https://youtu.be/uhZ-FmoyLT8 より |
最長180日間の弾劾裁判の法廷に立つことに
12日にブラジルの上院で20時間を超える議論の後、ジルマ・ルセフ大統領に対する弾劾決議が採択され、賛成が55票、反対が22票で過半数が弾劾法廷の設置に賛成したため、これによりルセフ大統領は職務停止となり、最長で180日間の弾劾裁判が行われます。
自身の政府会計の不正な操作や官房長官として入閣したルラ前大統領への汚職疑惑などから国民からの大きな反発を受け、弾劾の法廷にとうとうルセフ大統領が立つことが決定しました。
参考記事:大統領弾劾、ジカ熱、治安問題。リオデジャネイロ開催を前にブラジルが抱える問題
4月17日に下院での弾劾可決が513議席のうち342人の賛成によって可決されており、それを受けての上院の裁決でした。
参考記事:ブラジルでルセフ大統領に対する弾劾決議が下院で承認。なぜ通過し、今後どうなるのか?
「今の政府のままで2018年にむけて回復していけると誰が考えると思いますか?無理ですよ。弾劾は立て直しへの第一歩にすぎません」(社会民主党のホセ・セラ氏)
テメル副大統領が代行を務める
これにより13年続いた労働党政権に終止符が打たれ、職務停止中の代行は、ミシェル・テメル副大統領が務めます。テメル副大統領はもともとルセフ大統領が所属する労働党と連立を組んでいた民主運動党(PMDB)の党員でしたが、ルセフ大統領への批判が日増しに強まる中で、率先して連立からの離脱に向けて党内の意見をまとめた人物でした。
ルセフ大統領は「男性優位の議会だったために、女性大統領の自分への差別が下院上院両方での賛成多数を招いたのだと、性差別を指摘しています。
一方、実質的に次の大統領を務めることになるテメル副大統領は支出の削減と、現在国が管理している部門の積極的な民営化を政策として打ち出しています。汚職による政治と金の疑惑で今回の事態に行き着いてしまった労働党を強く意識していることがうかがえます。
しかし、テメル副大統領の行動によってルセフ大統領は窮地に立たされてしまったわけですが、ブラジル国内では労働党が政権を握ってからの10年近くで数百万人の労働者の貧困を救った実績を今も熱烈に支持している人たちもいて、彼らはテメル副大統領に根強い不信感を抱いています。
悪化した経済の回復と汚職の糾明、そしてリオデジャネイロオリンピックの準備
ブラジルは今年も前年と同じくらいの不景気に落ち込んでいて、インフレも進んでいます。失業率は10%前後を行き来している状態。ルセフ政権を打倒したテメル副大統領はこれからルセフ大統領やルラ前大統領への追求を行うとともに、急降下した経済の復活を実現する責務が課せられています。
また、リオデジャネイロオリンピックの開催は8月5日。これからはこれまでの野党が中心となって政治を運営することになりますが、ジカ熱やテロ対策を含めた大会への準備が急がれるとともに、期間前後やその最中に競技場周辺で行われるかもしれないデモへの対応など、こちらも4年に1度の祭典を成功させるためにさまざまな課題が残されています。
<追記>
ルセフ大統領は8月31日に正式に有罪が確定し、同日に代行を務めていたテメル氏が新しく大統領の座に就きました。しかし、パラリンピック開幕式に登場したテメル氏に対して、会場内からブーイングが起こるなど国民からの反発が少なくないことを露呈しています。
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