温室効果ガスの排出量1位と2位の中国とアメリカが調印
4月22日は地球環境のことを考えて行動する「アースデー」がアメリカで始まってから46回目を迎え、日本各地でもさまざまなイベントが催されましたが、ニューヨークの国連本部では気候変動抑制に関する「パリ協定」に温室効果ガス排出量1位の中国と2位のアメリカが正式に調印しました。
中国とアメリカの温室効果ガス排出量は合わせると、全体の38%を占めます。
国連の発表で、22日に中国やアメリカを加えた175の国と地域がパリ協定に調印を済ませました。そのうちの15の国と地域が正式に批准。多くの国は2015年11月30日から12月12日に開かれたCOP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)で合意されたパリ協定に調印したことになりますが、国会などでの承認を得なければなりません。
気候変動は「時間との戦い」
また、パリ協定は批准国が55ヵ国を超えた時点で初めて効力を持つことになります。潘基文国連事務総長は「パリ協定は、将来すべての世代の命がどのようなものになるかに大きな影響を与えるものです。未来の世代が今このときにかかっています」「時間との戦いであり、どの国も国家の単位でパリ協定に加わることが迫られています」「今日、私たちは未来のための誓約に調印しているのです」と協定調印についての重要性を強調しました。
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ツバルなどのミクロネシア地域やアラスカのシシュマレフなどではすでに居住地区が海によって浸食され生活が脅かされる事態となっています。
アメリカと中国の批准は?
アメリカのジョン・ケリー国務長官は孫娘イザベルさんを抱いての調印。アメリカは「この協定にこの年から正式に参加できたことを楽しみにしている」とケリー国務長官は記者団に応じています。オバマ大統領もこれから正式に行政当局を通じて正式に協定調印の承認を行います。
開発途上国の多くは、11月の大統領選挙で共和党の候補者が指名された場合にパリ協定を一周してしまう可能性があるため、民主党のオバマ大統領がその座にいる今年の内に協定の効力発揮を目指しているようです。実際に京都議定書のときにアメリカは離脱しています。
実際にパリ協定が効力を持つ状態になるかどうかはまだ難しいところで、批准書を提出している15ヵ国はいずれも小さな島国が多く、気候変動の影響をすでに受け始めている国ばかりです。
中国の場合には全人代での批准承認が必要になりますが、全人代で意見が分かれることは考えにくく政府の意向に従って承認される可能性が高く、年内にも実現される見通しです。
問題はEU各国で、議会の勢力図や経済状況などにより、スムーズに批准の承認が行われない国も少なからず出てくるのではないでしょうか。
「パリ協定」の効力
1997年に調印された京都議定書が効力を持ったのは2005年でしたが、実質的には開発途上国の排出する温室効果ガスの規制に触れたもので、その点では国の貧富に関わらず適用されるパリ協定は大きな効果が期待されます。また、パリ協定は気候変動への対応に行動しなければならない法的な拘束力を持ち、気温上昇を2℃よりも「はるかに下回る」状態にすることを約束する内容になっています。
しかし、国連の発表では仮に協定内容が実行されて温室効果ガスが削減されたとしても、合意の状態にまで気温上昇を抑えるにはいたらないとしています。
アースデーのイベントにも参加した俳優のレオナルド・ディカプリオさんが、今年のアカデミー賞授賞式のスピーチで触れたように、2015年は熱波や旱魃などが起き、気温は19世紀に記録を取り始めてからもっとも地球気温が高い年になりました。また2016年の最初の3ヵ月は気温記録を塗り替える始まりでした。
環境保護活動を行っている団体は各国の政府に働きかけ、11月にモロッコで開かれる気候変動会議までに実績をあげられるように求めています。
<追記>
11月4日に2020年以降の地球温暖化対策の国際的な枠組みであるパリ協定が発効されました。選挙キャンペーン中にパリ協定からの離脱を公約にしていたアメリカの次期大統領ドナルド・トランプ氏は「オープンな姿勢」で臨むとし、強硬な姿勢を和らげていますが先行きが不透明な状況となっています。
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そんな中、フランスのバルス首相は各国の企業がパリ協定に参加していない国に拠点を移してしまうことを危惧し、批准していない国からEUへの輸入には関税をかけるべきだと主張しています。
参照
http://www.afpbb.com/articles/-/3106843
http://jp.reuters.com/article/france-climatechange-idJPKBN13J04B
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