2017年に生まれた南極のアデリーペンギンのヒナは2羽しか残っていないと思われたが…
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南極に生息するペンギン、アデリーペンギンが2017年に繁殖で生れたヒナのうち、ほとんどが死んでしまい残った個体が2羽だけであることがヤン・ロペールクデール氏らの調査によって明らかになりました。
交通系電子マネーのSuicaのデザインにもなっているアデリーペンギンをクローズアップします。
アデリーペンギンとは?
アデリーペンギンはペンギン目ペンギン科。体長が60cm~70cmで、ペンギンとしては中型の大きさです。
— Charlie Change (@leadintogold) 2017年10月6日
体重は4kg~5kgほどで頭と背中が黒く、胸部と目の周りが白の体をしています。南極大陸にだけ分布していて、「アデリー」という名前は南極の地名でもあります。
ナンキョクオキアミを主食としていますが、タコ・イカ・小魚なども餌としています。
繁殖期以外の時期は氷のない土地で生活をしていますが、10月~11月に海岸からかなり内陸に入った土地で10万羽の大集団となって石を積み上げて営巣をし、メスとオスが交代でおよそ35日間卵をあたため続けます。この間餌はとりません。
1度に産む卵の数は2個。ヒナはふ化して50日~60日ほどで巣立ちして約4年~5年で繁殖できる年齢になります。
アデリーペンギンのヒナの大量死
世界自然保護基金(WWF)の支援を受けて2010年からアデリーペンギンの数を調査しているフランスの研究者たちの調査によると、2017年のヒナの多くは死んでしまい、2羽しか残らなかったことが明らかになりました。
Thousands of Adelie penguin chicks wiped out in Antarctica https://t.co/mniuj6yNQW pic.twitter.com/xmgtQ0jKZz— Wendy Wilson (@opurra) 2017年10月13日
研究者たちは「壊滅的」だと繁殖の状況を表現していて、1万8000組以上が生息しているコロニーの保護を訴えています。
実はアデリーペンギンのヒナの大量死は2015年にも起きていて、1羽のヒナも残らない年だったのです。この5年間の中では2017年は2番目にヒナが少ない年だったことになります。
なぜヒナの大量死が起きたのか?
では、どうしてアデリーペンギンのヒナが大量に死んでしまうのでしょうか。
もともと厳しい環境下で繁殖するアデリーペンギンの繁殖は気候が悪化すると多くが失敗してしまうことがあります。
しかし、近年の大量死は地球の気候変動が影響していると考えられています。
今年は氷河が例年にないほど交代し、親が遠くまで餌を取りに行かなければならなくなり、彼らが戻ってくるまでヒナが耐えられず餓死したようです。
アデリーペンギンを守る
従来の個体数よりも2倍の数がいることがわかったアデリーペンギンですが、(「南極のペンギン、360万羽も多かった」<ナショナルジオグラフィック>)それでもこの30年で80%にまで減っているのも事実で、レッドリストで準絶滅危惧種に指定されています。
気候変動により繁殖地の約60%が今世紀中に不適切な場所になってしまうであろうという研究結果も出ています。
長期的な気候変動への取り組みももちろん必要ですが、すぐにできる対応も求められています。
「この地域での調査目的のオキアミ漁の開放がアデリーペンギンの餌を脅かすことになるとは予想だにしていませんでした。過去4年のうちの2度の壊滅的な繁殖の失敗から回復するために必要な食料です。
そこで、南極の海洋生物資源の保存に関する委員会(CCAMLR)は南極東地区の沿岸を新たに海洋保護区に指定する動きを取りアデリーペンギンの生息地を保護するべきです」とWWFの極地プログラム責任者ロッド・ダウニー氏は語っています。
デンジャー諸島で大繁殖地が発見
2018年3月2日にオンライン科学誌「サイエンティフィック・リポーツ(Scientific Reports)にアメリカのストーニーブルック大学のヘザー・リンチ氏らは南極諸島の沖合160kmにあるデンジャー諸島でアデリーペンギンの大繁殖地を発見したことを発表しました。発見されたアデリーペンギンの数は150万羽。この数はその他の地域に生息する個体を総計した数よりも大きくなります。
この島はその名前Dangerが示す通り1年のほとんどが厚い海氷で囲まれているため船での接近が難しいとされています。そのためこれまで生態調査があまり行われてこなかったのですが、今回アメリカ・フランス・イギリスで構成された研究チームは地球観測衛星によって最大の繁殖地を発見することができました。
また運よく海氷が移動していたことからリンチ氏らは船で入れる時間があったためその存在を確認することが可能になったのでした。
参照
http://www.bbc.com/news/science-environment-41608722