内戦によるシリア難民の数や現状。寄付、支援先情報も


レバノンでオリーブ収穫作業の合間に休むシリアからの難民男性
レバノンでオリーブ収穫作業の合間に休むシリア男性

シリア難民の行き先


2016年12月に激戦地アレッポがアサド政府軍によって解放され、2017年1月シリア内戦は同国とロシア、トルコを中心にイランを加えてカザフスタンの首都アスタナで和平協議が開始しました。


しかし、2011年に始まったこの内戦で住む場所を追われ難民となった人たちは世界中に住む場所を求めて移動し、ヨーロッパでは住民との軋轢や治安の悪化など難民問題として大きく取り上げられました。ISの勢力も根強く残っていて、シリア人がシリアに住むことがままならない状態が続いています。





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シリア内戦によって生まれた難民はどのような状況にあるのか、数字や生活にクローズアップしてみたいと思います。




シリア難民の数

国連難民高等弁務官事務所 (UNHCR:United Nations High Commissioner for Refugees)の統計によると以下のようになっています。(2017年2月1日現在)



シリア国外の難民の数

490万人



シリア国内にとどまっている難民の数

660万人



住む場所を失ったシリア難民の総数

1150万人




シリアの人口はおよそ2300万人です。つまり2人に1人がもともと住んでいた家から離れていて、さらに5人に1人が国外にいるのが現状となっています。













シリア難民の受け入れ国ランキング

世界各国でシリア難民の受け入れを行っていますが、難民認定の数から多い順に見てみましょう。(2017年2月1日現在)



1 トルコ 285万人
2 レバノン 101万人
3 ヨルダン 65万人
4 イラク 23万人
5 エジプト 11万人


下のサイトは受け入れ総数の推移をグラフにして表しています。



» Focus on SyriansMigration Policy Centre – MPC



やはり周辺国に多くの人が移ったことがわかりますが、中でもトルコはもっとも多くの人が認定を受けています。2016年にはギリシャ経由でヨーロッパに流入するバルカンルートを封鎖し、移民をトルコに送還する合意をEUとの間で結んでいることから、シリア人の数はさらに増えています。



西ヨーロッパを目指す「バルカンルート」とは?




シリア周辺国ですが、カタール、UEA、サウジアラビア、クウェート、バーレーンではシリア難民の受け入れを行っていません。ロシア、韓国、シンガポールなどでも同様ですが、日本も現在まで6人というのが現状です(2021年までに日本は300人の受け入れを検討)。



ヨーロッパでは2011年4月から10月までのあいだに88万4461人のシリア人が難民の申請をしていますが、そのうちの64%がドイツとスウェーデンで合わせた数となっています。




国外に渡ったシリア難民の生活の例

もちろんどんな生活をしているのかといっても、どの国に行ったのか、どの地域に行ったのか、いつ行ったのかなどさまざまな条件があり、ひとくくりにすることはできません。


難民キャンプ


移った先の国で居住が認められる場合もあれば、難民キャンプでの生活を強いられている人も数多くいます。






ザータリ難民キャンプに見るシリア人の姿|国連UNHCR協会


旅人が「シリア人難民キャンプ」に泊まって見たもの





2016年4月にはギリシャのレスボス島を訪れたローマ教皇フランシスコが12人のシリア人をバチカン市国に連れて帰るという極めて異例の出来事もありました。




移民先での生活


アルジャジーラが取材したのは、トルコに住んでいるひとりの20歳のシリア人男性でした。


1年ほどでシリアに戻るつもりだったのがすでに4年そこで働き暮らしているということです。最初は収入も少なく、一部屋を14人でシェアをしていたということ。現在はケバブ屋のマネージャーとして週7日、1日12から15時間働いているものの「いい感じ」だと満足しています。以前よりもきれいな部屋に4人でシェアしてい住んでいます。



世界で最もシリア難民を受け入れているトルコですが、キャンプの環境がよくないというアムネスティ・インターナショナルの指摘があるなど、問題点も少なくないようです。



1月19日に国連児童基金(ユニセフ、UNICEF)がトルコに渡ったシリアの子供の40%以上、40万人近くが教育が受けられていないと発表をしました。トルコ国内で学校に登録した子供の数は2016年の6月以降50%以上増えたものの、通っていないのが現状だということです。



アメリカやドイツ、そして日本で暮らすシリア難民はどのような生活を送っているのでしょうか。




























シリア難民、ドイツでの生活は?





