ディカプリオがついにアカデミー主演男優賞を受賞。受賞スピーチと過去のノミネート作品を振り返る

レオナルド・ディカプリオ



第88回アカデミー賞でレオナルド・ディカプリオが主演男優賞を受賞



第88回アカデミー賞が28日(現地時間)にアメリカのカリフォルニア州ハリウッドのドルビーシアターで開催されました。作品賞は『スポットライト・世紀のスクープ』が受賞しましたが、今回のアカデミー賞でもっとも話題になっているのは主演男優賞かもしれません。


アカデミー主演男優賞を獲得したのは『レヴェナント 蘇えりし者』のレオナルド・ディカプリオでした。






力強いスピーチが印象的です。


それもそのはず、と知っている方なら頷かれたのではないでしょうか。ディカプリオとアカデミー賞と言えば、浅からぬ因縁で一部で彼は「アカデミー賞に嫌われた俳優」とささやかれるほどトップクラスのスターでありながらこれまで1度も受賞経験がなく、初めて手にしたオスカー像だったのです。




現在41歳のディカプリオが最初にアカデミー賞にノミネートされたのは、まだ19歳のころで『ギルバート・グレイプ』という作品でした。


それから実に22年。常にハリウッドの第一線で活躍してきたディカプリオが実際にノミネートされたのは『ギルバート・グレイプ』から今回の『レヴェナント 蘇えりし者』までで5作品にもなります。


加えて有力視されながらノミネートされないこともしばしばあり、今回の受賞はディカプリオにとっては悲願の達成だったはずです。





受賞スピーチ全文(英文と日本語訳)


英文

"Thank you, thank you all so very much. Thank you to the Academy, thank you to all of you in this room. I have to congratulate the other incredible nominees this year for their unbelievable performances. "The Revenant" was a product of the tireless efforts of an unbelievable cast and crew I got to work alongside. First off to my brother in this endeavor, Mr. Tom Hardy. Tom, your fierce talent on-screen can only be surpassed by your friendship off-screen. To Mr. Alejandro Iñárritu, as the history of cinema unfolds, you have forged your way into history these past two years. What an unbelievable talent you are. Thank you to you and Chivo for creating a transcendent cinematic experience for all of us. Thank you to everybody at Fox and New Regency, in particular Arnon Milchan. You were the champion of this endeavor. My entire team. I have to thank everyone from the very onset of my career. Mr. Caton-Jones for casting me in my first film. Mr. Scorsese for teaching me so much about the cinematic art form. To Mr. Rick Yorn, thank you for helping me navigate my way through this industry. And to my parents, none of this would be possible without you. And to my friends, I love you dearly, you know who you are.

And lastly, I just want to say this: Making "The Revenant" was about man's relationship to the natural world, a world that we collectively felt in 2015 as the hottest year in recorded history. Our production needed to move to the southern tip of this planet just to be able to find snow. Climate change is real. It is happening right now. It is the most urgent threat facing our entire species, and we need to work collectively together and stop procrastinating. We need to support leaders around the world who do not speak for the big polluters or the big corporations, but who speak for all of humanity, for the indigenous people of the world, for the billions and billions of underprivileged people who will be most affected by this, for our children's children, and for those people out there whose voices have been drowned out by the politics of greed. I thank you all for this amazing award tonight. Let us not take this planet for granted. I do not take tonight for granted. Thank you so very much."


日本語訳(訳:土橋啓之)

「みなさん、本当にありがとうございます。ありがとうアカデミー賞、今この部屋にいるすべての方にお礼を申し上げます。ノミネートされていた他の方々の演技も本当に素晴らしく、見ていて幸せな気持ちになってしまいました。『レヴェナント』も、私と一緒に作品を作った本当に素晴らしい出演者とスタッフの精力的な努力のもとにできあがった作品です。まず、この作品に尽力した私の兄弟とも言えるトム・ハーディさんへ。トム、演技をしているときの君のすさまじいまでの才能には何ものもかなわない。あるとすれば、絵院議をしていないときの君の人を大切にする気持ちぐらいだね。アレハンドロ・イニャリトゥさんへ。映画史を振り返ってみても、あなたはこの2年間イニャリトゥ監督ならではの道を切り開いてきましたね。どれだけの力を持った人なんですか。本当に、ありがとう、シヴォ(スペイン語で子ヤギ)、私たちに比類ない映画経験を創り出してくれて、ありがとう。フォックス、ニューリージェンシーのみなさん、特にアーロン・ミルチャンにお礼を申し上げます。誰よりも力を尽くしたのはあなただと思います。私に関わってくれたすべての人たちへ。私のキャリアの一番最初から今に至るまで、1人ひとりに感謝しています。ケイトン・ジョーンズ監督、最初に私をキャスティングしてくれた人です。スコセッシ監督は映画についての様々な技術について本当にいろいろ教えてくれました。リック・ヨーンさんは映画界で生きていくための道筋を教えてくれました。そして、私の両親。あなた方がいなければ、こうしたことも一切ありえなかった。それに友人たち。自分のいいところも悪いところもちゃんとわかっている人たち。心から大切に思っています。


最後に、ふれておきたいことがあります。『レヴェナント』の世界というのは自然界と人とのつながりでできた作品です。2015年の地球は記録を取り始めてから最も気温が高い年でしたが、私たちもそれをはっきり実感したのではないでしょうか。『レヴェナント』製作するために雪がある最南端にまで移動しなければなりませんでした。気候変動は現実のものとしてあります。今まさに怒っていることです。全人類が直面している中でも何よりも緊急を要する脅威です。私たちはお互いにきちんと手を携え、先延ばしするのをやめなければならないのです。汚染を広げる大手企業などの代弁者にはならない指導者を支持しなければなりません。人間性の代弁者となる指導者、その土地古来の人の代弁者となる指導者、気候変動に一番影響を受ける何億人という恵まれない人たちの代弁者となる指導者、私たちの子供の子供の代弁者となる指導者、貪欲な政治に声をかき消されその場を去らなければいけなくなった人たちの代弁者となる指導者を支持しなければなりません。今夜、この素晴らしい賞をいただいたことをみなさんに感謝したく思います。地球があって当たり前だと思うのをやめてみませんか。私は今夜のことを当たり前だとは決して思っていません。本当に、本当にありがとうございます」









