2016年に大統領や首相が交代した国々(アジア・ヨーロッパ編)

ロンドン 国会議事堂 ビッグベン

今年指導者が交代した国は?その理由や背景は?



2016年もそろそろ終わりに近づいてきましたが、今年も海外でさまざまなニュースがありました。各国の政情が大きく動いた年でもあり、指導者の交代もありました。




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ということで、今回は2016年に指導者が交代したアジアとヨーロッパの国を紹介していきたいと思います。






アジア



ミャンマー


ティン・チョー大統領(写真左)





3月15日にミャンマー議会は国民民主連合(NLD)のティン・チョー氏を大統領に選出し、3月末にテイン・セイン大統領が退任。これによって50年以上続いた軍主導の政治から民政へと移行しました。


民主運動を続けてきたアウン・サン・スー・チー氏(写真右)にはイギリス国籍の息子がいるため、外国籍の家族がいる場合には大統領にはなれないというミャンマーの憲法によりその座につけません。

しかし、ティン・チョー氏はNLDの幹部でスー・チー氏の側近で、国家最高顧問と外務相を兼任するスー・チー氏は実質的な指導者となっています。




フィリピン


ロドリゴ・ドゥテルテ大統領



ベニグノ・アキノ3世から6月30日政権を引き継いだのがロドリゴ・ドゥテルテ大統領。ダパオ市長を7年務め、犯罪や海賊やテロ組織を攻撃的な超法規措置によって治安を劇的に向上させたことから市民から大きな支持を得て当選しました。


その過激な発言から「フィリピンのドナルド・トランプ」とも呼ばれています。就任前から宣言していた麻薬の撲滅をするために現場の警官に犯罪関係者への発砲を許可し、秋までで2000人以上が射殺されているというニュースも報じられています。


これまでに60万人以上の麻薬犯罪関係者が自首をしていて収監所がパンク状態になるほどで、その効果ははっきり表れているものの、人権侵害の疑いがあるとして国連やアメリカはその手法を非難。


ドゥテルテ大統領はこれに対して内政干渉であり、「国連脱退も辞さない」と発言するなど溝を深めていました。


しかし、アメリカの次期大統領に考え方が近いトランプ氏が当選したとあって、態度は軟化しています。


Click! アメリカ大統領となるトランプ氏に海外の首脳はどう反応したのか?

タイ


ワチラーロンコーン国王(ラマ10世)




政治的指導者ではありませんが、プミポン前国王(ラマ9世)が10月13日に88歳で死去したことからこれを受けて皇太子だったワチラーロンコーン皇太子が12月1日に即位しました。


国民から深く愛され、政治の調停役も担っていたプミポン前国王に代わってラマ10世となったワチラーロンコーン新国王は、3度結婚して現在は独身となっています。王族らしからぬ行動で国民からの評判はよくありませんが、タイは2014年に起きたクーデター後に軍事政権となっているため、これから調停役としての力が問われそうです。




台湾


蔡英文総統



馬英九前総統の任期満了に伴い、1月16日に行われた台湾総統選挙に勝利したのは野党である民主進歩党の党首蔡英文氏でした。大きな注目を集めた理由は8年ぶりの政権交代よりも、女性初の総統だったためでした。


当初から見られていたように、中国とは距離を置く考え方を持つ蔡総統は、「一つの中国」という、台湾の中国への統合に向けた1992年の合意についても拒否する意向を表明するなど独立した国という立場を鮮明に打ち出しています。


そんな蔡総統に就任前のトランプ氏が電話会談を設けたために、中国側はかなり神経をとがらせるという事態も起きています。日本も含め、台湾の外交は2017年も大きな変化がありそうです。




モンゴル


ジャルガルトルガ・エルデネバト首相



6月29日に実施された国会総選挙の結果、野党の人民党が過半数を獲得し、与党の民主党は大きく後退し政権交代が実現しました。


しかもサイハンビレグ首相自身も落選してしまうなど、与党の経済政策や汚職問題への不満がそのまま選挙の結果となってしまいました。


そして議会は7月8日に人民党のエルデネバト氏を首相に選出しています。





ウズベキスタン


シャフカト・ミルジヨエフ大統領



フェルガナ盆地を分ける旧ソビエト連邦の3国のうちの1つウズベキスタン。ソ連から独立後25年以上にわたって大統領の座に就いて権力をふるったイスラム・カリモフ氏が9月2日に78歳で亡くなりました。


その後首相だったシャフカト・ミルジヨエフ氏が大統領代行を務めていましたが、12月5日に行われた大統領選挙で88.61%の得票率で勝利し、正式に大統領になることが決定しました。






アジアでは年末に韓国の朴槿恵大統領が知人を公務に深くかかわらせていたことが発覚し、12月9日に弾劾議案が可決され、職務停止となっています。すでに辞任を発表していましたが、弾劾が妥当だと判断された場合、大統領を罷免されることになります。







