2010年に3200頭だった野生のトラが2016年に3890頭に回復
世界自然基金(WWF)とグローバル・タイガー・フォーラムによると、現在トラの生息数は世界で3890頭で、過去100年の中で初めてその数が増えたとのことです。1900年には10万頭のトラが野生にいたのが、2010年には3200頭にまで落ち込んでいました。
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「今、絶対数がどれだけいるかよりも、これからの傾向の方が大切。今の傾向がいい方向に向かっていると私たちは見ています」とWWFの野生動物保全上席副事務局長のジネット・ヘムリー氏は語ります。
インドやロシア、ネパールなどでの保護活動が実を結び、この数年でトラの数ははっきりと上昇傾向を示してきていて、中国でトラサミットが予定されている2022年には、2010年のとき(ロシアでのトラサミット)の3200頭の倍の数、6400頭にまで復活させることを目標にしています。
今回の発表が行われたのは、ナレンドラ・モディ首相の宣言によってインドのデリーで、トラが生息している13の国々の首脳が集まる第3回トラサミットでした。インドは世界で3890頭いるトラのうち、2226頭が生息しているとされ、全体の半数以上がインドにいることになります。
一方で、インドネシアやマレーシアでは熱帯雨林がパーム油やパルプの原材料になる植物へと植え替えられ、トラの数は減少しています。カンボジアでも密猟によってその数を減らしてしまい、野生では絶滅してしまったと言われています。同国ではふたたびトラを野生に戻す政策を検討しているとのことです。
世界各国のトラの数
世界の野生のトラの生息数の内訳を見てみると下のようになります。
2016年の野生のトラの生息数(推定)
- インド 2226頭
- インドネシア 371頭
- カンボジア 0頭
- タイ 189頭
- 中国 7頭以上
- ネパール 198頭
- バングラデシュ 106頭
- ブータン 103頭
- ベトナム 5頭以上
- マレーシア 250頭
- ミャンマー データなし
- ラオス 2頭
- ロシア 433頭
インドに続いて多いのは、ロシアの433頭で、次がインドネシアとなっています。中国はトラの密猟が行われている国で、現在は東北部の吉林省と黒竜江省7頭を超える程度の数だけになっています。
「数十年間、継続して減少していたのが、初めてトラの生息数が上昇しました。私たちにとっては大きな希望をもたらしてくれるものであり、政府や地域のコミュニティと保護活動家が一体となって動けば、種と生息地を守ることができるという証しであると思います」とWWFインターナショナルの事務局長、マルコ・ランベルティーニ氏は語っています。
2014年に、トラが生息しているすべての国が今回の2016年のトラサミットでその生息数を発表するという内容を参加国が合意しましたが、調査が完全でなかったり、公表していない国も見られました。保護活動にはまずその実態を把握していなければならないので、参加各国がこれからさらにトラの調査を正確に行っていく必要があります。
また、東南アジアでは生息分布がはっきりしておらず、亜種についてもよくわかっていない状態になっています。
現存するトラの種類
- シベリアトラ(中国東北部、ロシア極東部)
- アモイトラ(中国南部および西部)
- ベンガルトラ(インド、ネパール)
- スマトラトラ(インドネシア・スマトラ島)
- インドシナトラ(インドシナ半島)
- マレートラ(マレー半島)
バリトラ、ジャワトラ、カスピトラはすべて1900年代に絶滅したと考えられています。
2017年3月にタイ東部の国立公園内で絶滅危惧種のインドシナトラの群れが確認されました。少なくとも6頭の子供もいて、繁殖もしているようです。密猟や生息地域の検証などにより、インドシナトラは世界で250頭未満にまで減らしていています。
参照
http://www.bbc.com/japanese/39427264
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