反政府地域への攻撃を強めていたアサド政権
シリアの停戦状態が有名無実の状態となりつつある中、アメリカのケリー国務長官とロシアのラブロフ外相は緊急の電話協議を行い、停戦維持に向けた方策を話し合い、その後アサド政権は「一時的攻撃の停止」を発表しました。
この1週間、シリア政府による反体制派への攻撃が激化し、200人以上の人が死亡しています。27日からアサド政権は20回にも及ぶ空爆を行っています。28日にはシリア北部のアレッポを空爆。このとき「国境なき医師団」(MSF)が支援する小児病院のアレ・グドゥス病院も被害に遭い、50人の死者を出しています。シリア人権監視団は「管理地域における残虐行為」を止めさせるようオバマ大統領とプーチン大統領に求めました。
停戦地域にアレッポは含まれず
ケリー国務長官はアサド政権による「故意」の空爆であると非難し、停戦崩壊に強い危機感を抱き、ラブロフ外相との話し合いを行ったのでした。これによりアレッポへの攻撃を減らし、「永続的な違反」状態にあったダマスカス近郊のラタキアや東グータでの停戦にアサド政権が応じる形となりました。
ロシア国営メディアによると今回の停戦合意は首都のダマスカスで24時間、その近郊都市で72時間の適用となり、停戦開始は30日午前1時からという内容です。AFP通信の情報では、アメリカはアレッポも停戦地域に含める提案をしたけれど、ロシアは攻撃の減少にとどめることにし、ロシア側の提案が通ったものと見られます。
不安定な状態の中での2月の停戦合意
2月27日には一時シリア国内での停戦合意がなされましたが、直後に自動車爆弾テロが起きるなど有効な手段となりませんでした。
停戦合意直後のシリアAFP: Savouring a morning without bombs in Syria as ceasefire takes hold https://t.co/jf711liqx6 pic.twitter.com/5PCqIuEpXl— Mohamed Naseer (@MDVnaseer) 2016年2月27日
停戦に同意したのは国内穏健派のみ
シリアの現地時間の深夜に停戦時間に入り、静寂が戻ったシリア国内でしたがそれからわずか4時間後に政府統治下のハマー県サラミーヤで自動車爆弾テロが発生。少なくとも2名が死亡しました。
その後過激派組織「イスラム国(IS)」がテロの犯行声明をネット上で発表。その声明ではシリア政府軍に対しての攻撃で20名を殺害し35名を負傷させたと主張。
国連が後押しをして、アメリカとロシアも共同声明を発表して実現した停戦だったが、ISやアル=ヌスラ戦線といった過激派組織は参加していません。
ジャニッシュ=アル=イスラムは停戦合意中に政府軍が戦端を開いたと主張
一方で、政府に対抗する勢力のジャニッシュ=アル=イスラムは、停戦合意中にもかかわらず、政府軍が東グータ地区にたる爆弾落とし、このきっかけを作ったとロイター通信に発表しています。
シリアではこれまでの内戦で25万人の人が命を落とし、けがを負った人は100万人にも及ぶ。家を失った人は1100万人、そのうち400万人が難民となって国外に逃れています。
ロシアとアメリカの間で続けられるシリア内戦の停戦交渉
それからも停戦交渉は、ロシアとアメリカが主導して行われていました。
国連との交渉段階に入っていたこの数日だったのですが、反政府勢力が交渉の席から外れたところから戦闘が悪化。貧窮地域への人道支援が軍の包囲によって阻まれ、物資が届かない状態に陥っていました。
「我々はこの喫緊の地域に合わせて、2つの個別地域についても協議中です。実際はすべての地域を視野に入れています。つまり、ラタキアやダマスカス、東グータに限定しているわけではなく、アレッポなど今問題があるか潜在的な問題があり地域についても状態が回復できないか試行しています。そして、敵対行為が停止した状態への復帰を目指します」というのがアメリカ国務省の公式発表です
国連大使のスタファン・デミストゥラ特使によると、シリアでの内戦は6年目に入り、すでに死者は40万人に達するということです。
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