オピオイドの過剰摂取による死亡が年間2万から4万人に上るアメリカ
2017年8月、アメリカのドナルド・トランプ大統領は「国家的な緊急事態」という言葉を使って、オピオイド系鎮痛剤の薬物中毒について危機感を表明しました。
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オピオイド中毒への対応に割く予算のために財政が圧迫されつつある自治体も出てきているほどに大きな社会問題になっています。
オピオイドとはどのような物質なのか、なぜアメリカで問題になっているのかにクローズアップしたいと思います。
オピオイドとは?
オピオイド(Opioid)とは、植物のケシから生成されるアヘンをもとに作られた麻薬性鎮痛薬あるいはそのアヘンの合成鎮痛薬など、アルカロイド(窒素を含む塩基性の植物成分の総称)・モルヒネ用活性を持っている薬剤のことを指します。紀元前3400年ごろに文明を発達させていたシュメール人はすでに未成熟のケシの実からアヘンを作る技術を持っていて鎮痛薬として使用していました。
オピオイドは体内に摂取されたあとは血液中を移動し、中枢神経のオピオイド受容体に作用して脳や脊髄に影響を与え、痛みを和らげる効果を持っています。
日本では、
- モルヒネ
- フェンタニル
- タペンタドール
- トラマドール
- メサドン
などが医療麻薬として使用されています。
最近ではがんの疼痛治療でモルヒネなどが処方されています。
鎮痛剤としての効果は高いものの、その分副作用も強いので注意が必要です。
副作用
- 悪心・嘔吐
- 便秘
- 眠気
- せん妄・幻覚
- 呼吸抑制
- 排尿障害
- ミオクローヌス(突発的に起こる不随意運動)
- 痛覚過敏
- 血管系障害
2017年4月に急死したアメリカの歌手プリンスさんは、関節の痛みを和らげるために飲んでいたフェンタニル(モルヒネの50~100倍の強さ)の過剰摂取が死因だったとミネソタ州検視当局の発表がありニュースでも広く取り上げられていました。
Documents highlight Prince's struggle with opioid addiction https://t.co/v20IXYU2AQ pic.twitter.com/g74TRPXPuj— CNBC International (@CNBCi) 2017年4月18日
アメリカにおけるオピオイド中毒
Every day, more than 90 Americans die after overdosing on opioids.
アメリカでは毎日90人、オピオイドの過剰摂取により死亡している
-National Institute on Drug Abuse (アメリカ国立薬害研究所)のサイトより
プリンスさんの事故によってあらためてその問題が浮き彫りとなった、アメリカのオピオイド中毒。
現在、アメリカ国内でオピオイド系鎮痛剤の中毒にかかっている人の数は190万人、過剰摂取による死亡は5年間で16万5000人にまで達するとされています。
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アヘンによる薬物中毒の問題は1900年代初頭にアメリカで社会問題となり、400人に1人がアヘン中毒という状態になっていました。
時の大統領セオドア・ルーズベルトはアヘン対策専門の役職を設置してこれに対応。ウィルソン大統領時代の1914年にはアヘン規制法も成立されます。
その後3度のアヘンや麻薬の規制によって着実に国内の中毒者の数を減らしてきたアメリカですが、今度は1990年代後半にアヘンと同じくケシから合成されて製造されるオピオイド系鎮痛剤の中毒者が増加してしまいます。
製薬業界はオピオイド系鎮痛剤には常習性が低く慢性痛の緩和に大きな効果があると主張し、これを受けて医療従事者は高い頻度で処方するようになりました。
現在、オピオイド系鎮痛剤を処方されている人のうち21~29%が本来とは違う目的で使用していて、処方されている人の全体で8~12%が常習者になっています。また、ヘロインを使用している人の80%がオピオイド系鎮痛剤の悪用から発展していることから、さらに強い薬物へと依存する状態に陥ってしまいます。
オハイオ州のロス群などでは養護施設に保護されている児童のうち、およそ75%の両親がオピオイド中毒にかかっていて、児童のためのカウンセリングや長期収容などの費用がかさみ州財政の大きな負担となっています。
参照
https://wired.jp/2016/04/23/americans-addicted-prescription-opiates/
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/09/post-8525.php
https://www.drugabuse.gov/drugs-abuse/opioids/opioid-crisis