ネット中立性の概念とは?アメリカなど海外での事情

Photo by Avi Richards on Unsplash

インターネットの中立性をめぐる世界の動き


日本ではまだあまりなじみのない「インターネットの中立性(ネット中立性)」が世界で話題になったのは、2017年12月に米連邦通信委員会(FCC)が、オバマ政権時代に制定した規制の廃止を決定を決めた前後のこと。ネットの中立性とはいったいどのようなものなのだろうか。


「ネット中立性」とは何か?



ネット中立性とは、ケーブルや電波塔を流れるすべてのコンテンツを平等に扱うべきだという考えだ。ブロードバンド・プロバイダが一部のデータを素早く処理する一方で、他のデータをブロックしたり、他のデータと区別したりするべきではないというもの。例えばYouTubeの処理速度を落として、逆にNetflixの速度を上げることで、利用者がNetflixのサービスを選ぶように誘導することができてしまうことから、プロバイダはそうした行為を慎むのがインターネットの中立性である。



アメリカでのネット中立性に関する規制の撤廃



ブッシュ政権とオバマ政権時代には、連邦通信委員会はネット中立性の保護を徹底させる取り組みを続けてきた。2015年にネット中立性に関する包括的な命令を可決したが、トランプ政権になって連邦通信委員会はこの命令を破棄することを可決し、連邦議会や裁判所がFCCの決定を阻止しない限り、プロバイダは自らが適切と判断したコンテンツの遮断や抑制ができるようになった。トラフィックのブロックや制限、有料高速レーンの出現により、大手テクノロジ企業や消費者団体は大きな打撃を受ける結果となった。


そんな中、規制撤廃の見直しを求める動きが出てくるが、2019年10月にコロンビア特別区連邦控訴裁判所は撤廃を支持する判決をくだした。その後も撤廃を求める嘆願書が連邦控訴裁判所に提出されるも、2020年2月に判決を出した3人の裁判官の委員会と同様に、判決の再審理は棄却された。


ただ、2018年6月に事実上の撤廃が有効となったが、アメリカのプロバイダ各社はユーザーのインターネットアクセス方法の変更は2020年に入っても実施していない。



スーダンの場合


逆に、アフリカのスーダンではネットの中立性が保たれていない現状から、規制を確立する動きが出ている。インターネットへのアクセスがスーダンの国民にとって日常的なものになるにつれ、選挙や経済活動においてネット中立性規制の欠如が市民生活に影響を及ぼすようになってきた。


スーダンでは、通信市場の主要大手が従量制のデータ通信サービスにおいて、ある特定のアプリやサービスが無料で利用できるゼロ‐レーティングでサービスを提供しているが、これはネット中立性の基本原則に反している。


南アフリカを拠点とするMTNグループの子会社であるMTN Sudanは、ユーザーにFacebook Zeroへのアクセスを提供している。このサービスは、Facebookがモバイルネットワークプロバイダーと共同で立ち上げた国際プロジェクトの一環で、テキストのみのバージョンのFacebookを無料で利用できるというもの。日本でもソフトバンクなどがYouTubeなどのデータ通信量をカウントしないゼロ・レーティングのサービスを実施したことから、疑問の声が上がった。






こんな記事も読まれています

Social