およそ400万平方キロメートル、インドの面積くらいが縮小
6月30日、アメリカの科学雑誌「サイエンス」にマサチューセッツ工科大学の大気化学者であるスーザン・ソロモン教授が率いるチームが行った研究結果が掲載され、南極のオゾンホールが初めて縮小し、オゾン層が回復しつつあるということがわかりました。
オゾンホールは南極上空のオゾン層が極端に少なくなる現象で、ぽっかりとオゾン層に穴が開いた状態になることから名づけられました。オゾン層は太陽から降り注ぐ、生物にとって有害な紫外線を吸収する役割をしています。
オゾン層の傷口とも言えるオゾンホールは常に一定の大きさというわけではなく、8月からオゾン層に穴が開き始め、10月にもっともその広さが極大になり、再び小さくなっていきます。
ソロモン教授らは毎年9月に気球と衛星を使って観測を行いオゾンホールのシミュレーションをしてきましたが、2000年以降オゾンホールの大きさは400万平方キロメートル縮小していることがわかりました。
Antarctic ozone hole is on the mend. https://t.co/KBPihPsveS pic.twitter.com/aJlhhnJx1n— Nature News&Comment (@NatureNews) 2016年7月1日
「今回とても重要なのがオゾンホールの開口が遅くなってきているということです。開口の時期が遅く、穴が小さく、穴の深さも薄っすらとしている。それぞれの計測値は独立したもので、それらすべてがオゾンホールの回復を示唆しています。それ以外に説明がつきません」(ソロモン教授)
オゾンホールは2015年に記録的な大きさとなりましたが、これはその年にあったチリのカルブコ火山の噴火による影響だとソロモン教授たちは考えていて、やはりオゾンホール自体は縮小していると見ています。
オゾンホールの発見からクロロフルオロカーボンの規制へ
オゾンホールは1950年代にすでに発見されていましたが、その後カリフォルニア大学のマリオ・モリーナ教授とシャーウッド・ローランド教授の研究により、冷蔵庫やヘアスプレーに使用されるクロロフルオロカーボン(CFC)ガスなどがオゾンを破壊していることが明らかになります。
1980年代なかばには南極上空10kmのところにかなり大きなオゾンホールができていることをイギリスの科学者2人が発見します。
またソロモン教授は1986年に南極での観測を行い、CFCガスがオゾン層を破壊していることを確認します。
そして1987年に産業用CFCなどの使用を規制するモントリオール議定書に世界の多くの国が署名し、オゾンホールへの取り組みを地球規模で行ってきたおかげで、それからおよそ30年の年月が経ち、効果が表れてきたことを今回のソロモン教授たちの研究結果が示しています。
ソロモン教授たちのデータでは、まだオゾン層がある成層圏の塩素量が減っているとは言えないと指摘する科学者もありますが、国際協力によって地球環境問題を解決していくモデルとして、これからもオゾンホールがどうなるかは注目したいところです。
参照
http://news.nationalgeographic.com/2016/06/antarctic-ozone-hole-healing-fingerprints/
http://www.afpbb.com/articles/-/3092464
http://www.bbc.com/news/science-environment-36674996
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