Black Lives Matterの活動は環境問題やパレスチナ問題にまで広がっている

ロンドンでのBlack Lives Matterのデモ
                                             https://youtu.be/lWzasCPIqrI

ロンドン・シティ空港の滑走路での抗議でフライト中止も




7月に立て続けにアメリカで発生した白人警官による黒人市民射殺事件をきっかけに始まった「Black Lives Matter」の抗議運動は現在も国内にとどまらず、イギリスなどでも行われていますが、一部の活動家がロンドン。シティ空港を封鎖させる事態を起こしています。






イギリスのBlack Lives Matterの抗議運動はアメリカで発生してすぐに行われていましたが、8月にもバーミンガム、ノッティンガムとともに一斉に実施されたデモでヒースロー空港に通じる道を封鎖しています。





9月6日の抗議活動では9人のイギリス人活動家がロンドン・シティ空港の滑走路に自らの体を縛りつけ、それをまたぐように三脚を置いてその上に乗り、「国内外の黒人の環境に影響を与える」と主張。








6時間に及ぶ抗議運動によってフライトを取りやめる航空便が出るなど空港の営業に影響が出ましたが、警察当局は滑走路への不法侵入の容疑で活動家たちを拘留しています。






差別によって利得を得て、環境を破壊している責任を取るべきだ





また、拘留された活動家たちは滑走路での抗議活動を行った理由として、世界でも5番目に利用客の多いロンドン・シティ空港が拡張を計画しており、そのために周囲の住環境が悪化することが予想されるというものでした。






さらに、空港を利用しているのは裕福な上流階級の人ばかりで、そうした人たちのために気候変動が起こってサハラ以南の7割の国で食糧を得ることが難しくなり、イギリスをはじめとする国々が安全なルートを確保しないから地中海で多くの難民が海で遭難するのだと主張しています。





最初に死ぬのは黒人。フライトの番は後回しにされる。この人種差別的な気候危機はそういうものなのだ




Twitter上ではBlack Lives Matterが環境問題にまで主張を展開していることに対して疑問の声も上がっていますが、イギリスの同団体は人種差別によって利得を得てきた白人が社会問題について責任を負う必要があると回答しています。





パレスチナの支援を要請






この2ヵ月で大きな広がりを見せているBlack Lives Matter運動ですが、始まりは今年ではなく、2013年にレイボン・マーティンさんが白人警官によって射殺され、しかもその警官に無罪判決が出されたことがきっかけでした。その後も2014年にもファーガソンでマイケル・ブラウンさん、ニューヨークでエリック・ガーナーさんが射殺される事件が起こり、Black Lives Matterは人種差別に対する抗議運動としてアメリカで定着したのでした。




イギリスでもBlack Lives Matterの支部ができているように、活動が大きく広がっているのがわかりますが、さらに国内でも同じく人権を訴える団体との協調が8月1日に実現しています。それがその他60の団体とともに発表した「the Movement for Black Lives(M4BL)」(黒人のための活動)です。





M4BLは黒人への暴力や不公正に終止符を打つことを目的とした宣言ですが、それにとどまらずアメリカが同盟国としているイスラエルによって抑圧されているヨルダン川西岸のガザ地区のパレスチナにも無条件の支援を行うようアメリカ政府に求める内容が盛り込まれています。






公民権運動から始まる黒人の人権を訴える活動はアメリカ国内で同じように不遇な環境下で生活してきたユダヤ人の団体と行動を共にする場面が幾度と見られてきました。しかし、今回Black Lives Matterはイスラエルを非難の相手とし、パレスチナ人を同志と見込んだようです。







環境問題にまで主張を広げたのと同様、やはり本来の目的からずれているのではないかという意見も噴出していますが、アメリカ国内では現在アラブ系の人たちが肩身の狭い思いをしている現れなのかもしれません。





UAEがアメリカへの渡航には民族衣装を控えるよう国民に呼びかけたりするなど、IS(イスラム国)の影響もあり国内でのイスラムフォビア(イスラム恐怖症)は強まっていて、共和党の大統領候補ドナルド・トランプ氏もイスラム教の入国審査を厳しくするという発言をしています。




アメリカ社会のために人権が侵害されているという認識がBlack Lives Matterと一致したということなのでしょう。





<追記>

トランプ政権とBlack Lives Matter


アメリカ大統領選挙でドナルド・トランプ氏が当選したことを受け、Black Lives Matterはオバマ政権時よりも差別やヘイトスピーチが拡大する恐れがあると見ています。また、トランプ氏は当選後にBlack Lives Matterに批判的な立場をとっているミルウォーキー群保安局と会談しており、有色人種に対する警官からの暴力が増加するのではないかと警戒を強めています。



そんな中、世界最大のスーパーマーケットであるウォルマートはBlack Lives MatterのTシャツやトレーナーを販売し、その活動を応援しています。


「ウォルマートがBLMの関連商品を幅広く販売。しかし、"All Lifes Matter"(生きとし生けるものはすべて大切)の商品を発売禁止に」




1月20日のトランプ氏の大統領就任式を前にして、Black Lives Matterの抗議活動が活発化しました。週末の14日にはニューヨークのトランプタワーの前を通るデモ活動が行われています。次の日が公民権運動の象徴的な指導者マーティン・ルーサー・キングJr牧師の生まれた日ということもあり、その思いを実現して欲しいと直接トランプ氏に訴えるためのデモでした。


また、同じ日にフィラデルフィアでは教職員団体が、トランプ氏の就任までの1週間、学校の授業をBlack Lives MatterのTシャツなどを身につけて行うよう各教員に要請する声明を発表しています。


13日にはBlack Lives Matterのデザインが施されたデビッドカードを作ろうとした教師が拒否されるというニュースも報じられています。


アメリカの金融機関ウェルズ・ファーゴでは自分の好きな写真をカードのデザインにすることができるサービスをしてます。ボルチモアで教師をしているレイチェル・ナッシュさんはBlack Lives Matterのロゴをカードにしようと申請を出しました。



Why Wells Fargo rejected a teacher’s Black Lives Matter debit card design - The Washington Post


ところが、申請は却下されてしまいます。カスタマーセンターに問い合わせたところ、「攻撃的で反社会的な団体と当社がつながりを持つようなことはできかねません」ということ。Black Lives Matterへの姿勢や顧客の信条を否定するものではないかと問題になりました。


ウェルズ・ファーゴの広報は、「あくまで当社のガイドラインにおいて作成できないということで、お客様それぞれの信条に対しては敬意を持っております。それを否定する意味での対応ではありません」と答えています。







参照

http://edition.cnn.com/2016/09/06/europe/uk-london-airport-blm-protest/
http://www.aljazeera.com/indepth/opinion/2016/09/black-lives-matter-palestine-historic-alliance-160906074912307.html
http://www.huffingtonpost.com/jack-rosen/black-lives-matter-moveme_1_b_11613288.html
https://thinkprogress.org/black-lives-matter-under-trump-d898170820b4#.6t35qfxdj
https://www.washingtonpost.com/news/wonk/wp/2017/01/14/why-wells-fargo-rejected-a-baltimore-teachers-black-lives-matter-custom-debit-card-design/?utm_term=.dd1fe1e36970


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