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ヨーロッパ


イギリス

テリーザ・メイ首相





6月23日にイギリスで行われた国民投票は世界に大きな衝撃を与えました。この国民投票で問われたのはEU(欧州連合)からの離脱の是非でした。世論調査では大きな差はないものの、EU残留の可能性が高いと見られていましたが、予想を裏切りイギリスはEUから離脱、ブレグジットが現実のものとなりました。


EU残留を訴えていた当時のデヴィッド・キャメロン首相は辞任を発表。7月13日に同じ保守党のテリーザ・メイ氏が首相の座に就きました。


「氷の女王」という異名を持つメイ首相はその実行力を買われて指名されたのですが、EU離脱についてもふたたび国民投票をすることも却下し、確実に離脱に向けて動くと断言しています。



また、イギリスの首都ロンドンの市長選挙が5月に行われ、初めてのイスラム教徒市長となるサディク・カーン氏が当選しています。


イタリア


パオロ・ジェンティローニ首相




イギリスと同じく国民投票の結果によって首相が交代したのがイタリアでした。マッテオ・レンツィ前首相は上院や地方政府の権限を弱める憲法改正案を国民投票でその是非を問うたのでしたが、12月4日の投票で反対が賛成を大きく上回りました。


責任を取る形でレンツィ前首相は辞任を表明。12月11日にマッタレッラ大統領は次期首相に外務相を務めていたパオロ・ジェンティローニを指名しました。


イタリアでは6月の地方選挙においてローマでビルジニア・ラッジ氏が、トリノでキアラ・アベンティーノ氏が当選するなど、ポピュリスト政党の「五つ星運動」が力をつけてきていて、これから政局に影響を与えそうです。




オーストリア


クリスティアン・ケルン首相




今年もEUの中でもっとも大きな懸案となったのが難民問題でした。ドイツがリードを取って積極的に難民を受け入れる姿勢を表明する中で、イスラム系移民によるテロがヨーロッパ各地で発生し、移民の流入に否定的な空気がさまざまな国で流れました。



オーストリアはその中でもはっきりと移民の受け入れに反対する動きを見せた国でした。隣国ハンガリーとの国境間で移民の取り締まりを強化をしています。


そんな中、難民政策で一貫性がないという批判を受けて辞任したファイマン前首相に代わって就任したのは社会民主党が推薦した国営オーストリア鉄道の社長クリスティアン・ケルン氏でした。



難民へ厳しい政策を堅持することを約束したケルン首相に続き、12月4日の大統領選挙では極右の自由党から立候補した下院第3議長ノルベルト・ホファー氏が当選するかと思われましたが、結果は「緑の党」元党首アレクサンダー・ファンダーベレン氏が勝利しました。


難民について穏健な意見を持ち、EUとの協調路線を取るファンダーベレン氏が大統領になることで、オーストリアの難民政策にも変化が出るかもしれません。





アイスランド


シーグルズル・インギ・ヨハンソン首相(10/31に辞意表明)





今年4月初め、マネーロンダリングや脱税を行っている世界中の政治家や経済人、有名人などがリストアップされた「パナマ文書」の存在が明るみになり、大きなニュースとなりました。


その中に名前があったのがアイスランドのグンロイグソン前首相でした。脱税ではなかったものの、妻アナ・パルスドッティルさんと共同で所有していた「ウィントリス」というオフショア会社の申告をせず、数百万ドルを隠匿していたことがわかりました。



2008年に財政破たんをしたアイスランドでは苦しい経済状態が続いていたのにもかかわらず、資産を隠していた事実に市民は怒り辞任を求める大規模なデモを起こしました。デモの翌日にグンロイグソン前首相は辞任。新しくヨハンソン氏が首相になりました。



10月29日に行われた総選挙では独立党と進歩党の与党が29議席、野党が27議席という結果になり、両者が拮抗した議会の勢力図となりました。


特に野党の「海賊党」は元ウィキリークスの活動家ビルギッタ・ヨンスドッティル氏が党首を務め2012年に結成した政党で、ネットによる直接民主制、プライバシーの保護、監視の反対などを主張していました。10月の総選挙では10議席を獲得しています。



あわせてどうぞ

2016年に指導者が交代した国々(アフリカ・北中南米・オセアニア編を)読む







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参照

http://www.bbc.com/japanese/35809569
http://www.huffingtonpost.jp/2016/10/17/pro-asami-about-thailand_n_12521308.html
http://www.sankei.com/world/news/160722/wor1607220049-n1.html
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/09/124.php
http://www.asahi.com/articles/ASJBZ41YZJBZUHBI00Z.html
http://wired.jp/2016/11/01/iceland-pirate-party/
http://www.afpbb.com/articles/-/3099710
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM30H1W_Q6A630C1EAF000/


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