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2倍以上の得票差をつけてラッジ氏が民主党候補に勝利
6月19日にイタリアの首都ローマで地方選挙の決選投票が行われ、政治腐敗と悪化した公共サービスの一掃をスロガーンにした野党「五つ星運動」の候補者ビルジニア・ラッジ氏(37)が勝利し、史上初の女性市長が誕生することになりました。
80%を超える投票率の結果、ラッジ氏の得票率は67%以上で、レンツィ首相が後押しする与党の民主党候補者ジャケッティ氏の得票率は32%あまりで、ジャケッティ氏は出口調査の結果が出始めて1時間もたたずに敗北宣言をするほどの大差の結果となりました。
Yeah! Revolution in Rome! For the 1 time a woman elected Mayor! Virginia Raggi will have to fight corruption & decay pic.twitter.com/MnNAJsho4S— Peter Birro (@PeterBirro) 2016年6月20日
「やったぜ!ローマに革命が訪れた!女性初の市長だ!ビルジニア・ラッジの政治の汚職と腐敗への戦いはこれから始まる」
ローマでは2015年10月に民主党のイニャツィオ・マリーノ前市長が公用金の流用疑惑で辞職し、さらにはローマ市と犯罪組織「首都マフィア」との癒着も明るみになっていたことが、反政治腐敗を掲げるラッジ陣営を後押しした背景と言えるでしょう。
「ローマの行政に合法性と透明性をもたらすために働くつもりです。これはローマ市民の勝利です」とラッジ氏は支持者に向けた演説をしています。
ビルジニア・ラッジ氏は現在37歳、ローマ生まれローマ育ちで、市の郊外に息子と一緒に暮らしています。イギリスの雑誌「エコノミスト」に紹介されるほどの敏腕弁護士ですが、数ヶ月前までローマ市長選の候補者としては無名の存在でした。
Virginia Raggi faces five key tests if she becomes Rome mayor https://t.co/kOQstDDWmf pic.twitter.com/1NhhzCPdHr— Global Issues Web (@globalissuesweb) 2016年6月19日
トリノでも五つ星運動が民主党に勝利
右派政権与党の民主党としては、投票前からローマでの苦戦は予想していたようですが、同じ日に行われたトリノ市でも現職市長の民主党候補ピエロ・ファッシーノ氏がやはり「五つ星運動」の女性候補キアラ・アペンディーノ氏に敗れています。トリノでは反移民の右派政党「北部同盟(Northern League)」がアペンディーノ氏を支持し、情勢が傾いたようです。
#Torino #maratonamentana Il discorso della vittoria di Chiara #Appendino— Il Fatto Quotidiano (@fattoquotidiano) 2016年6月19日
LEGGI: https://t.co/gIpf4GmV5P pic.twitter.com/G0W1X3ZEM4
EU懐疑派の「五つ星運動」
今回ローマとトリノという大都市で勝利を収めた「五つ星運動」は反体制的なポピュリズムの政党で、コメディアンのベッペ・グリッロ氏が7年前に設立しました。緊縮財政を求めるEUに対して大衆の気持ちをそのまま汲みとって批判する立場を取っています。
ベッペ・グリッロ党首Dopo il caos Roma Beppe Grillo "ristruttura" il Movimento 5 Stelle https://t.co/s6NXwFAe1H pic.twitter.com/JusBXa1fKx— Today (@Today_it) 2016年9月12日
参考記事:英国のEU離脱に賛成の立場の人、反対の立場の人
6月23日にはイギリスでEU離脱を巡る国民投票が実施されますが、ラッジ氏とアペンディーノ氏の勝利によってEUに加盟していることの是非を問う風がこれからヨーロッパで強くなる可能性があります。
イタリアだけに限らず、ヨーロッパは極右政党が徐々に拡大していて、EUからの離脱を求める勢力が議席を増やしています。
<追記>
オリンピック招致の断念
9月21日にラッジ市長は2024年の夏のオリンピック招致を断念することを発表しました。就任前からオリンピックの招致活動に反対していたラッジ氏はあらためて財政難の状態にあるローマ市が招致喝度を続けるのは「無責任」だとして打ち切る方針を決定しました。
開催地が東京に決定している2020年のオリンピックにもローマは途中まで立候補していましたが、やはり市の財政が危機に瀕していたために断念していました。
重要な決定権のはく奪
12月16日にラッジ市長の側近ラファエル・マーラ氏が住宅政策の担当を務めていた2013年に不動産関係者から金銭を不正に受け取っていたことが明らかになり、汚職の容疑で逮捕されました。
ラッジ市長もこの事実を確認し、グリッロ氏はラッジ市長から人事を決定をする権利をはく奪することを発表しました。クリーンな政治を掲げて市民から大きな支持を得てきた政党であるだけに、グリッロ氏は厳しい姿勢でこの事件に対応しています。
ラッジ市長はこれ以降、人事を決定する際には最終的に五つ星運動の承認が必要とされることになりました。しかし、グリッロ氏はラッジ市長を支援する姿勢を続けています。
「五つ星運動」についてもっと詳しく知る
参照
http://www.nytimes.com/aponline/2016/06/19/world/europe/ap-eu-italy-mayoral-elections.html?_r=0
http://www.huffingtonpost.jp/2016/06/19/who-is-virginia-raggi_n_10563786.html
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160620/k10010562571000.html
http://www.afpbb.com/articles/-/3090992
http://news.livedoor.com/article/detail/11663087/
http://www.ibtimes.com/italy-elections-5-star-defeats-pm-renzis-party-virginia-raggi-be-romes-first-female-2384162
http://www.jiji.com/jc/article?k=2016061900079&g=int
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM21H6L_R20C16A9000000/
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