「雨傘革命」の元リーダー羅冠聰(ネイサン・ロー)が香港最年少議員に

香港の選挙の看板
                                      https://youtu.be/5A_oVZH-u2Y

*追記あり

反中国派が3分の1を超えた香港立法会



9月4日に香港で行われた立法会選挙は過去最高の投票率58.28%を記録し、反中国政府の立場をとる「非建制派」が定数70議席のうち30議席を確保しました。


まだ親中派が議会の過半数を占めている状況には変わらないものの、「雨傘革命」を指導し香港史上最年少となる羅冠聰(英語名ネイサン・ロー)さん(23)が「香港衆志(デモシスト)」から立候補して初めて議員に当選し、香港政界に新たな流れが起きようとしています。





独立の主張はしていない



雨傘革命(運動)とは2014年に香港で起きた民主運動で、2017年の行政長官の選挙方法をめぐって自由な立候補を阻止する制度を制定した中国政府に対し、9月25日に民主派の学生たちが行政府庁舎前に集まり抗議運動を展開したできごとでした。





その数日後に警察が集まりを散開させるために催涙スプレーを使用したため、学生たちは傘を使ってそれに対抗したことから「雨傘革命」と名づけられたのでした。活動は79日間に及び、香港の主要道路を封鎖して抗議デモは続けられました。









雨傘革命は長期化して事態が膠着し、香港の政治を一変させるほどの結果にはいたらなかったものの、このときの活動家が今回の選挙に当選するなど大きな影響を及ぼしたと言えます。



香港・雨傘革命はなぜ失敗したのか? 理性的・自発的運動とその弊害 - ジセダイ総研 | ジセダイ

【時事ニュースを斬る】香港「雨傘革命」の考察 | 海外進出サポート・海外ビジネス支援企業が見つかるDigima|出島 コラム




1997年に香港が中国に返還されたとき、「一国二制度」を採用し返還から50年はその政治体制を変更しないという高度な自治を中国政府は認めています。独立した行政長官を置くことで、直接的に中国本土の政府は干渉をしない約束をしたのです。




中国における「一国二制度」の歴史的経緯および基本法の内容




これはあくまでも中国という国の中で自治を認めているのであって、独立の機運が高まることは厳しく取り締まっています。ローさんも「独立は主張していない。香港市民が享受すべき<自決(自分のことは自分で決める)>権利を提唱している」と語っています。







影響力を強める中国政府





独立を訴える人物は処罰する可能性があると警鐘を鳴らしている中国政府は、非建制派が躍進した立法会選挙の結果を受けてすぐに「議会の内外に関わらず独立を進める動きには断固反対する」というコメントを発表しています。







南シナ海での管轄権主張「一帯一路」政策など領土や権益の拡張進める中国としては、国内での独立運動を認めるわけにはいきません。逆に当初の一国二制度よりも本土の影響力を強めようとしたのが2014年の雨傘革命のきっかけになったのでした。





ローさんたちが掲げている政策はこうした中央政府の強まる干渉から香港の主権をこれからも守っていこうというものです。




「厳しい戦いはまだ始まったばかり。きちんと準備をして、共産党と戦っていかなければなりません」ローさんはBBCのインタビューにそう答えています。





雨傘革命で行政府庁舎の前庭に侵入し非合法の集会を行ったことからローさんと黄之鋒(ジョシュア・ウォン)さん、周永康(アレックス・チョウ)さんの3人は今年7月21日に有罪を言い渡されていましたが、その後ウォンさんには2週間の禁固刑が執行猶予となり、ローさんとチョウさんは社会奉仕活動が課せられました。




そんなローさんとウォンさんが4月に立ち上げたのが香港の自決権を求める「香港衆志(デモシスト)」です。ウォンさんは規定年齢に達していなかったため立候補していません。非建制派のデモシストに加え、今回は他にも雨傘革命から派生した中国からの独立を求める「本土派」も含めると議会の3分の1を反中国勢力が占めたため、中国寄りな重要法案が否決される状態となったことになります。






<追記>

10月初めにデモシストが、ウォンさんがタイのバンコクにある空港で拘束されたと発表しました。ローさんによるとウォンさんは現地の学生活動家と会う予定だったそうですが、空港で拘束されて面会も許されていない状態。







最近タイで中国の活動家が拘束や消息不明になる事態が発生していて、しばらく経って中国国内に身柄が移されやはり拘束が続けられます。






中国政府が独立派議員の資格をはく奪へ


香港立法議会において、議員就任の際に「香港基本法」(憲法に当たる)の順守と「中華人民共和国香港特別行政区」への忠誠を先制しなければなりません。しかし、10月の初召集において本土派の当選者4人が宣誓を拒否し、「香港は中国ではない」という旗を広げて香港の独立を主張する立場を訴えました。


4人はネイサン・ロー氏を含め、その他に劉小麗氏、姚松炎氏、梁国雄氏。








宣誓がなされていないという判断をし、全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会は11月7日に香港基本法104条の解釈により公職失格で2人の資格をはく奪するを決定しました。




12月2日に香港政府はあらため4人の宣誓無効と議員資格はく奪を求める司法審査を高等法院に要求しました。4人と急進民主派議員十数人はこれに対して行政長官弁公室付近でデモ活動を行い、政府の申し立てを批判しています。





2017年3月27日、香港の行政長官に中国が後押しする林鄭月娥(キャリー・ラム)氏が当選したことから雨傘革命の元リーダーたちの少なくとも9人を起訴することを警察当局が発表しました。社会学者の陳健民氏は「公的生活妨害」で起訴されるほか、法学者の戴耀廷氏も2014年の活動が法律に抵触するという見解。






参照

http://hongkong.keizai.biz/headline/691/
https://www.washingtonpost.com/opinions/global-opinions/chinese-repression-is-backfiring-in-hong-kong/2016/09/06/f36d3ac8-7449-11e6-8149-b8d05321db62_story.html?utm_term=.8d0cdca3e619
http://www.bbc.com/news/world-asia-china-37288893
http://www.bbc.com/japanese/37273851
http://www.afpbb.com/articles/-/3094717
http://www.huffingtonpost.jp/2016/09/06/hongcong-ellection-2016_n_11870374.html
http://www.cnn.co.jp/world/35090067.html
http://www.jiji.com/jc/article?k=2016101200724&g=int





こんな記事も読まれています

Social