人身売買の世界的な現状を知っていますか?

人身売買 鎖

世界で行われている人身売買の実態



2015年にカタールのドーハで開かれた第13回国連犯罪防止刑事司法会議の本会議で、ワークショップの1つとしてテーマにあがったのが人身売買でした。



2000年に国連は人身取引議定書を犯罪として規定されているものの、現在でも世界中で毎年数百万人から数千万人もの人が人権を奪われた状態での搾取を受け続けています。そんな世界の人身売買についてクローズアップしたいと思います。







「生命が取り引きされ、売買され、搾取され、虐待され、破壊される無情な人権侵害である人身取引は、世界で最も恥ずべき罪悪の一つです。影響を受けていない国は一つもなく、数百万の生命が危機に瀕しています。私たちは団結して立ち向かい、問題にスポットライトを当て、人身取引業者を刑務所に送り、被害者と危機にさらされている人々を保護し支援を提供しなければなりません」 - 潘基文(パン・ギムン)前国連事務総長




人身売買とは

人身取引議定書では人身売買(英語:human trafficking, trafrficking in person)を次のように定義しています。



搾取の目的で、脅迫、暴力その他の強制力、誘拐、詐欺、欺もうなどにより、人を支配下に置き、輸送し、引き渡し、かくまい、又は引き取ること ―人身取引議定書



人身売買はまさに奴隷として扱われ人権が侵害された状態で、各地の犯罪組織が利益を目的として行っています。必ずしもその国の中にとどまるわけではなく、被害者は別の国や別の大陸にまで連れて行かれて搾取されることも少なくありません。






何のために人身売買がされるのか


その国や地域によって被害者となった人がなにをさせられるのかは異なってきますが、次の3つが主たるものになります。


  1. 性的搾取
  2. 強制労働
  3. 臓器売買


性的搾取は全体の半数近くに上り、次に40%くらいが強制労働、そして臓器売買と続きます。そのため、被害者の49%が成人女性であり、少女が21%という数になっていて、男性は18%、少年が12%となっています(2011年UNODCの活動より)。別のデータでは79%が性的搾取という数字もあります。



女性や少女の場合には強制的に結婚をさせられることもあります。







強制労働は過酷な状況の中で農園や園芸、建設などの肉体労働を始め、接客業であったり家事をさせられるケースも見られます。



また、南スーダンのように内戦が続いている国では兵士として戦われています。



南スーダンの内戦が始まった原因とは?







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なぜ人身売買はなくならないのか


146の国と地域で人身売買は犯罪であると定めた法律があるのにもかかわらず、人身売買がなくならないのはどうしてなのでしょうか?



それは、犯罪組織にとって薬物や武器取引と同じように人身売買が大きな収入源となっているためです。人身売買で世界中の犯罪組織全体で数十億ドル(数千億円)にも及ぶ利益を得ていると見られています。



やはり違法な売春や生産事業を行っている組織はこうしたルートで支配下においた人々を働かせることで法外な収入を得ています。そうしたグループは常に人を求めているため、売買をするブローカーの仕事がなくなることはありません。



また、各国や各地域の対応が進まないことも人身売買が減らない要因のひとつとなっています。



法律は制定されているものの、罰則や監視を強化するシステムが構築されていないために野放しになっているのが現状のところも多く、警察も人身売買ネットワークを把握できていないために捜査が遅れています。



地域の中で長くこの犯罪が行われているところでは、人が売り買いされている状況が住民にとって当たり前になってしまい、非難されるべき行為であるという意識が低くなっているのもブローカーが活動しやすい環境を作りだしています。






世界各地の人身売買の状況


下のPDFは2013年のデータになりますが、世界各国での人身売買の危険度を色に分けて表したものです。



Trafficking_2013_Press_Map_22.pdf



そしてこちらが人身売買の被害に遭い、強制的に売春や労働をさせられる危険度を示したものです。



Forced_or_Involuntary_Labour_Index_2013_Map_Final.pdf



最初の地図と次の地図を見比べると、人身売買が起きている国と連れ去られた人が働かされている国とでいくらか差があることがわかります。



アメリカや南米、西ヨーロッパやロシアでは、その国からよりも他の国から連行されてきた人が強制労働をさせられていることがわかります。



しかし、2014年のGlobal Slavery Indexによる調査では3人のうち2人がアジアで連れ去られてきた人だという結果が出ています。



人身売買の被害者数が多い上位10ヵ国には、インド、中国、パキスタン、インドネシア、バングラデシュ、タイと6つアジアの国の名前が挙がっています。そしてその数は、1位がインドの1400万人、2位が中国の320万人、3位がパキスタンの210万人となっています。





また、近年アメリカやヨーロッパでは不法移民を標的にした人身売買も増えてきています。




2017年7月23日にはアメリカのテキサス州で大型トラックに38人が詰め込まれているのが発見され、暑さのために10人が死亡するという事件が起きています。






アメリカの支援団体Polarisでは、国内での発生率を地図にヒートマップとして表しています。



The Facts | Polaris



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参照


http://www.unic.or.jp/news_press/info/13448/
www.unodc.org/unodc/en/human-trafficking/what-is-human-trafficking.html
humantraffickinghotline.org/type-trafficking/human-trafficking
http://www.unodc.org/documents/data-and-analysis/glotip/GLOTIP_2014_full_report.pdf
http://dailysignal.com/2014/11/20/nearly-two-thirds-human-trafficking-victims-asia/


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