クリントン氏の私用メール問題でFBIが刑事訴追を勧告しない決定をしたのはなぜか




*追記あり

「非常に軽率な」行動だったとコミーFBI長官は批判




7月5日にアメリカ連邦捜査局(FBI)のジェームス・コミー長官が、民主党の大統領候補指名獲得を確実にしているヒラリー・クリントン氏が国務長官時代に公務で私用アドレスやメールサーバーを使用していた件について刑事訴追を勧告しない方針であることを発表しました。






しかし、極めて慎重に扱わなければならない情報について「非常に軽率な」扱いをしたとしてコミー長官はクリントン氏の行いについて非難し、普段と同じように公務で私用メールを使ってしまった行為は、まかり間違えば敵意を持った他の政府に情報を抜き取られていた可能性があると指摘しました。




参考記事:クリントン氏の私用メール問題についてFBIが本人に事情聴取。何が問題か、司法長官の対応について




また、クリントン氏は2013年に国務長官の任を離れているが、現在公務員の立場にある人が同じように私用メールを公務に利用することがあれば、法的な刑事訴追などには及ばないものの懲戒免職の処分を受けることになると述べています。





サーバーやデバイスがひとつではなかったために複雑化した捜査





今回の問題が浮上したのは2015年3月で、クリントン氏が国務長官の職にあったころのメールのやりとりに国務省のアカウント「.gov」ではなく、自宅のパソコンで私用していたアドレス「clintonemail.com」が使用されていることが発覚したのでした。



その後クリントン氏が国務長官をやめた後に国務省の公務に関するメールについての方針が明確になり、私用アカウントを禁止することになり、歴代の国務長官すべての人に対して個人のアドレスで行った公務のメールの提出が求められ、このときクリントン氏も5万5000ページ以上のメールを提出しています。



FBIの捜査は当初、クリントン氏が自宅で私用しているメールサーバーだけを対象に行うだけで終わるものと見られていましたが、複数のデバイスや他のいくつものサーバーを使用していたりしたためにかなり複雑なものになりました。



外交などの国家機密情報の取り扱いの管理がずさんだった事実を認めたものの、刑事訴追そのものとは結びつくものではないというのがコミー長官の見解です。





私用メールについての刑事訴追の基準





クリントン氏が刑事訴追をされるか否かの判断基準は機密情報を意図的に他に流していたり、きちんとした対応を怠りアメリカにとって不利益になるような処理を行ったりしたかどうかにあります。FBIは捜査の結果いずれにも当たらないと判断しました。




テキサス大学のスティーブン・ブラデック教授は電子版ロサンゼルスタイムズ紙に「現行法では安全とは言えないネットワーク上で機密情報を共有することは違法にはあたらない。本来はそうであるべきなのだろうが、法の整備については議会が決めることだ」と答えています。




また、司法省はクリントン氏の側近であるヒューマ・アベディン氏、ジェイク・サリバン氏、シェリル・ミルズ氏に対してもFBIは刑事訴追の必要性はないと判断しているため、それを受け入れることが間違いないでしょう。



司法省の動きについては、ヒラリー氏の夫であるビル・クリントン氏と私的な会談を持って批判を集めてしまったロレッタ・リンチ長官がFBIの判断を尊重するというコメントを発表していたため、クリントン氏とその側近に対する訴追はこれで見送られることになります。



クリントン氏本人または側近の刑事訴追によって致命的な結果になることは免れましたが、それでも情報管理への認識の甘さについてはこれから党大会で指名を獲得した後もライバルとなる共和党のドナルド・トランプ氏にとっては大統領としての資質を疑問視する材料として手放さないでしょう。




<追記>
10月28日にFBIは、ヒューマ・アベディン氏の別居中の夫であるアンソニー・ウェイナー元下院議員のパソコンから新たに関連すると思われるメールが見つかったことから調査を再開したことを発表しました。






新たなメールに重要な機密情報が含まれていないかを「適切に判断する」ことを目的にしているとコミー長官は上下両院に対して書簡で通知。疑惑が再浮上したことでヒラリー氏とトランプ氏の支持率は一時1ポイント差にまで縮まりました。




しかし、11月6日にコミー長官は「訴追は行わない」と改めて表明しました。やはり「きわめて軽率な行為」であったとはするものの、違法にはあたらないとしています。









参照

http://www.nytimes.com/2016/07/06/us/politics/hillary-clinton-fbi-email-comey.html?_r=0
http://www.huffingtonpost.jp/2016/07/05/fbi-director_n_10820088.html
http://www.latimes.com/nation/la-na-pol-clinton-email-legal-analysis-20160705-snap-story.html
http://edition.cnn.com/2016/07/05/politics/fbi-director-doesnt-recommend-charges-against-hillary-clinton/
http://www.afpbb.com/articles/-/3106106?cx_part=topstory



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