*追記あり
関税の対象は冷間圧延平鋼
アメリカ商務省は中国の鉄鋼メーカーから輸入する鉄鋼の一部に対して、522%の関税を課す決定を下しました。関税の対象となったのは冷間圧延平鋼で、ビルの建築材や輸送用コンテナ、あるいは自動車に用いられる素材です。
日本も反ダンピングの対象に
また、日本の冷間圧延平鋼に対しても商務省は71%の反ダンピング関税を決定しています。
⇒2018年3月のトランプ政権による追加関税についての記事はこちら
対象となった中国の鉄鋼メーカーは宝鋼集団や鞍山鋼鉄集団の子会社などで、522%の内訳は相殺関税256.4%に反ダンピング関税265.8%を加算しています。
安すぎる中国の鉄鋼に苦しむ欧米のメーカー
アメリカやヨーロッパの鉄鋼メーカーは、以前から中国のメーカーが政府の後押しを受けて不当に安い価格で鉄鋼を輸出しするダンピングにあたる行為をしていると訴えており、アメリカ貿易委員会に中国製品の輸入禁止を求めていました。
すでにアメリカの鉄鋼業界ではこの影響を受けて、2015年に1万2000人の一時解雇を余儀なくされているとしています。
中国国内の鉄鋼市場は飽和状態
一方、中国財務部は「中国製品に対して反ダンピング関税や相殺関税などフェアとは言えない方法をいくつも取っている」と批判しています。
中国ではこの10年で国内の製鉄需要は10億トンにまで成長していたのが、2013年のピーク以降、住宅需要が頭打ちになっていて鉄鋼業が現在苦しい経済状態にあり、財政部はアメリカの対応について、中国は今後も鉄鋼業界を下支えするために輸出向け鉄鋼の税還付政策を推し進めていくとコメントしています。
2015年の中国からアメリカへの冷間圧延鋼の輸出金額は2720億ドル(およそ29兆8000億円)という推算が出ています。
中国政府は国営企業の生産能力を10%削減を決定
また、アメリカ政府のこの発表の直後、中国は政府管理下にある企業は2016年から2017年にかけて鉄鋼生産能力を10%削減することを決定しています。同時に石炭関連の企業も同じく生産能力が10%削減されます。
中国が関税回避のために鉄鋼製品ベトナムを経由している問題についてアメリカが調査を開始
9月にアメリカの鉄鋼会社USスチール、ニューコア、AKスチール、アルセロールミタルの4社が商務省に対して関税を免れるために中国のメーカーがベトナムを経由して輸出しているという事実を訴えていました。
商務省は11月7日に調査を正式に開始することが内部関係者の情報により明らかになりました。
ベトナムに下された鉄鋼製品は生産元がベトナムということになり、アメリカと中国のあいだの関税が適用されないことになります。
グローバル・トレード・インフォメーション・サービスによると2016年度上半期のベトナムからアメリカへの鉄鋼製品の輸出量が前年の同時期と比べて15倍近くになっているとのこと。また中国からベトナムへの輸出も46%増となっています。
もし違法な関税の回避が確実となった場合には、新たな関税が課せられることになる可能性があります。
参照
http://jp.wsj.com/articles/SB10192246251775523818204582421052858962674
こんな記事もあります
- フォルクスワーゲン社が排ガス不正の影響で22年ぶりの赤字転落
- 世界の金市場は、インドのモンスーンにかかっているという理由
- カストロ議長「キューバが米州機構に復帰することはない」
- 中国軍の孫建国氏「南シナ海で問題が起きるのも恐れていない」
- 新しくなったパナマ運河はどうなったのか?料金や通行できる船も新しく
- インドネシア政府がタックス・アムネスティを導入。海外の隠し資産を国内に呼び戻す狙い