トルコのエルドアン大統領がEU内でのビザが免除されないなら難民受け入れを打ち切ると声明



*追記あり

ドイツなどのビザ免除へ消極的な姿勢に対抗




トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は、EUに対してEU圏内の移動にトルコのビザ免除が認められないなら3月に合意した難民の送還受け入れを打ち切り、再びヨーロッパへの移民流入を行うつもりだと声明を発表しました。


参考記事:EUとトルコの難民送還の合意。バルカンルート閉鎖の背景






これはドイツのメルケル首相が23日にエルドアン大統領との会見後に、トルコのビザ免除について「数週間で条件が整うことはないだろう」と即時実現が難しいという見解を示したことに対する反応です。




これに先立つ5月4日に欧州委員会は欧州議会と加盟国に対してトルコのビザ免除について6月末までに実現する提言を行っていましたが、フランスやドイツが前提として求めた72の条件をトルコは満たしていないことからメルケル首相は導入に否定的な姿勢を表明したのでした。




(ビザ免除)が実現されないなら難民受け入れはない





エルドアン大統領はイスタンブールで開かれた世界人道サミットの閉幕に際し、「実現がなされないのならば……、トルコ共和国議会は(難民の)再受入れの合意に関する枠組みを決定することもないし法制化することもない」と発言しています。




またシリア難民の受け入れを速やかにするために必要な支援としてEUに求めた30億ユーロ(およそ3700億円)の支払いもなされていないことにも不信感を抱き、「トルコから何かを頼んでいるわけではない―我々が求めているのは誠意である」としています。





独裁を強めるエルドアン大統領とEUの関係






一方のEUは独裁体制を固めるトルコへの警戒心を強めています。学者やジャーナリスの摘発が相次ぎ、テレビや新聞などのメディアも閉鎖に追い込まれ、2014年から数えて大統領侮辱罪は1800件を超えています。5月20日にはクルド系の野党を標的にした議員の不逮捕特権をはく奪する憲法改正法案を可決させています。






EUとトルコをつなぐ役割を果たしていたダウトオール氏が6日に辞任を表明しており、エルドアン大統領の忠実な側近であるユルドゥルム運輸海事通信相がその後任に就任することが決まっています。これによってエルドアン大統領に権力がさらに集中し、仲介役だったダウトオール氏が不在になったことでEUとの軋轢が高まるのではないかと考えられます。




ダウトオール首相が辞任前に発表した内容では、EUとトルコの合意によってギリシャに渡航するシリア人やイラク人の数が2015年の11月には6000人だったものが2016年の4月以降はわずか130人にとどまっているということです。





ただ、トルコ国内の難民キャンプの環境についてはアムネスティ・インターナショナルから人権が守られていないという指摘も出ており、5月20日にはギリシャの裁判所が同じような理由からトルコへの難民送還をやめるべきであるという判決を出しています。





関連記事:ギリシャでトルコへの難民送還はやめるべきだという判決が下される。その理由は?




難民問題とトルコのEU参加に向けた動きが複雑に絡み合ってさらに見通しが難しい状況になりそうです。



クーデター未遂後のトルコとEU




<追記>

その後トルコでは7月15日にエルドアン政権の打倒を目指した一部の軍関係者によるクーデターが実行されましたが失敗に終わります。クーデターに関与した人物を徹底的に粛清しようとエルドアン大統領は廃止していた死刑制度の復活に言及します。



死刑制度の廃止はEU加盟の前提として必要な条件であったため、エルドアン大統領のこの姿勢に対してEUは同国との交渉を中断します。


8月末になってようやくEUはトルコとの交渉を再開する予定であると発表。難民問題とトルコのシェンゲン圏自由渡航の解決に向けて本格的な話しあいが進められます。




しかし、11月24日に欧州議会はトルコとの交渉を凍結することを求める決議案を賛成多数で可決します。これには法的な拘束力がないため、交渉の打ち切りに直結するわけではありませんが、EU加盟国がトルコに対して強い不信感を抱いていることが明らかになりました。




上海経済系力機構への加盟も示唆していたエルドアン大統領は25日にバルカンルートの合意を破棄する可能性を表明し、EU議会の決議に非難しています。


エルドアン大統領






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参照
http://www.jiji.com/jc/article?k=2016112700058&g=int



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