医療現場における人工知能(AI)の将来


人工知能によって軽減される医療現場の負担





IDCによると、コグニティブ(認知)コンピューティングおよび人工知能(AI)システム市場は2018年に全世界の支出額が191億ドル(およそ2.1兆円)に達する見通しとなっているそうです。前年の2017年とくらべて54.2%の増加になります。


2030年には86兆円にまで成長すると見られているAI市場は、これから私たちの生活の中に確実に根づいていくことでしょう。2030年には完全に実現するだろうという自動運転もその1つですね。





今回は病院や在宅の医療場面でAIがどのように導入されるのかについて、イギリスやアメリカで発表された予測を見て行きましょう。









AIの導入で医療現場はどう変わる?


実は、アメリカ国内には、人工知能の学習を目的としたものも含めて、病院や在宅でAIのモニタリングを利用して怪我や病気の治療および予防の医療サービスを受けている人がすでに5万3000人以上います(2017年時点)。これがあと3年後の2021年には310万人にまで増えるだろうという調査結果をアメリカのリサーチ会社ABIリサーチが発表しています。現在のおよそ60倍の人がAIの助けを借りた医療を受ける見通しになります。




では具体的に、AIは医療現場でどのような役割を担うことになるのでしょうか。




診断


まずは診断の補助です。現在、アメリカではインターネットや電子機器、携帯電話、ウェアラブルデバイス、医療機器などを介して健康状態に関する情報を集めています。こうしたデータをアルゴリズム的解法や医療判断の支援ツールに用いられ、診断がいまよりもかなり正確なものになり、誤診が減ります。特に肺炎や乳がん、皮膚がん、眼疾患、心疾患についての診断の精度が上がると考えられています。病気の早期発見も高まり、透析が必要になる前に腎臓の病気に対処することも可能になるでしょう。




患者へのサポート


いまは看護師などが行っている入院患者の世話はAIを搭載したロボットが代わりに対応することになります。普段の食事や飲み物の提供、手術後のリハビリを手伝います。また健康状態を常にチェックし、必要なときには医療スタッフを自動的に呼び出すことも。入院患者へのサポートだけでなく、通院患者自身の健康に関するメモを取ってくれたりや診療の予約をしてくれたり、処方された薬の服用を促したりしてくれます。




医療事務


診療の予約を管理、治療情報の医療スタッフ間でのやりとり、処方箋の入力など膨大にある医療事務の作業量がAIによってかなり軽減されます。これによって診断や治療にもっと多くの時間と労力を割くことが可能になります。







このように医療現場でAIが導入されることにより、情報の管理と活用やひとりひとりの患者への対応の質と量が向上するであろうと考えられています。医療ロボットの導入でイギリス国内で年間125億ポンド(およそ2.5兆円)の費用が削減されるとされています。また、アメリカで2021年に310万人がAIによる医療サービスを受けた場合、年間52億ドル(およそ5720億円)の削減が見込まれています。



そうなるとやはり心配になるのが職の問題ですが、医療の現場ではAIが人間にとって代わってしまうことにはならないようです。イギリスの国民保健サービスの報告によると「自動化によって大量の失業者が生まれてしまう恐れがある他の業界とは違い、医療現場における自動化は人間の技術や才能を補助することが第一で、治療情報の交換や予約の管理、処方箋の発行など行政的な手続きを減らすことを目的にしている」


また、ロボットが単体で入院患者の対応をするのではなく、看護師とともに作業をする役割になるため、医療関係に従事している130万人の雇用をおびやかすことはないとしています。ただ、AIによる失業はどの国でも現実的なものとして迫っているデリケートな問題であるため、控えめな予測を出しているのかもしれません。










参照

https://www.theguardian.com/society/2018/jun/11/the-robot-will-see-you-now-how-ai-could-revolutionise-nhs


https://www.forbes.com/sites/jenniferhicks/2018/06/08/see-how-this-hospital-uses-artificial-intelligence-to-find-kidney-disease/#c2e9c72e8f03






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