原油の増産凍結に影を落とすイランの特別な立場。


拡大するイランの原油輸出



4月に入り、イランのザンギャネ石油相は3日、4日と続けて原油の生産と輸出に関して重要な発表を行いました。まずひとつは、1日当たりの原油輸出量が200万バレルを超えたというもの。そして、もうひとつ、イランが経済制裁を受ける前の水準にまで石油の生産と輸出を拡大するといった内容でした。



ザンギャネ石油相は何よりもまず原油の生産量を回復することを優先し、増産凍結には参加しないという声明を出していました。それはイランが今年の1月に経済制裁を解除され、ようやくこれから原油のシェアを伸ばし、経済活動を活発にしなければならないという状況に置かれているから。


クローズアップ海外ニュース: 原油価格がそろそろ回復に向かう?OPEC加盟国の思惑は





そもそもイランが最初に制裁を受けたのは1979年のイスラム革命に対してアメリカからが始まりになります。次に2006年に核開発疑惑が浮上して国連による制裁があり、そして2012年前後の先進各国による経済制裁が行われます。2012年の経済制裁では1000億ドル以上の資産が凍結されました。




それが今年になって核開発の制限が認められ、4年越しに大規模な貿易が可能になったのです。イラン国内には4600万バレルもの石油が備蓄されていたとも言われています。






すぐにでも滞った経済状態を回復するためにも根幹の資本となる原油を大量に流通させたいというのがイランの方針ですが、これにはOPECや他の産油国としては原油価格の下落がさらに続く可能性が高くなり、慎重にならざるを得ません。(⇒OPECが2017年の原油需給の見通しを発表






2月にサウジアラビア、ロシア、ベネズエラ、カタールの4ヵ国が他の産油国が同調することを条件に、産油量を1月の水準に固定する提案をしていたのを、イランはすでに一度「話にならない」と一蹴しています。(⇒対シリア内戦でロシアにイラン史上初の空軍基地使用を許可







イランとその他の産油国とのギャップ





OPECのバドリ事務局長やオマーンなどもイランの状況を考慮し、増産凍結の協定に参加するかどうか、あるいは後日参加することを選ぶのかはイラン次第であるとの見方を示しています。ザンギャネ石油相も「サウジアラビアやロシアなど、世界の主要なOPEC加盟国・非加盟国が、原油生産量を1月の水準で凍結することで合意したことは、前向きなステップ」だとし、自国はその方針に習うことはできないが合意そのものには意味があるという姿勢を見せています。実際にこの合意後に原油の価格は30%以上値上がりしています。




4月17日にカタールの首都ドーハでOPEC加盟国および非加盟国はこの増産凍結について話し合いを行いますが、イランはこの話し合いに「時間があれば」(ザンギャネ石油相)とコメントするにとどまり、出席するかもさだかではありません。





そんなイランの姿勢にいらだちを見せているのがサウジアラビアです。サウジアラビアのムハンマド副皇太子は、イランが増産凍結に加わらないならば、自国も合意に参加しないという考えを表明していました。今回の、生産・輸出を拡大するというイランの声明を受けて、17日の会合にサウジアラビアも不参加、あるいは消極的な姿勢を取る可能性も出てきました。この結果、原油価格の上昇はさらに現実化しにくくなってしまうかもしれません。(⇒原油価格の低迷に苦しむブラジルベネズエラ南スーダンなど産油国の国々)




サウジアラビアにとって原油輸出の収益は国家歳入源の75%を占める決定的な要因です。2015年の赤字は1000億ドルにもなっています。同じく厳しい経済状況のロシアとサウジアラビアは毎年15%~20%増やしていた軍事費を削減しなければならないほど財政をやりくりしなければならなくなっています(ロシアは軍事費が前年比5.6%の減少、サウジアラビアは3.6%の減少。イギリスの軍事情報企業IHSジェーンズ調べ)。






マメ情報

OPEC加盟国(2016年4月現在:12ヵ国)



  • アラブ首長国連邦
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  • アンゴラ
  • イラク
  • イラン
  • エクアドル
  • カタール
  • クウェート
  • サウジアラビア
  • ナイジェリア
  • ベネズエラ
  • リビア

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