アレッポでのシリア内戦が激化。病院の被害などで子供の犠牲者が100人ちかくに

アレッポの兵士
                              https://youtu.be/9pKoRd98A-0

2度目のアレッポ停戦合意の崩壊



シリアでの2度目の停戦が9月19日にふたたび破たんし、アサド政権軍によって北部の都市アレッポへの空爆が再開されて病院や学校などの被害が出ています。しかし、アレッポにおける反政府軍は依然として勢力を保っているようです。


5月以来のアレッポ停戦



4月にラタキアや東グータでの停戦を拡張して翌月にアメリカとロシアのあいだでアレッポでの停戦合意が成立しなし崩しになった後、9月12日に2度目の停戦合意がまた発効されたものでした。アレッポにおける政府軍と反政府軍の戦闘を中止し、第3勢力であるアルヌスラ戦線(シリア征服戦線)にお互いの標的を向ける方針を確認します。

Click! アルヌスラ戦線がシリア征服戦線に改称



Kerry, Lavrov agree new Syria ceasefire plan:Fight Al-Nusra, no strikes on rebels, Aleppo...https://t.co/ttpAzACTLV pic.twitter.com/fKMyjPr3em
— GGhanepoor News (@GGhanepoorNews) 2016年9月10日

米ケリー国務長官と露ラブロフ外相



停戦直後は激しい戦闘も小康状態となり、人道支援の物資がアレッポの町で撤退するロシア軍と入れ替わる場面がありました。停戦は48時間の延長が決定します。しかし、停戦合意後にもアサド政権軍がアレッポの包囲網を解かず、反政府軍も撤退を行わない状態が続きます。



5年半続くシリア内戦でも最悪レベルの空爆による被害





停戦延長が決定後も両軍の戦闘はアレッポの各所で発生し、19日になってシリア政府は反政府軍が停戦合意を守らず300件以上のテロ行為があったという理由から戦闘の再開を宣言しロシア軍による空爆をふたたび始めたのでした。


停戦崩壊後は以前にも増して激しい戦闘となり、23日から25日にかけては大規模な空爆が行われ100人を超える犠牲者が出ていて、2011年3月にシリア内戦が始まって以来、最大規模となる被害の空爆となっています。













6月にも空爆が病院に着弾し、大きな被害が



6月8日にはシリア北部のアレッポの町の反政府軍が支配する地域が空爆され、病院の近くにも着弾。少なくとも15人が死亡し、負傷者は多数出ています。








この7、8日とアサド政府軍と反政府軍のアレッポ市内を巡る争いが激化していて、反政府軍が支配する町の東側を政府軍が空爆し、政府軍が管理下に置く西側を反政府軍が攻撃するという状況が起きています。



8日の空爆はシャール地区付近を襲ったもので、バヤン病院の近くに攻撃が当たり、病院は破壊されてしまいました。攻撃の後には人々が破壊された建物のガレキの中から慌てて埋もれた人を運び出し、収容できる病院へと連れて行く救急車に乗せていきました。









シリア人権監視団によると、この空爆による死者には子供も含まれているとのことです。




7日にアサド大統領はシリアの「すみずみまで」自由を行き渡らせるとして、イラクやロシア、中国の支援を背景に反政府軍やISなどの第三勢力と戦うことを宣言していました。








アレッポは反政府軍を支援するトルコのエルドアン大統領が抱く「夢や希望の墓地」になるだろうと新しく選出されたシリア議会でアサド大統領は訴えかけています。ロシアによる空爆は、最近アレッポの反政府勢力とトルコ軍との連絡を絶つように攻撃をしかけています。




また、アル・ヌスラ戦線(現シリア征服戦線)の兵士160人がトルコ国境を越えてアレッポに入ったという情報もあり、今後さらに戦闘が激化する恐れがあります。





シリア内戦ではしばしば病院が攻撃になることがこれまでにもありました。2011年から始まったこの紛争で亡くなった医師やスタッフの数は740人。シリア国内の病院は360回攻撃にさらされています。






シリア内戦の最重要地アレッポ


アメリカの大統領選挙にリバタリアン党から立候補しているゲーリー・ジョンソン元ニュー・メキシコ知事が9月8日に出演した報道番組の中で司会者がアレッポの現状についてどう思うかと問われて、「アレッポって何ですか?」と聞き返して呆れられてしまったという話題がアメリカではニュースになっていました。


そんなシリアの重要都市であるアレッポを制圧するためにその後政府軍は地上戦も始め、反政府軍の手にあるアレッポの地域を奪取する作戦に移りました。シリアとその都市のアレッポではさまざまな国と勢力が入り混じって戦闘を繰り広げていますが、政府軍はまずアレッポの反政府軍を掃討することを最優先にしています。


ロシア軍は停戦終了後からの空爆で政府軍の支援を強化し、すでにいくつかの地域が政府軍によって制圧されたという情報もありますが、まだ反体制派の勢力はアレッポに根強く残っています。そして、激化する戦闘によって市民の犠牲も増えてしまっています。


23日以降の空爆によってアレッポの複数の病院が被害を受けています。ユニセフの発表ではアレッポ全体で少なくとも96人の子供が死亡し、223人が負傷しているとのことです。


また、10月1日政府軍の軍用ヘリからのクラスター爆弾や塩素爆弾、たる爆弾で10人の死者が出ている病院もあります。6月にも政府軍の攻撃によって病院付近に着弾し、15人以上の死者が出ていますが、シリア内戦が始まって国内の病院は360回以上の攻撃を受け、医師や医療関係者の死者は740人以上となっています。


アメリカのジョン・ケリー国務長官はロシアのセルゲイ・ラブロフ外相に対して激化するアレッポへの攻撃を中止するよう要請し、シリア内戦における協力関係に影響すると警告しました。一方のロシアは直接対話に応じるよう求め、中東情勢の安定化に努めるべきだと主張しています。




<追記>

12月に入り、激戦の末アレッポはアサド政権軍がほぼ制圧しました。アサド大統領はアレッポに残された数千人の市民退避を許可しましたが、何度も中断されたり移動中のバスが襲撃されて死者が出たりしています。


国連安全保障理事会は市民の安全を確保するために、国連や関連機関から監視団を派遣する決議を全会一致で19日に採択しました。


アレッポから退避する市民



参照

http://www.bbc.com/news/world-middle-east-37528260
http://www.bbc.com/news/world-middle-east-37454637
http://www.asahi.com/articles/ASJ9N23BTJ9NUHBI004.html
http://www.cnn.co.jp/world/35089501.html
http://www.afpbb.com/articles/-/3102548
http://www.afpbb.com/articles/-/3100274
http://edition.cnn.com/2016/10/01/middleeast/syria-aleppo-bombing/index.html
http://www.jiji.com/jc/article?k=2016121900898&g=int

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