https://youtu.be/Ge-LrBZlS4k |
相次ぐ議会選挙で躍進した「ドイツのための選択肢」とは
ドイツで9月4日のメクレンブルク・フォアポンメルン州、18日のベルリン市における議会選挙はいずれも「ドイツのための選択肢(AfD)」が大きく票を伸ばし、メルケル首相のキリスト教民主同盟(CDU)と連立与党の社会民主党が後退がニュースとして大きく報じられました。
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EUの牽引役を担ってきたメルケル首相が進める難民政策にドイツ国民が待ったをかけています。
難民政策などでメルケル首相と真っ向から対立するAfD
躍進を果たしたAfDは2013年にベルント・ルッケ氏、アレクサンドル・ガウラント氏、コンラート・アダム氏の3名が中心にになって創設された党です。しかし、ユーロ圏の離脱だけを主張するルッケ氏はそれだけでは足りないとする他2人との距離が広がり、さらに差別的な発言が増える党の方針を批判して2015年7月に離党しています。
現在、党首はフラウケ・ペドリー氏とイェルク・モイテン氏の2人体制となっています。両党首はEUのために大きな負担を追っているとして負債を抱えるギリシャなどの国を支援に反対し、さらにはイギリスのようにEUから離脱することを主張していました。
フラウケ・ペドリー党首Frauke Petry: Anti-migrant German politician with a 'dangerous smile' https://t.co/RFC59ZnSXy pic.twitter.com/k3StMd2VLW— The Straits Times (@STcom) 2016年9月11日
イェルク・モイテン党首Prof. Jörg #Meuthen: "#SPD missbraucht ihre Stiftung für Polit-Propaganda"— #AfD Kompakt (@AfD_Kompakt) 2016年11月21日
➡️ https://t.co/FI2rDFbO6I pic.twitter.com/6rsXtjFwkl
「ドイツのドナルド・トランプ」と呼ばれるペドリー党首は最近では「反イスラム」を明確に掲げ、シリアなどの難民問題についても、世界の中でも先頭に立って100万人以上の難民を受け入れていたメルケル首相とは対極的に国内への流入を拒む方針を取っています。
シリアからの難民が増えた2014年から2015年にかけて難民受け入れの姿勢を確固たるものにしていて、「西欧がイスラム化する」と訴え移民反対運動を行っている欧州中心主義団体ともつながりがあるというニュースが流れています。
7月中旬だけでドイツ国内でIS(イスラム国)が犯行声明を発表しているものを含めて5件のテロ事件が発生しており、その後もメルケル首相は難民受け入れをこれからも続けていくと明言したことから、AfDの票を伸ばす結果となっていて、現在は16の州議会のうち9つで第1党の座を占めています。
4日のメクレンブルク・フォアポンメルン州はメルケル首相の地元であったにもかかわらず、AfDが21%、CDUが19%と第2党の座を明け渡しています(第1党は社会民主党の30.3%)。
また、18日のベルリン市の選挙ではAfDが同市での初選挙で14.2%を獲得。社会民主党は前回の28.3%から21.6%に、CDUは23.3%から17.6%に下がっています。
メルケル首相が進めてきた未来のエネルギー(再生可能エネルギー)政策についても、脱原発のために電気料金が上昇してしまい、石炭などの火力発電の割合が増えていました。しかし、パリ協定への批准によりCO2の削減が必要となることから、再生エネルギーに戻らざるを得ない状況となっていることにもAfDは批判を強めています。
参考:ドイツの再生可能エネルギー政策。デメリットは?発電比率の割合は?
