糖尿病の1型の治療に貢献する大きな研究結果が。膵臓内の分子Glima(グリマ)とは?



インスリン生成ができない1型糖尿病を防ぎ、進行を抑える治療への応用が期待される




医学界の科学者たちの間で数十年来ずっと謎とされてきた1型糖尿病の発症機序が明らかになりました。イギリスのリンカーン大学のマイケル・クリスティー教授が率いるチームが行った研究は1型糖尿病のリスクがある人を判別したり、病気の進行を抑える新しい治療法の開発が可能になります。




1型糖尿病とは?




1型糖尿病は体内でインスリンが生成できなくなる病気です。



インスリンの役割




インスリンはランゲルハンス島のβ細胞で作られる、血液中の血糖値(血中グルコース濃度)を調節する役割を持ったホルモンです。食事をするなどして血液に増えたブドウ糖(グルコース)を体の臓器に取り込み、それをエネルギーとして利用したり蓄えたりします。また、肝臓や筋肉でブドウ糖がグリコーゲンに合成されるのを促進し、合成されたグリコーゲンが分解されるのを抑制する働きもします。




1型糖尿病



このインスリンが、本来は体外から侵入してきた感染症ウィルスに対して機能するはずの免疫システムに攻撃され破壊されてしまい、インスリンの自己生成ができなくなってしまうのが1型糖尿病です。



ちなみに、もう1種類の糖尿病、2型糖尿病は遺伝や高カロリー、高脂肪食、運動不足などによりインスリンの作用不足が起きた結果、血液中のブドウ糖が正常に比べ高くなる病気です。




免疫系のターゲットになっている5つめの分子「Glima(グリマ)」の特定




糖尿病治療に多大な影響を与えることになる今回の画期的な発見の内容は、1型糖尿病患者の人の膵臓内で免疫システムによって破壊されてしまう分子の特定でした。すでにこれまでの研究によって、免疫システムの標的になる分子のうち4つが解明されてきましたが、「Glima(グリマ)」と名づけられた5つめの分子だけが、20年近く特定されぬまま現在にいたっていました。



クリスティー教授らはそのGlimaの正体を解明することに成功したのでした。



グリマは「Tetraspanin-7(テトラスパニン-7)」という分子でした。テトラスパニン-7の量を調べることにより1型糖尿病かどうかを高い精度で診断することができるようになり、さらには免疫系がこの分子を攻撃するのを防ぐ薬を開発すれば、病気の予防したり進行を抑えたりすることが可能になり、今後の治療に重要な意味を持ちます。




「私たちは”グリマ”という物理的な性質を持ったものについての知識はいくらかあったのですが、分子の特定については何年も指の先からすり抜けるように実現しないままでした。そのために、関連する自己抗体試験も進みませんでした。それが今回、私たちの研究でグリマをテトラスパニン-7という物質であるときちんと特定できました。これからこの結果を活用して糖尿病の予測と免疫療法い役立てたいと思います」とクリスティー教授は語ります。





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