https://youtu.be/KKWC_cxf76I より |
ツィプラス政権の法案を急進左派連合と独立ギリシャ人のほぼ全員が賛成し可決
ギリシャ議会は22日に追加の債務支援を受けるための新たな課税18億ユーロ(およそ2200億円)と緊縮政策を300の議席数の内、与党の急進左派連合(Syriza)と独立ギリシャ人の153人が賛成票を投じ、これを承認しました。
ギリシャのアレクシス・ツィプラス首相は議決に先立ち、
「今夜ヨーロッパの首脳たちはギリシャが責務を果たしているというメッセージを受け取り、明日からまたそちらも約束を果たしてくれることと、私は信じている」
と国会で発言しています。
国民からは強い反発も
IMFやドイツ、そしてEU諸国が注目していた今回の法案が通過したことにより、24日に開かれるEUの財務相会議においてギリシャへの財政支援が認められる可能性が高まってきましたが、議会の外では法案に反対する人たちが抗議のデモを行っていました。
Another austerity vote takes place today in the Parliament. Protest against it now#Athens #Greece pic.twitter.com/8sUao4mwab— Savvas Karmaniolas (@SavvasKarma) 2016年5月22日
また、急進左派連合の議員であるヴァシリキ・カトリヴァノウ議員だけは緊縮案に反対票を入れ、23日の朝に議員を辞職することを発表しています。
7500ページを超える緊縮法案の内容
増税の内容
通過した緊縮法案は7500ページに及びます。たとえば日常品に対する課税は以下のようなものが含まれています。
- ガソリン
- タバコ
- アルコール類
- インターネット
- テレビの有料番組
- ホテルの宿泊
- 自動車
- コーヒー
- 個人財産
また、付加価値税も23%から24%に増税となる予定で18億ユーロ(およそ2220億円)、また5月初めにティプラス政権は年金の削減を決定して54億ユーロ(およそ6670億円)の増収があると考えられています
国家財産の売却
不動産資産向けの民営化基金を99年の積み立て、さらにはギリシャの国有財産の中でも価値があるものを7万1500点をEUの管財人のもとで売却するといった内容が盛り込まれています。
国有財産の売却により、ギリシャ政府は2010年から受けてきた救済融資の2500億ユーロ(およそ31兆円)に相当する金額を得ることが見込まれ返済のめどが立ち、緊縮財政を実施することで追加の救済融資が受けられる道が開けたことになります。
ギリシャへの財政支援はどうなるか
欧州委員会と欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)はギリシャに対して厳しい見方を崩しておらず、今回の緊縮案では追加の救済支援が得られず財政黒字3.5%も達成できないため2018年に払うべき利息分に間に合わないだろうという見方を示しています。
しかし当面は、ギリシャ政府は6月7日にIMFへの3億ユーロから始まり、数か月の間に35億ユーロの返済が迫っているため、デフォルトを回避するためには何としてもEUからの追加支援を得なければなりません。
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一方、EU諸国も6月はイギリスのEU離脱を巡る国民投票やスペインの総選挙などが控えており、さらにはシリア難民の問題もあるためギリシャのデフォルトが現実のものになってしまえばEU内での大きな懸案を抱えてしまうことになるので、それを避けるためにも追加支援は通るのではないかと見られています。
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いずれにしてもギリシャが背負っている負債の総額は3210億ユーロ(およそ40兆円)という途方もない金額。今後もEUと国民との間でギリシャ政府は難しいかじ取りを続けなければなりません。
ギリシャの財政支援を負担に感じているEU加盟国もあります。ドイツではメルケル首相の方針に対し「ドイツのための選択肢(AfD)」がこれに反対し、EUからの離脱を主張しています。
それでは、ギリシャへの支援に大きく関わっているECBのトップはどんな人物なのでしょうか。
イタリアの財政危機を救った「スーパーマリオブラザーズ」の1人、マリオ・ドラギ
2015年の12月の緩和策を上回る刺激策パッケージで、3金利の引き下げを行い、市場はこれに好感を持って一時ユーロドルは1.08ドル台まで下落。それがドラギ総裁の発言でこれ以上の追加緩和策が期待できなくなったことから市場は落胆してしまったのです。
アメリカ連邦準備制度理事会のイエレン議長やイングランド銀行のマーク・カーニー総裁などの世界経済に影響を与える「要人」と呼ばれる人の発言には市場が敏感に反応しますが、今回はドラギ総裁の言葉によってせっかくの緩和策が水泡に帰してしまいかねない状況になっています。
2011年11月からECBの総裁を務めているマリオ氏ですが、その経済政策の手腕から「スーパーマリオ」エコノミストたちの間でという名で呼ばれています。
それは彼がイタリア財務省にいた時代、破たん寸前だったイタリアの財政を、当時のマリオ・モンティ首相(もう一人の「スーパーマリオ」)とともに公共事業の民営化などさまざまな政策によって、立て直した実績をたたえての名前です。
生まれがローマのドラキ氏は10代で両親を亡くし、マサチューセッツ工科大学には奨学金で通い、経済博士号を取得しています。このあとイタリア財務次官に就任し、さらに世界銀行理事、ゴールマン・サックスの欧州拠点副会長などを経験し、2005年にイタリア中央銀行総裁、2011年にECB総裁に就任します。
就任直後の50兆円の巨額投資など、その後もヨーロッパ市場を安定させるべく手を尽くしてきたドラギ総裁ですが、彼の評価に少し疑問符がついたのが2015年12月の追加金融緩和策の発表でした。発表前の期待感ほどではなかったためドラギ総裁への失望感が生まれました。そこへさらに今回の発言。
11日にはECBの内部からはドラギ総裁を支持するコメントが発表され、今回の刺激策パッケージが効果をなくしてしまわないよう支援に回る姿勢がうかがわれます。今後、ECBとドラギ総裁はどのような動きを見せるのでしょうか。
<追記>
EUとIMFがギリシャへの追加支援を決定
5月25日に緊縮法案の承認を受けて、ユーロ圏の財務相とIMF(国際通貨基金)は支援協議の合意にいたりました。第1次評価となる今回の決定は予定よりも数ヶ月遅れる形になりましたが、ギリシャに対して総額103ユーロ(約1兆2600億円)の融資が行われます。
加盟国の中でもギリシャやスペインなどの負債を肩代わりすることに不満を持つ国は少なからずあり、各国の反EU勢力の主張の中でもっとも大きなものとなっていました。イギリスのEU離脱や難民問題のためにEUをリードするドイツでさえAfDのような極右勢力が国民の支持を集めるようになっています。
今回の決定によってギリシャの問題が1つの区切りを迎えたことになりますが、債務軽減策についてはさらなる各国内での反発を避けるために先延ばしの状態になっています。しかし、IMFは9月23日の年次報告で確実な経済回復の路線にギリシャを乗せるためには大幅な債務軽減措置が必要であるとしています。
参照
http://jp.wsj.com/articles/SB10183435217094733641104582087333996714676
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/09/imf-4.php
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