EUをリードする立場に立ってきたために追うことになってしまった、負債国の負担や難民問題などに対して感じている国民の不満をすくい上げることで支持を獲得しているポピュリスト政党と言うこともできます。そうした政策の点でイタリアの「五つ星運動」と共通しています。
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入国管理制度の永久復活
AfDは「入国管理の恒久的な再導入を検討するべきだ」とも主張しています。これはEUなどの国々をビザなしで渡航できる「シェンゲン圏」を否定するもので、ペドリー党首はドイツ国内に不法に入国する移民を完全に排除するという考えを打ち出しています。
#PEGIDA @ #Dresden 05.09.2016#Dd0509 #Visitdd #AufDieStraße #TagDerSachsen #MerkelMussWeg #VisitDresden pic.twitter.com/GmSxkp9bol— PEGIDA OFFICIAL (@OFFICIAL_PEGIDA) 2016年9月5日
9月5日の行われた反イスラム団体「PEGIDA」のドレスデンでのデモ行進
AfDは設立当初から反イスラムを政策に掲げていたわけではなく、正式にその思想を取り入れたのは2016年5月で、「イスラム教はドイツに属するものではない」という理由から導入しています。
また、「自由で民主的なドイツの社会基盤は、法律とユダヤ教やキリスト教、人文主義に基づいた文化によるもの」であって、イスラム教が入り込む余地はないとAfDは主張しています。
ヨーロッパでのイスラム教への風当たりは日増しに強くなっていて、ニースでのトラック突入テロがあったフランスでもムスリムの水着「ブルキニ」の着用禁止を巡って論争が起きたり、2017年の大統領選挙に再び立候補を表明したサルコジ氏はイスラム教徒への規制強化を訴えています。
また、移民流入を防ぐ動きを見せているハンガリーやオーストリアでは国境の入国管理を厳しくしているといニュースがあります。
EU離脱の国民投票を公約
ドイツのEU離脱や反移民政策を訴えているAfDは、EU各国が対応に頭を悩ませているトルコとの交渉も一切妥協しない姿勢を示しています。
EUはトルコにEU加盟を前提としたシェンゲン圏のビザなし渡航を条件にギリシャを通過する難民のバルカンルートを封鎖し、トルコに送還する合意を取り付けていますが、AfDとしてはドイツにとってEUも必要なければシェンゲン圏も白紙にするつもりなので、トルコとの交渉そのものがなりたたないというわけです。
AfDは現在もEU離脱の国民投票の実施を盛り込んでいます。AfDを始めとした極右のEU離脱を主張する各国の勢力はイギリスのEU離脱決定やヨーロッパで続いたテロなどの影響からナショナリズムを掲げることで力を伸ばしています。
特にペドリー党首はEU離脱派のオーストリア自由党(FPOe)との連携を進めています。12月の大統領選挙では自由党のノルベルト・ホーファー国民議会(下院)第3議長がEU初の極右大統領になる可能性もあります。
オーストリア大統領選挙決選投票 EU懐疑派で民族主義者のホーファー氏 敗北認めるhttps://t.co/12nl4Jp39P pic.twitter.com/gtZYLAgfqp— Sputnik 日本 (@sputnik_jp) 2016年5月23日
EU加盟国の中で極右政党が勢力を伸ばすとなれば、今後は移民問題のみならずEU分裂までもありえない話ではなくなってきます。
<追記>
2/4
ドイツのための選択肢のテューリンゲン州代表を務めるヘッケ州議会議員が1月17日に、首都ベルリンにホロコースト記念碑があることを非難し、ナチスによるユダヤ人の虐殺に対する贖罪を中止するよう訴え、ドイツ国内で大きな反発を受けました。
イタリアの政党「五つ星運動」についても読む
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参照
http://edition.cnn.com/2016/09/19/europe/berlin-election-merkel/
http://www.jiji.com/jc/article?k=2016091900050&g=int
http://www.huffingtonpost.jp/2016/09/04/merkel-dcu-afd_n_11862876.html
http://www.bbc.com/news/world-europe-37274201
http://www.newsdigest.de/newsde/column/dokudan/6371-987.html
http://www.bbc.com/japanese/37273097
http://www.jiji.com/jc/article?k=2017011900113&g=int