最短でも地球から到着まで5カ月かかる火星
国際宇宙ステーション(ISS)に最長となる1年の滞在をしていたアメリカのスコット・ケリー宇宙飛行士とロシアのミハイル・コルネンコ宇宙飛行士が2日に地球へ帰還しました。
これは今の技術で最短でも5ヶ月かかる火星への有人探査を視野に入れたもので、宇宙での長期滞在が人体に及ぼす影響を調査します。
アメリカのオバマ大統領は2030年代での火星有人探査の実現を目指していて、しかも10年間の滞在を計画していると言います。
ちょっと私たちにはまだピンと来ない話かもしれませんが、日本でも今年は映画『オデッセイ』が公開され、少しずつ火星が身近な存在になってきています。
2014年にNASAは火星宇宙探査船の「オリオン」を打ち上げに成功しています。
しかし、人類が初めて月面着陸したのが1969年のことですから、それから47年が経つことになります。月と火星、そんなにも違うのだろうかと、いろいろ比べてみようと思います。基準として地球も入れて。
月と火星と地球を比較する
地球からの距離
- 月:38万4400km
- 火星:最小距離で約5500万km、最大距離で9900万km
- 地球:0km
地球が火星にもっとも近づいた時が最小距離になりますが、実は火星は太陽の周りをきれいな円の軌道を描いているわけではないので、近づいた状態でも常に5500万kmになるわけじゃありません。
それにしても地球から火星までの距離は月までよりも144倍以上になります。
自転周期(1周を1日とすると)
- 月:27.32日
- 火星:24時間37分
- 地球:23時間56分
火星の1日はけっこう地球に近くて1時間も開きはないんですね。
公転周期(1周を1年とすると)
- 月:27.32日
- 火星:686.98日
- 地球:365.26日
月は自転と公転がまったくおなじ周期になっています。火星は1年が321も長くなるので、地球基準で10年の滞在が火星では5年とちょっとといったところになります。火星基準の1日を"sol"と言います。一方、地球の10年は月の133年以上に相当します。
半径
- 月:1738km
- 火星:3396km
- 地球:6378km(赤道半径)
この2つと比べると地球は大きいですね。火星が月の2倍弱というのもちょっと意外です。
大気
- 月:(ほぼ)ない
- 火星:平均気圧6hPa~7hPa。95%以上が二酸化炭素
- 地球:平均気圧1013hPa。窒素が78%以上、酸素が20%以上
火星では北と南の極ではあまりの寒さに気体の二酸化炭素が凍ってドライアイスになってしまうらしいです。
気温
- 月:昼は110℃。夜-170℃
- 火星:最高気温は27℃、最低気温-133℃。平均気温-55℃
- 地球:最高気温58.8℃(イラク)、最低気温-71.2℃(ロシア)。平均気温15℃
火星も大気があるので場所や時間によって気温は大きく変わります。地球よりも太陽から遠い文だけ平均気温が低くなるんですね。
しかし月は1日の温度差がかなり激しいことがわかります。
重力
- 月:秒速1.62m
- 火星:秒速3.71m
- 地球:秒速9.80m
物理の公式、F(重力)=ma(質量×加速度)の計算です。大きい(質量が多い)地球はその分だけ重力が増えるんですね。月は約1/6、火星は1/3よりやや多いくらいです。
もっとも高い山
- 月:ホイヘンス山(約5km)
- 火星:オリンポス山(約25km)
- 地球:エベレスト(約8.8km)
地球よりも小さな火星に太陽系でもっとも高い山、オリンポス山があります。しかもオリンポス山は火山なのだとか。
宇宙線(放射線)
- 月:100〜500mSv/年
- 火星:70〜300mSv/年
- 地球:0.35mSv/年(その他食べ物や大気などから2mSv/年)
月の放射線が地球の300~1400倍以上にもなることがわかります。しかし宇宙飛行中の宇宙船の中は放射線を地球のように遮断することができないため、1日で0.5mSv~1mSvの放射線を浴びます。年間にすると182.7~365mSv/年になります。
火星に到達するためには数カ月かかるため、技術的な放射線への対応は欠かせません。
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