レオナルド・ディカプリオのアカデミー賞ノミネート5作品



ということで、簡単ですがこれまでレオナルド・ディカプリオがアカデミー賞にノミネートされた作品を紹介していきたいと思います。



1993年『ギルバート・グレイプ』


ディカプリオが助演男優賞で初めてアカデミー賞にノミネートされたのが『ギルバート・グレイプ』です。

L・ハルストレイム監督のこの作品は、エンドーラという田舎町でずっと暮らしてきたギルバートが主人公です。その弟で知的障害を持つアーニーをディカプリオ(写真左)が演じました。



ギルバート・グレイプ



このときの主役ギルバートを演じたのがジョニー・デップ(写真右)でした。さらに過食症で250kgの母と2人の妹を養うギルバートは疲弊した毎日を過ごします。


そこにトレーラーハウスで知り合った、祖母と旅を続けるベッキーという女の子が現れ、次第にギルバートの気持ちに変化が生じてくる…というお話です。


知的障害という難しい役どころを見事に演じたディカプリオは批評家から高い評価を受け、一躍スターになりますが、助演男優賞を受賞したのは『逃亡者』のトミー・リー・ジョーンズでした。





2004年『アビエイター』


主演男優賞に初めてノミネートされたのが、マーティン・スコセッシ監督の『アビエイター』でした。スコセッシ監督の作品は2002年の『ギャング・オブ・ニューヨーク』に続く2回目の出演になりました。


ディカプリオが演じたのは実在の人物ハワード・ヒューズ。若くして父の莫大な財産を継いだヒューズはそれをすべてつぎ込んで航空映画『地獄の天使』を製作します。


1930年に完成したこの映画は大ヒットを飛ばし、ヒューズはハリウッドの寵児となったのでした。そして映画の世界で知り合ったキャサリン・ヘップバーン(ケイト・ブランシェット)と付き合うことになったり、続く映画作品の数々も人気を博し、さらには飛行機会社を設立するなど大成功の人生を歩みます。



アビエイター



しかしその後、周りが見えなくなってしまったヒューズをキャサリン・ヘップバーンとの破局や飛行機事故などさまざまな苦境が待ち受けることになるのでした…。


しかし2005年のアカデミー賞主演男優賞を受賞したのは『RAY(レイ)』でレイ・チャールズを演じたジェイミー・フォックス。





2006年『ブラッド・ダイヤモンド』



『ブラッド・ダイヤモンド』は社会派の映画で、1990年代のシエラレオネ共和国が舞台です。監督はエドワード・ズウィック。『ラストサムライ』を製作した監督です。



ディカプリオが演じたアーチャーはダイヤの密売をしている男で、刑務所の中でピンク・ダイヤというとびきり大きなダイヤがあるという話を耳にします。


そのピンク・ダイヤのことをよく知っているらしい人物ソロモン(ジャイモン・フンスー)にアーチャーは接近し、そのありかを聞き出そうとします。



ブラッド・ダイヤモンド




さらに「ブラッド・ダイヤモンド」を追っているジャーナリストのマディー(ジェニファー・コネリー)はその情報を得るためにアーチャーに近づいたのでした。三者三様の思惑が交錯する中、ブラッド・ダイヤモンドを巡ってストーリーが展開していきます…。



このときは『ラストキング・オブ・スコットランド』のフォレスト・ウィテカーがオスカーを手にしました。





2013年『ウルフ・オブ・ウォールストリート』


マーティ・スコセッシ監督とは5回目の作品となったのが『ウルフ・オブ・ウォールストリート』です。実在した株のブローカー、ジョーダン・ヘルフォードを演じました。


まったくキャリアや人脈もないまま22歳でウォール街に飛び込んだジョーダン・ヘルフォードはそこで投資銀行に勤めることになります。


人心掌握術にたけ、しかも柔軟な思考で新たなアイデアを次々と繰り出すヘルフォードはまたたく間に出世の階段を駆け上がっていきます。



ウルフ・オブ・ウォールストリート




若干26歳にして証券会社を設立。数十億円もの年収を得るほどにまでなります。しかし、大成功を収め派手な生活をしていたヘルフォードに予想だにしない転落が待ち受けているのでした…。


「ウルフ」と呼ばれる人物を演じきったディカプリオの評価は決して低くありませんでしたが、『ダラス・バイヤーズクラブ』のマシュー・マコノヒーが主演男優賞に輝きました。





2015年『レヴェナント 蘇えりし者』




レヴェナント



とうとう来ました『レヴェナント 蘇えりし者』。『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡』などのアレハンドロ・G・イニャリトゥ監督が製作しました。


日本での公開は4月22日です。







アメリカの西部で狩猟中、熊に襲われたヒュー・グラス(レオナルド・ディカプリオ)は仲間のジョン・フィッツジェラルドに置き去りにされてしまいます。



瀕死の怪我を負いながらも命を取りとめたグラスはフィッツジェラルドに復讐を遂げるため300キロの過酷なサバイバルロードを駆け抜けるのでした…。






ハリウッドスターとしてオスカーを手にして名実ともに一流となったレオナルド・ディカプリオの活躍に今後も目が離せません。






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