イスラム教のラマダンについて知ろう!
毎年一度、1年の真ん中あたりになると、イスラム教の「ラマダン(断食)」が始まったというニュースが流れるようになります。
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ムスリムの人たちにとって大事な戒律の1つですが、実は毎年少しずつ時期がずれているって知っていましたか?イスラム教徒の人は世界に16億人いるという統計が出ていますが、中東や東南アジア、アフリカなどの海外ニュースを読み解くうえでもラマダンは重要なキーワードとなります。
ラマダンについて、断食を行う理由や時期、テロとの関係などについてクローズアップしてみたいと思います。
ラマダン(英語:Ramadan)とは?
~サウムは水を飲んでもいいのか?~
ラマダン(アラビア語: رمضان)はイスラム教の六信五行(6つの信条と5つの義務)のうちの五行の1つ断食(サウム)を行う1ヶ月のことを指しますが、正確には「イスラム暦第9月」のことを意味します(インドネシアでは断食をプアサと言います)。
この期間の間、日の出から日没の間は飲食をしてはいけないことになっています。食事だけではなく、水分を取ることも禁じられています。
六信はアッラー・天使・コーラン(クルアーン)・預言者・来世・定命の6つ、そして五行は信仰告白・礼拝・喜捨・断食・メッカ巡礼です。
礼拝と同じく、イスラム圏の国を離れていてもラマダンに入ったらサウムを行わなければなりません。ラマダンのころ、「ラマダン・カリーム」(رمضان كريم)という挨拶が交わされますが、意味としては「ラマダンは寛大」という直訳になりますが、「よいラマダンを!」といったニュアンスになります。
これに対して、「アッラーはより寛大」という意味の「アッラー・アクラム」という返事をします。
~ラマダンの理由~
イスラム暦の9月は、西暦610年に預言者ムハンマドが絶対神アッラーから聖典コーラン(クルアーン)の啓示を受けた月とされているため、さまざまな欲を捨てて信仰心を高め、神への献身と奉仕を行うことを目的としています。
ラマダンというと断食のサウムだけがよく知られていますが、修行のために喫煙や性交渉、いさかいごと、悪口なども忌むべき行為として固く禁じられています。
2017年6月14日にはチュニジアで、ラマダン中の日没前に公共の場で喫煙をした罪で逮捕された男性が、1ヶ月の禁固刑を言い渡されています。
ラマダンの期間について
~どうしてラマダンがずれるのか?~
最初にラマダンは毎年少しずつずれている、と書きましたがそれはイスラム暦が関係しています。ヒジュラ暦とも呼ばれるイスラム暦は、ムハンマドがメッカからメジナへと移ったヒジュラ(聖遷)の年を起点としています。
西暦(グレゴリオ暦)が地球の公転周期をもとにしているのに対し、ヒジュラ暦は月の満ち欠けの周期を基準にしています。なんとなく私たち日本人は世界中がグレゴリオ暦を使っているような気がしてしまいますが、イスラム社会ではヒジュラ暦を採用しています。
そして、ヒジュラ暦の1年は354日です。グレゴリオ暦よりも1年が11日短いことになります。このためにグレゴリオ暦を使っている私たちにとっては、毎年ラマダンの時期が11日早くなるように見えるのです。
ムスリムの人たちにとっては別に早くなっているわけではないんですね。
2019年は5月5日ごろから6月4日ごろまでになります。
来年の2018年はそれから11日早くなるので、5月16日ごろから6月14日ごろまでとなります。「ごろ」と少し日にちをあいまいにしているのは、ラマダンの開始と終了は新月を各地域の宗教指導者などが確認した時点となっているので、天候が悪く新月が確認できなかった場合には翌日に延期されます。
また、北極に近い地域では白夜の時期と重なってしまい、新月が確認できないときもあります。そうした地域では近隣地域の時刻を参考に断食を行います。
~断食は何時から何時までか?~
断食は日の出から日没までという決まりですが、それは日にちや地域によって差が出るということでもあります。ムスリムの人はラマダンの間の日の出や日没などの時刻を教えてくれるカレンダーをもとにして予定を立てます。
日本にも10万~20万人のムスリムが生活していますが、国内のイスラム教宗教法人が下のような東京などの日の出や日没のカレンダーを紹介しています。
~ラマダンの免除~
ラマダンはムスリムの義務ですが、100%の人が行わなければならないわけではありません。以下の人たちはサウムが免除されるか、あるいは同じ日数だけ別の時期に行います。ラマダンが免除される人
- 旅行中の人
- 高齢者
- 生理中の人
- 妊娠中の人
- 授乳を行う人
- 重い疾患を持っている人
