続くインドのカースト集団「ジャート」の暴動。またもマルチ・スズキも被害に



「逆差別」を改善する優遇措置を求める「ジャート」の暴徒化



19日に暴徒化したカースト集団「ジャート」。彼らは今暴動が起きているハリヤナ州や近隣の北部7州に住んでいる人たちです。



暴動の結果、約30人が死亡し、約50人の女性が性的暴行を受けるなど被害が拡大しています。


2012年7月に工場内で暴動が起こり、経営に大きな打撃を受けたマルチ・スズキは今回も倉庫や販売店が破壊、放火をされるなどの被害が出ており、敷地内から出られなくなった駐在の邦人が軍用ヘリで救出される一幕もありました。


現在マルチ・スズキは操業を停止しています。


また、暴動によってムナク運河が破壊され、一時、首都ニューデリーで1000万人以上が断水の状態になっていました。





23日から給水が再開されています。



学校で習った「カースト制度」と違う気がする…



そもそも、「カースト」という言葉は学校の社会で習っていて聞いたことがありますが、そのとき教わった内容と、今回ハリヤナ州で暴動を起こしている「カースト集団」というのがうまく重ならないと感じている方も少なくないのではないでしょうか。



カースト制度の歴史と現状について、compathy Magazineさんの「長い歴史を持つインドのカースト制度とインドの現状」でわかりやすく説明してあります。






それによると、私たちが学校で習った、古代から続くカースト制度の身分制度「ヴァルナ」(バラモン、クシャトリア、ヴァイシャ、シュードラ)は現在のインドではほぼ存在していません。



しかし、それとは別の区分である「ジャーティ」によって細かくカーストは分かれています。職業や出身地などによって分かれているこのジャーティの1つが今回の「ジャート」という集団になります。



ジャートの人たちの言い分




インド政府は複雑なカースト集団を3つまとめています。

  • 指定部族(ST)
  • 指定カースト(SC)
  • その他後進諸階層(OBC)

指定カーストや指定部族になると特権的な割り当てによりいい職業が与えられるのですが、近年のインドではOBCの人たちに対する差別の改善をするべく、公務員への採用や大学入試の優先的割り当てが実施されています。



ジャートはこの中の指定カーストに属しています。しかしながら農業を中心としたハリヤナ州は就職口が少なく、農業収入も減少。所属するカーストでの現状を不満に感じていたジャートの人たちはOBCの優遇措置を自分たちにも適用する要求をします。


2014年にインド政府はジャートをOBCに分類し直すという発表をしますが、2015年に最高裁がジャートはOBCに該当しないという判決を下します。


今回の暴動はOBCに再認定され、公務員への採用や大学入試の優先的割り当てを求めるデモが発展した結果でした。


暴動は沈静化に向かっているようですが、この1週間でもたらした被害は甚大なものになっています。



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