ネバレンダムは行わない
投票の実施まであと1ヶ月あまりとなったイギリスのEU離脱の是非を問う国民投票(Brexit)は、いまだに賛否の両方が40%と拮抗したどちらに傾くかわからない状態ですが、17日にデービッド・キャメロン首相はたとえ結果が僅差になったとしても、「再投票は行わない」という発表をしました。
キャメロン首相は、
「私の考えは極めてはっきりしている。国民投票は一回だけの投票だ。世代に一回、人生に一回だけの機会になる。投票の結果が今後をそのまま決定する。投票が残留になったら、残留する。それで決定。投票が離脱になったら、離脱する。それで決定になる。ネバレンダム(neverendum)は行わない。レファレンダムだ。」
とロンドン市長公邸(マンションハウス)でコメントしています。
6月23日で国民投票を終わらせたくないEU離脱派
これはEU離脱を訴えているイギリス独立党(UKIP)のナイジェル・ファラージ党首が2:3あるいは1:3くらいの票差が生まれるくらいまで投票を繰り返すべきで、それまでは長く時間がかかろうとも終わらせるべきではないと主張したことへの反応でした。
ネバレンダムとは、"never end"(決して終わらない)と、"referendum"(住民投票)を合わせた言葉で、決定的な差が出るまで何回も投票を行うことを指します。
また、ファラージ氏はEU残留派の「不正な」活動が行われているとして、残留への投票が違法と見なされる可能性があると指摘しており、やや不利な形勢にある国民投票をなんとか望む形に持っていこうとしています。
元ロンドン市長のボリス氏もこの国民投票でEUに関する問題が解決されるわけではなく、それは残留することでイギリスがEU内で阻害されているような気分になることが予想されるとしています。
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それでも、デイリーテレグラフ紙の行った世論調査では残留派が51%、離脱派が45%とやや残留を望む人が多くなっています。離脱派の主張のひとつであった、EUと距離を取った方がイギリスの経済が好転するという意見が、国内外の政治家や経済人の議論によって否定されてきたからでした。
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現状のままでは、わずかですがEU残留派が勝利する可能性があり、そのわずかな差で決定してしまうことにファラージ氏だけでなく、キャメロン首相と同じ保守党のボリス・ジョンソン氏などのEU離脱派は危惧し、投票の続行を望んでいるようです。
参考記事:英国のEU離脱に賛成の立場の人、反対の立場の人
スコットランド独立の国民投票の場合
イギリスで行われた国民投票というと、2014年のスコットランド独立についての投票がありました。このときの結果は反対が55%で賛成が45%となり、スコットランドの独立は見送られる形になったのですが、スコットランドの独立を進めてきたスコットランド国民党(SNP)と支持者はその後ももう1度国民投票を実施するよう求める活動を続けています。
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