日本が受けいれた「シリア難民」はこれまでたったの6人──「東京に圧倒された」そのうちの1人が明かした本音 | クーリエ・ジャポン






2017年1月までにすでに40081人のシリア難民の受け入れを完了しているカナダでは、もともとの政策として難民は入国すれば永住権が与えられることになっています。入国後の生活がスムーズに行くように、語学学習のサポートや医療サービスが無料で受けられます。



語学習得と医療に関しては国と州が支援しますが、それ以外の生活自立に向けたサービスは民間企業が行い、難民が入国してから1年間を請け負うことになります。




カナダの民間難民受け入れ(プライベート・スポンサーシップ)に学ぶ(難民支援協会HP)









シリア国内の現状


3月に入り、スイスのジュネーブで和平協議が始まりましたが、ジャファリ国連大使がトップを務めるアサド政権側と反政府側の「最高交渉委員会(HNC)」の代表団のあいだで主張が大きく隔たり、再開と中断を繰り返しています。反政府側は和平協定を結ぶには、アサド大統領の退陣が不可欠であるとしているのに対し、大統領は反体制派の一部がテロ支援組織であるとして非難しています。





2016年12月13日にアサド政権軍が激戦地アレッポを制圧し、政権を支援していたロシア、トルコ、イランが主体となって和平交渉を進めているため、反政府側のアメリカの影響力が弱まっています。



また、トランプ大統領はロシアとの距離を縮める外交方針を取っているため、アサド大統領の退陣についても、3月31日にアメリカのニッキー・ヘイリー国連大使が「アサド政権の打倒は最優先事項ではない」とコメントしてます。









全体ではシリア内戦は小康状態に向かっているように見えますが、まだまだ国内では戦闘が続いています。3月21日には政府が支配下に置いているシリア北西部の都市ハマに対してシリア解放機構を中心にして自由シリア軍やアハラール・アル・シャーム・イスラム運動など10以上の反政府勢力が攻撃を行いました。



これにより子供や女性を中心とした4万人がハマ市から避難しています。




アルカイダから離脱したアルヌスラ戦線は、2016年7月に「シリア征服戦線」という名称に変更し独自の行動をしていましたが、2017年1月28日に同組織の解散を発表。反政府勢力と併合してシリア解放機構として活動しています。





Syrian Civil War Mapは英字サイトですがシリア国内の勢力図が地図上でわかりやすく表示されていて、随時情報が更新されているのでシリアの現状を知ることができます。








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Best Map of Syrian Civil War - Live Map of Syria / Syria News





赤が政府軍、緑が反政府軍、黄色がシリア民主軍(SDF)やクルド人民防衛部隊(YPG)などのクルド人勢力、そして黒がIS・ISS・ダーイッシュの勢力となっています。


サイトの右には、何日にどこの勢力が攻撃した(attacked)、占拠した(captured)、~と…のあいだで戦闘があった(crushes between)、奪回した(recaptured)、司令官が死んだ(killed)などの情報が更新されています。











アサド政権側がふたたび掌握したホムス西部のワエル地区で、戦争によって破壊された排水管の修理をする人たち






「気温が低くなっていく中、シリア内戦によって家を追われた数万人の市民は今年も薄いビニールテントか半壊状態の廃屋で冬をしのいでいる」







少しずつ情勢が安定しつつあるシリアですが、まだ半数近くが家を追われた状況にあり、これからも長期的な支援が必要となっています。




2018年2月

ISとの戦いはある程度落ち着いた状態になり、アサド政権はもうひとつの抵抗勢力である反政府勢力への攻撃を激化。東グータでは連日政府軍による空爆が行われ、一週間で子供121人を含む500人以上が死亡。一部では化学兵器が使用されたという報告もあります。



2月24日に国連安保理は人道援助を東グータに届け、重体の傷病者の避難・搬送を可能にするため、シリア全土で30日間の停戦を求める決議を採択。ロシアのプーチン大統領は限定的停戦を指示したものの、アサド政権は攻撃を継続しています。





寄付・支援先









☆ニュース・イングリッシュ☆


  • 難民…refugees
  • 難民の受け入れ…accept refugees, receive refugees
  • 難民認定…refugee status determination; refugee recognition
  • 和平協定…peace agreement












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参照
https://www.amnesty.org/en/latest/news/2016/02/syrias-refugee-crisis-in-numbers/
http://data.unhcr.org/syrianrefugees/regional.php
http://www.aljazeera.com/indepth/features/2016/07/syrian-refugees-struggles-turkey-intensify-160717072943845.html
http://www.afpbb.com/articles/-/3114832
http://www.aljazeera.com/news/2017/03/syria-40000-displaced-fighting-rages-hama-170328141437289.html

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