ヒトの幹細胞を移植しブタのDNAを組み合わせた胚の成長に成功


ブタの体内で人間の臓器を生成できるようになるか



カリフォルニア大学の研究者たちは、ブタの体内でヒトの幹細胞とブタのDNAを組み合わせて28日間まで成長させることに成功しました。これによってドナーが不足している臓器をブタの体内でつくれるようになる可能性がでてきました。




幹細胞とは?

人間の細胞は全部で60兆個ありその種類は神経細胞や筋細胞など200以上に上りますが、その中には特定の役割を持っていない細胞があります。


それが幹細胞です。


私たちがけがをして皮膚をすりむいたり骨を折ったりしても回復するのは、けがをした場所に幹細胞が集まり必要な細胞に変容した後、分化と分裂する能力によるものです。



幹細胞には


  • 受精卵
  • ES細胞
  • 成体幹細胞

の3種類があります。






幹細胞を使ったキメラ技術





ドナーの提供が不足しがちな心臓や肺、肝臓などについて解決する手段になり得るこのいわゆる「キメラ技術」の研究は今年初めに実験の開始をしようとしていましたが、関係当局の反対にあっていました。



今年4月にはヒトに近い種であるヒヒとブタとの異種間臓器移植がアメリカとドイツの共同研究で行われ、移植されたブタの心臓でヒヒは2年半の生存することができました。








「ヒト化」したブタが生まれてくる危険性




アメリカの国立衛生研究所は2015年9月に、ヒトの脳細胞が使用された場合、その動物の認知能力に変化が起きる可能性があり、高度な知能やヒトとしての能力を持って産まれてくるかもしれないとして、こうした研究に懸念を抱いています。



生殖生物学の権威であるパブロ・ロス教授は「ごくわずかな可能性ではあるが、ヒトの脳が育ってしまうこともある」としています。



ロス教授が以前ブタの胚にヒトの幹細胞を注入した実験を行ったときにはヒトに適用できる臓器が成長することはなかったのですが、その後観察したところいくつかの箇所でヒトの細胞が成長途中のブタの胚で見つかったそうです。ブタの細胞とヒトの細胞がせめぎあっていたとのことです。




しかし、臓器が人へ移植できるようになっているだけなので、見た目や行動が他のブタと異なるようなことはないとカリフォルニア大学の研究者たちは考えています。




ブタはヒトの臓器をつくるには最適の動物であるとする研究者もいます。ミネソタ大学の脳神経外科教授のウォルター・ロー氏は、膵臓に心臓、肝臓、腎臓、肺さらには目の角膜もブタで生成し移植することができるとしています。




日本でも5月27日に厚生労働省がiPS細胞の安全基準が満たされたとして、1型糖尿病患者へのブタからの膵島細胞移植を容認しています。




関連記事:糖尿病の1型の治療に貢献する大きな研究結果が。膵臓内の分子Glima(グリマ)とは?







ロー教授はロス教授が観察し危惧しているブタの「ヒト化」を防ぐためにはTALENと呼ばれる遺伝子の特定部位を切り出す人工酵素を用いた遺伝子改変技術が必要になるとしています。まだ研究段階にあるTALENですが、これによって特定の臓器が生成されてしまうのを抑制することができるとロー教授は考えています。






しかし、ヒトの臓器をつくりだすために多くのブタが使い捨ての道具になるという意見もあり、倫理的な観点からもまだ検討しなければなりません。








https://www.theguardian.com/science/2016/jun/05/organ-research-scientists-combine-human-stem-cells-and-pig-dna
http://tocana.jp/2016/02/post_8696_entry.html
http://www.afpbb.com/articles/-/3083080
http://www.bbc.com/news/health-36437428
http://www.jiji.com/jc/article?k=2016052700920&g=soc
http://www.med.keio.ac.jp/gcoe-stemcell/treatise/2012/20130220_01.html




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