色の違うドードーが目撃されていた理由
上の絵は今から260年ほど前に博物学者であり鳥類学者のジョージ・エドワーズが描いたドードーの絵。
日本ではそう言えば聞いたことがあるような、というくらいの知名度かもしれませんが(頭が2つある茶色の鳥の方を思い浮かべたり…)、欧米では絵画や音楽、文学作品に登場するなじみ深い絶滅種のようです。
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ドードーは調査記録がほとんどないままに絶滅してしまったために、その生態の多くが不明のままなのです。
今回ケープタウン大学などの調査チームは博物館などに保存されているドードーの骨を調べ、生態の一部を解明することに成功しました。
それでは謎の鳥ドードーにクローズアップ!
ドードー(モーリシャスドードー)とは?
世界的に名前の知られているドードーとはどんな鳥だったのでしょうか。全長:約100cm。オスの方がやや大きい
体重:10kg~20kg程度
絶滅年:1600年代後半(判明したのはそれから200年近く後)
生息地:モーリシャス南部から東部にかけて広がる、沿岸部の乾燥した森林地帯
主食:カリヴァリアなどの果実、木の実、木の葉
生態:空は飛べず、巣も地上に作っていた(ポルトガルの"duodo"<まぬけ>が名前の由来になっているという説もある)
ここまでの簡単な説明だけでも、いくつか疑問点がでてきます。まず、体重が最小と最大で2倍もの差があること。
これはオスの方が大きかったことと、夏の間は天候不順が続き食料があまり取れなかったためでした。
次に、ドードーが確認されたのは1662年が最後です。パリ自然史博物館に所蔵されているジョージ・エドワーズがあの絵を描いたのが1760年なのでそのときにはもう絶滅していて、彼はルーラント・サーフェリーが1626年に作成した絵を元にしています。
エドワーズが絵を描いた18世紀後半には、ドードーの数はもう少なくなっているらしいという認識が人々の間にはあったものの、きちんと調査して1662年以降確認されていない事実が判明したのは初めて化石が発見された1865年より後のことになります。
そして、ドードーと一般的に呼ばれているのはモーリシャスドードーで、他にもシロドードーとロドリゲスドードーという種類がいました(いずれも絶滅)。
モーリシャスというアフリカのマダガスカル島から数百km東にある小さな島の限られた森林地帯にしかいなかった鳥なのに、モーリシャスドードーはどうしてここまで有名になったのでしょうか。
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不思議の国のアリスとドードー
あなたが特に生物に興味がないのにドードーの名前を聞いたことがあるのなら、もしかしたらルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』で登場したのを覚えているからかもしれません。ずぶぬれになったアリスと動物たちに乾かしたければ走り回ればいいと指示し、それが終わるとアリスが持っていたお菓子を動物たちに配り、そしてアリスには彼女の指ぬきをいったん預かりまた与えてごほうびにするというなかなかにむちゃくちゃなキャラクターです。
1865年に『不思議の国のアリス』でルイス・キャロルが作中に強烈な個性で取り上げたことからドードーは有名になったのでした。
オクスフォード大学クライストチャーチ・カレッジで数学を教えていたルイス・キャロルは同大学の自然史博物館によく足を運んでいて、そこに展示されていたドードーの標本を目にして作品に取り上げることを着想したと言われています。
ドードーが絶滅した理由
モーリシャスには1600年前後にヨーロッパの航海者たちが上陸するようになりましたが、大きく空も飛ばず警戒心もなかった鳥だったために食料として捕獲されていました。しかし、乱獲によるよりも、彼らが島に持ち込んだイヌ、ブタ、サルなどの影響が大きかったようです。
イヌはドードーそのものを捕食し、ブタやサルなどは餌となる植物を食い荒らしてしまったために個体数を減らし絶滅してしまったと考えられています。
新たにわかったドードーの生態
さて、そんな好奇心を搔き立てるドードーですが、ケープタウン大学のデルフィン・アングスト教授たちのは22羽の個体からそれぞれ1本ずつ脚や翼の骨をサンプルにして顕微鏡でその構造を調べ、謎に包まれた生態の一部を明らかにしました。今回ドードーに関する事実でわかったのは、
- 換毛していたということ
- 産卵の時期
についてです。
アングスト教授はドードーの骨の構造をもとにそのライフサイクルを解明しました。
モーリシャス島では11月から翌年の3月までの夏の間はサイクロンや天候不順が多く、餌となる植物があまり成長しないため、ドードーは食料が乏しくなります。この期間、骨の外側が発達しなくなり線となって跡が残ります。
天候不順が起こるたびにこの線が残るわけですが、この線が集中している部分が1年間の11月から3月にあたり、次の線のかたまりがその1年後の状況を表します。
アングスト教授たちはその線のかたまりとかたまりの間に骨の密度が薄くなっている部分があるのを発見しました。
換毛のために新しい羽を生やしたり、生殖のためにメスが排卵をしたりするときに、骨の内部にあるカルシウムを使っていたためにその時期の組織は他に比べて密度が粗くなっていたのでした。
その密度が粗くなっている時期を調べた結果、
- 換毛は夏が終わる3月から始まる
- 産卵は8月から、夏が始まる11月ぐらいまで
ということがわかりました。
とくに、換毛期があったことで長年謎だったことがひとつ解決されました。
一般的に青みがかった灰色か灰褐色で描かれている絵が多いドードーですが、目撃記録の中には尾と翼はクリーム色で、羽柄は黒だというものがあります。
過去のドードーを観察した文献の中に外見が異なるものがあり、それらは別の種類をドードーと間違えたのではないかとされていました。
しかし、今回の調査結果で異なる外見をしていたドードーは種類が違ったのではなく、夏の羽と冬の羽でであったことが判明しました。
まだまだ不明な点の多いドードーですが、大きな謎がひとつ解けたようです。
参照
http://www.telegraph.co.uk/science/2017/08/24/mystery-dodo-looked-like-finally-solved-depends-month-saw/
https://www.theguardian.com/science/2017/aug/24/life-cycle-of-the-mysterious-and-long-dead-dodo-revealed-by-bone-study
http://lostzoo.com/animals/001_dodo1.html
http://www.tomorrow-is-lived.net/wildlife/extinct/dodo.html
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