また、ムスリムではない人はラマダンでも日中の飲食は許されていますが、ムスリムの人の前や公共の場での飲食や喫煙などは控えるよう通達されています。これを破るとチュニジアでの例のように逮捕されてしまうこともあります。
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~断食後と前の食事、イフタールとサフール~
ナツメヤシの実(デーツ) |
日が沈むとようやく食べ物や飲み物を口にできるようになりますが、サウム後の食事をイフタールといいます。
イフタールはイスラム教で許された食品、ハラールであれば大丈夫ですが、多くの人は冷たい水とナツメヤシの実(デーツ)を食べて胃を慣らすことが多いようです。
栄養価の高いデーツは神が与えた食べ物としてムハンマドが食べたという話からムスリムの人は習慣としてイフタールにしているようです。
イフタールは各家庭でそれぞれ食べるというよりも、大勢集まってする食事でモスクでイフタールを提供したり、イスラム教団体が主催する会も多く開かれます。
インドのイフタールの様子#RamadanStories 🍍🍉🍇🍎— Naushi Ansari (@naushi_ansari) 2017年6月11日
Beloved AIMIM MLA @warispathan Sahab Attended Iftar party Organised By his Area People at kalapani byculla constituency pic.twitter.com/4QfN8SLDqe
イフタールをそのまま続けて次の日のサウムを迎える人もいますが、一度イフタールを終えて、朝にサウム前の食事サフールをとるのが一般的です。
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ラマダン明け
~イード・アルフィトル~
29日あるいは30日間のラマダンが終わるとヒジャブ暦の第10月シャッワールとなり、1日からラマダン明けを祝うお祭りイード・アルフィトル('īd al‐fiṭr)が行われます(マレーシア・シンガポールではハリ・ラヤ・プアサ、インドネシアではレバランと言います)。イスラム社会全体がお祝いムードに包まれ、たくさんのごちそうが町中にあふれ、人々は服を新調して外出したりモスクへ礼拝に行きます。
ラマダンとテロ
このように、イスラム教にとっては大事な行事にあたるラマダン月ですが、ここ数年ラマダン月内あるいはラマダン明けを狙ったテロが続いています。
2016年には日本人の犠牲者も出たバングラデシュのダッカでラマダン月最後の週だった7月1日に飲食店でテロ事件が発生。同年7月4日にはイラクの首都バグダッドで120人以上が死亡、約200人が負傷するテロが起きています。これはほんの一部に過ぎず、イスラム圏のどこかで毎年のようにラマダン近くにテロ事件が発生しています。
~どうしてラマダンを標的にしたテロが起きるのか?~
イスラム教の聖戦(ジハード)は他教徒との戦いを意味していますが、1年の中でズールカーダ月(第11月)からズールヒッジャ月とムハッラム月の3ヵ月は聖月(じっとして動かない月)にあたり攻撃を仕掛けられないかぎりはあらゆる戦闘を中止します。
しかし、ラマダン月は聖月ではないのです。アッラーのために献身と奉仕をする月なのです。
断食などをして信仰心を高めるための月なので、敬虔なムスリムの人にとっては気持ちが高揚する月であるとも言えるので、それを利用したテロも起こりやすくなります。
ISなどのイスラム過激派の戦闘員にとってはラマダンのころに他教徒や厳格な教えに従わないムスリムを殺害することがアッラーへの貢献だと考えます。
また、ラマダンでは五行の1つである喜捨(ザガート)も積極的に行われるようになるため、過激派組織の戦闘員ではないものの、その思想に共鳴したムスリムから組織の援助となるザガートとしてお金を寄付され活動が活発になるという面もあります。
逆にこうしたザガートを集めるための宣伝の目的としてテロ活動をラマダン前に行うこともあります。
外務省も海外に渡航する人向けにラマダンを標的にしたテロへの注意喚起をしていますが、この時期に外国に行かれる方は人が多く集まる場所を避けるなど対策を講じた方がいいでしょう。
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参照
http://www.bbc.com/news/world-africa-40273859
http://withnews.jp/article/f0170605001qq000000000000000W03510101qq000015349A
http://macaro-ni.jp/32579