8000頭に当たる105トンの象牙とサイの角
アフリカ西部の国、ケニアでうず高く積み上げられた象牙の山は、火がつけられるとたちまち炎の塊となっていきました。
これは4月30日にケニア政府が増え続ける象やサイなどの密猟に業を煮やし、象牙やサイの角105トンを集め、これをいっせいに燃やすことで密猟に対して強い姿勢で臨む姿勢を印象付けたのでした。
中国を中心としたアジアでの象牙の需要はここ数年衰えを見せず、サハラ砂漠以南で大量の数のゾウやサイが犠牲になっているのが現状です。
密猟に対するケニア式の姿勢
「象牙など、ゾウから離れてしまったらケニヤにとってはまったく無価値なものなのだと、我々は宣言するものである」そう言ってウフル・ケニヤッタ大統領は火をつけました。今回の焼却に集められた象牙や角は個体数にすると8000頭になり、ブラックマーケットでの取り引きにすると160億円相当する額になります。
ケニアの象牙の焼却の公開は1989年から行われていて、ケニヤッタ大統領の言葉では「売られるくらいなら燃やしてしまった方がまし」だというのがこの国の方針のようですが、30日に集められた象牙などの数は過去を超える最大のものとなりました。
絶滅も危惧されるアフリカゾウ
コロラド州立大学のジョージ・ホイットマイヤー教授らが行った調査によると、2010年から2012年の間に殺されたアフリカゾウの数は10万頭にもなるとのこと。この数字は過去の3300年間の間に犠牲になったゾウの数に相当します。このままのペースで密猟が続けられたら間違いなく絶滅の道をたどるという報告が提出されています。
2015年に最大の象牙市場である中国とアメリカが公式に象牙の輸出入を禁止したために象牙価格は下落には向かっていますが、1970年代には120万頭いたアフリカのゾウは今や40万頭から45万頭と、およそ3分の1の数にまで減少しています。
激減したサイの数
サイはゾウよりも危機的な状況にあり、アフリカ全体で3万頭を下回る数になっています。その中でもキタシロサイは2015年11月23日にアメリカの動物園で飼育されていた1匹が死んで、世界中で4頭しか存在しません。
1970年代にはケニアだけで2万頭のサイが草原を歩いていましたが、1990年代には400頭に落ち込み、現在は650頭のクロサイが生息しています。キタシロサイの4頭の内、3頭がケニアで厳重な警戒の下保護されています。
象牙売買の全面禁止をめざし、密猟をなくす
今年の10月に南アフリカで開かれる第17回ワシントン条約締約国会議でケニアは、密猟の横行が種の保存を危機的な状況に追い込んでいるとして、象牙売買の全面禁止するよう求めるつもりだということです。
ワシントン条約(正式名称:絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)では1989年に象牙の商業取引を禁止していますが、1回限りの販売については許可しています。
南アフリカでの訴えがうまくいくよう、今回の象牙焼却の公開式典にはガボンのアリー・ボンゴ・オンディンバ大統領も売買全面禁止の支援者として招かれています。(⇒オンディンバ大統領の選挙勝利に対して野党支持者が抗議)
ガボンで象牙目的にマルミミゾウが密猟。国立公園内で25000頭が犠牲に
無人監視や武装警備、GPSの利用など、最先端技術を駆使して密猟を防ごうとしてもなかなか減少しないのは、需要があるという点と、もうひとつは密猟者が罪に問われて処罰されるケースがほとんどないというのも大きな理由のようです。
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