サウジアラビアのサルマン国王がエジプトのシシ大統領と会談
2015年に国王の座についたサウジアラビアのサルマン国王にとっては初のエジプト訪問となる会談で、かねてから話題に上っていた紅海への架橋をエジプトのシシ大統領と合意に達しました。
「わが兄弟であるアブドゥル・ファター・アル・シシ大統領と両国をつなぐ橋を建設することで合意した」
サルマン国王はそう発表し、「この両国を結びつける歴史的な一歩は、アフリカとアジアをつなぐものであり、アフリカ大陸とアジア大陸の交易をかつてないほどまでに盛んにする質的変革となるでしょう」とその価値を強調しました。
紅海の上を走る全長50kmの橋はエジプトのラス・ナスラニ(リゾート地、シャルム・エル・シェイクの近く)とサウジアラビア北部のラス・ハミドを両端にして建設される予定で、周辺各国の経済活動を活発にする期待が高まります。
シシ大統領は完成した暁にはサルマン国王の名前を橋につけてはどうかと、今からその時が楽しみな様子。紅海への架橋だけではなく、南シナイに学校や住宅の建設も予定され、発電所も計画されるようです。借款の総額は20億ドルにものぼるという報道もあります。
中東情勢をにらんだサウジアラビアの狙い
今回のサルマン国王のエジプト訪問と同国への経済援助は、サウジアラビアと同じくイスラム教のスンニ派が大勢を占めるエジプトに今よりも積極的な役割を混迷する中東情勢で果たして欲しいという思いもあるようです。
中東情勢ではパレスチナはいまだにイスラエルとの関係が難しい状態にあります。3月31日にはヨルダン川西岸北部の町ナブルスでイスラエルがパレスチナ人のデモを弾圧するという事件が発生。
そのパレスチナを支援すると4月1日に声明を発表したイランとサウジアラビアは1月に国交を断絶しています。イランはシーア派国家。さらには原油価格を巡っても対立を深めています。
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2011年から国内での内戦が続くシリアは、政権を握るアサド大統領はシーア派の一派であるアラウィー派であり、スンニ派勢力と今も激しい戦闘を繰り広げています。サウジアラビアはそんなスンニ派勢力を支援しています。
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サウジアラビアは隣国イエメンの内戦にも介入をしています。イエメンでは2014年9月にシーア派の武力組織であるフーシ派が首都サヌアに侵攻。2015年1月にはハディ暫定大統領が辞任し、一度はイエメンの政権は瓦解します。そして2月にはフーシ派がイエメンでの政権樹立を宣言しましたが、ハディ暫定大統領も辞意を撤回し、両派は対立を深めています。フーシ派をイランが支援するや、サウジアラビアはハディ暫定大統領を支持しています。
一方、エジプトは観光客やスエズ運河の使用料、外国資本などの現象により国内資本が細り、経済を維持するためにはペルシャ湾岸周辺国の借款に頼らざるを得ない状況に置かれています。エジプトの経済をまず回復してもらい、同じスンニ派のリーダー格として勢力拡大に力を貸してもらえるようになるのをサウジアラビアは望んでの今回の訪問とさまざまな分野での援助ということになるようです。
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