当局、環境保護局、連邦取引委員会と、不正が行われている車の内50万台の買い取りをするなどの対策をすることで暫定的な合意に達しました。同社が排気量2.0リットルの車両48万2000台の買い取りを提案したり、場合によっては修理を請け負うといった内容になっています。
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