絶滅危惧種(レッドリスト)の動物たちが数を減らした原因とその対策

ジャイアントパンダ

レッドリストでジャイアントパンダが「危急種」、ヒガシゴリラが「近絶滅種」に






国際自然保護連合(IUCN)は9月4日に世界の野生動物の「レッドリスト、(絶滅危惧種リスト)」の最新版を発表し、ジャイアントパンダが「絶滅危惧種」から「危急種」へ抜け出た一方で、ヒガシゴリラがもっとも危険度が高い「近絶滅種」に引き上げられました。







そもそも絶滅危惧種の査定はどこが行っているのか?



「レッドリスト」、正式名称:絶滅のおそれのある種のレッドリストは国際自然保護連合(IUCN)というスイスのグランに本部を置く組織が作成しています。



ICUNツイッターアカウント


各分野の研究者が野生動物の実態調査を行い、1種ごとに絶滅危惧の度合いについて次のような順位に分けています。カッコの中は日本の環境省の呼び方です。




  1. EX 絶滅種(絶滅)
  2. EW 野生絶滅種(野生絶滅)
  3. CR 近絶滅種(絶滅危惧IA類)
  4. EN 絶滅危惧種(絶滅危惧IB類)
  5. VU 危急種(絶滅危惧II類)
  6. NT 近危急種(準絶滅危惧種)
  7. LC 低危険種(該当なし)
  8. DD 情報不足種(情報不足)



いわゆるICUNでいう絶滅危機種、環境省の絶滅危惧は3~5までで、6と7は準危急種と呼びます。



2016年12月現在で8万5000種がICUNのレッドリストに掲載されていて、そのうち2万4000種が絶滅危惧種に指定されています。特に鳥類が危機に瀕しており700種以上が12月に絶滅危惧種になり、11%が絶滅の危険があります。



ICUNレッドリスト(英語)
日本国内レッドリスト(WWFジャパン)



アフリカで数を減らした動物たちの悲しい理由





絶滅危惧IA類 (近絶滅種)にリスト入りしてしまったヒガシゴリラの亜種ヒガシローランドゴリラはアフリカのルワンダ、ウガンダ、コンゴ民主共和国(DRC)などで密猟が激増していて、この20年で1万6900頭いたのが3800頭にまで激減しています。


ヒガシゴリラは霊長類ヒト科ゴリラ属でアフリカの中東部に生息しています。マウンテンゴリラもこのヒガシゴリラの一種で、ヒガシローランドゴリラと合わせて2種しかいません。







現在、地球に生息している類人猿6種のうち、ヒガシゴリラ、ニシゴリラ、ボルネオオランウータン、スマトラオランウータンの4種が絶滅危惧IA類に指定されています。その一方で、マウンテンゴリラはアフリカの3ヵ国で880頭に数が増えています。






アフリカの象徴的な動物の1つ、サバンナシマウマもやはり密猟のために大きく数を減らし、この14年間で70%以上減少し、ヒガシゴリラなどと同じく絶滅危惧IA類に指定されました。









ヒガシゴリラやサバンナシマウマの数を大幅に減らす密猟が起きているのは、先の国々での内戦が原因だと考えられています。内戦によって武器が市民のあいだで出回るようになり、手にした重火器で野生動物を密猟して稼ぎにする人が増えたのです。




アフリカではさまざまな野生動物が個体数を減らし、絶滅の危機に瀕している種が増えていますが、アフリカゾウやサイの密猟が絶えないケニアでは象牙を焼却する場を公開して抑止力にしようとしています。



ガボンで象牙目的にマルミミゾウが密猟。国立公園内で25000頭が犠牲に




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中国政府の取り組みによって復活しつつあるジャイアントパンダ






今回の新しいリストでいちばんの吉報は絶滅危惧IB類だったジャイアントパンダが絶滅危惧II類(危急種)へと引き下げられたことかもしれません。2004年には1596頭だった数は2014年に1846頭(子供も含めると2060頭)となり、17%の増加となりました。





もともと中国東部と南部に広く生息していたパンダですが、都市の拡大によって生息地は大きく狭まっています。1980年代にパンダが1200頭程度まで数を減らしたのも、この10年で戻しつつあるのも要因として豊かな竹林が1つとして挙げられます。




パンダの餌は99%が笹であり、一日に12kgから38kgを食べるので竹が乏しい土地では生きていけません。





生息地である竹林を整備し、その面積を少しずつ広げるという地道な作業を行ったことで、パンダの数も少しずつそれにともなって増えてきたのでした。





世界自然保護基金(WWF)のジネット・ヘムリー上級副代表も野生のパンダを増やすために中国政府が行ってきた活動を評価しています。




「中国はパンダの生息地拡大と新しい土地の確保のために十分な資金を当ててきました。素晴らしい成果だと思います。環境保全に政府が関わったから起こせた注目すべき一例です」




しかし、気候変動のために竹が生育するには気温が高くなってあまり広がらない地域もでてきていて、今後もジャイアントパンダが確実に数を戻していけると安心するのは早いようです。




ちなみに一般的にパンダというとジャイアントパンダですが、先にレッサーパンダが発見されたときに「パンダ」と名づけられたのですが、その後同じく竹を食べるものとしてジャイアントパンダが発見され、大きいパンダがジャイアントパンダ、小さいパンダがレッサーパンダと区別するようになりました。






<追記>

キリンも絶滅危惧種に



12月8日にICUNは絶滅危惧種のリストにキリンを追加しました。



1985年には15万5000頭だったキリンの数は2015年には9万7000頭まで減少してしまっているということです。


生息地の減少や内戦、密猟といったことが理由だと考えられています。ケニア北部やソマリア、南スーダン国境近くのエチオピアなどでは内戦で食糧が不足し、体が大きなキリンを狩猟してそれに当てています。


しかし、保護がうまくいっている事例もあることから個体数を少しずつ増やしていけるのではないかと専門家は見ています。








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参照

http://news.sky.com/story/giant-pandas-no-longer-classified-as-endangered-on-red-list-10565570
http://www.afpbb.com/articles/-/3099781?cx_part=topstory
http://www.bbc.com/news/world-asia-china-37273337
http://www.cnn.co.jp/fringe/35088522.html
http://edition.cnn.com/2016/09/04/world/giant-panda-endangered-downgrade-gorillas-decline/index.html
http://www.ueno-panda.jp/about/
https://www.wwf.or.jp/activities/wildlife/cat1014/cat1085/




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