民主党候補サンダース氏は訪問したバチカンで何を語ったのか。


バーニー・サンダース氏、ニューヨーク州予備選を前にバチカン市国で開かれた会議に出席



15日にアメリカ大統領選挙の民主党候補者であるバーニー・サンダース氏がバチカン市国を訪問し、経済、社会問題に関する会議に出席しました。バチカンには4日間の訪問になりますが、19日に開かれるニューヨーク州は大票田の予備選であり、候補者選びの選挙戦においてその結果は大きな影響を与えることになります。





それでもサンダース氏は今回の、「ローマ教皇庁アカデミー社会科学全体会議についての発表」への出席を決め、公演を行ってアメリカに戻り、14日にはニューヨーク市でクリントン氏と最低賃金や銃の規制、人工妊娠中絶などの問題について、いつにない激しい討論をかわしました。




ニューヨーク州の予備選を前に現地で選挙活動が実施できなくなるにもかかわらず、アメリカからはるか離れたバチカンを訪れたのは、訪問自体の効果とそこでの発言の注目度を考えての上なのでしょう。しかも、今回の訪問でフランシスコ教皇との会談を果たしたとのこと。



バーニー氏がサンピエトロ聖堂で訴えたのは、世界は“our efforts and vision to the common good(公益への努力と展望)”に大きく舵を切らなければならないというメッセージでした。






また、カトリック教会が続けてきた経済問題への教えについて、「市場経済についての倫理的な教えに関して、カトリック教会ほどの深さと識見に比肩しうる存在はそうない」と賛辞を送っています。




そして、サンダース氏がもっとも力を入れて称賛したのはフランシスコ教皇でした。薬も買うことができない高齢者や気候変動といった「何よりも深刻な問題」を誰よりも先に世界に向けて発信している人物であり、「ビジョンと分節性を持っている」と言っています。






「分節性」は言語学で、他の動物が大まかなまとまった意味を1つ伝えられるだけなのに対し、人間は単語を複雑に組み合わせてさまざまな意味を含ませて伝えられることを指します。フランシスコ教皇が今の世界で起きている社会問題に対して多角的な見方をし、それらを複合的に考えることができるということを伝えているようです。












サンピエトロ聖堂の外でのサンダース氏の発言



サンピエトロ聖堂の外に出たサンダース氏の発言を英文と日本語訳をつけて紹介したいと思います。




"Our youth are no longer satisfied with corrupt and broken politics and an economy of stark inequality and injustice,"

「私たちが生きている今の時代の若者は、腐敗し崩壊した政治や著しく不平等で不公平な経済にもう耐えかねている」



"enormous wealth of a few as opposed to the poverty of the many"

「巨万の富をわずかな人が握り、一方で数多くの貧しい人がいる」



"At a time when so few have so much, and so many have so little, we must reject the foundations of this contemporary economy as immoral and usustainable,"

「ごく限られた人だけが多くのものを持っているとき、多くの人がごく限られたものしか持っていない。非道徳的で持続的ではない今の経済の根本を拒まなければならない」



"Speculation, illicit financial flows, environmental destruction, and the weakening of the rights of workers is far more severe than it was a quarter century ago,"


「投機的な行為や不正な財政フロー、環境破壊、労働者の権利の衰退はこの四半世紀よりもかなり悪化している」



"Financial excesses, indeed widespread financial criminality on Wall Street, played a direct role in causing the world’s worst financial crisis since the Great Depression."

「行き過ぎた金融重視―ウォールストリートでは犯罪まがいの金融行為が実際に行われているが―は世界恐慌以来、世界最悪の金融危機を直接的に引き起こしてきた」



"I have been enormously impressed with Pope Francis speaking out and his visionary views about creating a moral economy, an economy that works for all people, not just the people on top,"


「フランシスコ教皇の発言と道徳的な経済についての先見性ある見識には心から感銘を受けている。教皇の考える経済は万人にとって利するもので、頂点にいる人間だけが享受するものではない」





本サイトのサイドバーの「アメリカ大統領選挙、獲得代議員数の速報」からアメリカ大統領選の獲得議員数の数字とグラフが見られます





トランプ氏とフランシスコ・ローマ教皇で交わされた舌戦



フランシスコ・ローマ教皇


「よきキリスト教徒なら彼に投票するだろうか」




一方、2月にはアメリカ大統領選挙の共和党候補討論会で、支持率トップを走るドナルド・トランプ氏は他の候補者から集中砲火を受ける場面がありましたが、息つく暇もなく今度はかなり大きな存在との論戦に対応しなければならなくなりました。




「神のご加護によるものだろう、私は政治的な人間だと彼は言う。それもそうだ、アリストテレスは人間らしい人間は政治的な才能を持った動物だと定義している。つまり私は少なからず人間らしい人間ではあるということだ」ローマ教皇はこうコメントしています。




これは教皇のメキシコへの訪問についてトランプ氏が「教皇は実に政治的な人だ」と発言したことを受けての言葉でした。



さらにフランシスコ教皇はトランプ氏のメキシコ移民の排斥政策に対して意見を出しています。






アメリカとメキシコの国境
アメリカとメキシコの国境






「壁を作ることしか考えず―それをどこに作ろうかは関係なく―、橋を作ろうとしない人はキリスト教徒とは言えない。キリスト教の教えの中に壁を作るなどということはありえない。



その人に投票するか否かについて私が何か忠告をするんじゃないかという発言について言えば、私はそれに介入するつもりはない。彼がああいうことを言うのであれば、キリスト教徒ではないと言いたいだけだ。



彼があのような発言をしたことについて実際にどうなのか見ていかなければならない。疑わしきは罰せずだ」




トランプ氏もこれを受けて反論。「私はよきキリスト教徒だ」



「万が一バチカンにISISが攻撃を仕掛けたとしたら、それはISISにとって究極の戦勝記念日になったのだと誰もが思うだろう。請け合ってもいい。人々がただ願い祈るのは、ドナルド・トランプが大統領になるということだけだ」

持ち前の強い論調でトランプ氏は反論しています。




「宗教的指導者が個人の信仰に疑問を持つのは恥ずべきことである」とさらにつけ加えてます。




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