 |
| picture by Jiyang Chen |
「お金は何よりも安く、自由は何よりも高価だ」
２５日、ニューヨークを行きかう人のファッションを撮り続けた『ニューヨークタイムズ』の写真家ビル・カニンガム氏が脳卒中で入院していたニューヨーク市の病院で87歳で亡くなりました。
どこよりも早く『ニューヨークタイムズ』が彼の訃報を報じ、特集を組んでその死を悼んでいます。
Bill Cunningham, who died at 87, turned fashion photography into his own branch of cultural anthropology https://t.co/gt9XFF9BYx— The New York Times (@nytimes) 2016年6月26日
スポンサーリンク
ニューヨークタイムズの編集長アーサー・オックス・サルツバーガー・ジュニア氏は「私たちは伝説的な人物を失った。そして私個人としては友人を失った痛みに打ちひしがれている」とコメントを寄せています。
飾らない人柄で相手の地位や肩書、収入を一切はねつける公正さを持った人物でしたが、2008年にはフランス政府からレジオン・ドヌール勲章を受勲し、2010年には日本でも公開された自身が主人公のドキュメンタリー映画が制作されるなど、本人の心とは裏腹にセレブの仲間入りをするほどの著名人となっていました。
As Anna Wintour once said, “We all dress for Bill.” Remembering the legendary @nytimes photographer: https://t.co/ObOan7m1bX— Vogue Magazine (@voguemagazine) 2016年6月25日
彼は映画『ビル・カニンガム＆ニューヨーク』の中で、「私は借り物のドレスを着たセレブに興味はない。人の服装に私は関心があるのだ」と言い切っています。
それでも彼の死を惜しむ声は著名人の中でも数多く上がり、モデルのイマン・アブドゥルマジド、ファッションデザイナーのマーク・ジェイコブス、女優のアン・ハサウェイなどが自身のＳＮＳで別れの言葉を述べています。
ビル・カニンガム&ニューヨーク [DVD]
ビル・カニンガム氏はもともと写真家ではなく、最初のキャリアは百貨店ボンウィット・テラーの広告部で始まりました。その後「ウィリアム・Ｊ（William J.）」という婦人向け帽子のブランドを立ち上げ、帽子デザイナーとして活動するようになります。
しかし、朝鮮戦争を機に帽子の世界から離れ、ファッション雑誌『ウィメンズ・ウェア・デイリー（Women's Wear Daily）』でファッションジャーナリストとして活躍。そして1978年からニューヨークタイムズ紙での仕事が始まります。
それから38年にわたってニューヨークの街角に自転車で５番街や57ストリートにでかけカメラ片手に待ちゆく人々を見つめ、声をかけ、写真を撮り、そして時には撮影も忘れて話に興じるのでした。今では彼の影響を受けた若き写真家たちが同じように５番街や57ストリートで同じようにカメラを持って立っている光景が見られるようになりました。
スポンサーリンク
ニューヨーカーのファッションにこそカニンガム氏が関心の対象となるもので、次第に書籍や展示会、そして受勲や映画と高まっていってしまう自身の名声も彼にとってはどうでもいいもので、あくまで写真を披露する場はインスタグラムがメインとなっていました。
公正を期するためにパーティの席では水一杯も受け取らなかったというように、決してセレブの世界に迎合することがなかったカニンガム氏ですが、それでも多くの有名人から愛されたのはその公正な姿勢が大きかったのでしょう。電子版ワシントンポスト紙は彼のことを"ethical jounalism（倫理的な報道精神）"を持った人というタイトルをつけた記事を書いています。
In the life of Bill Cunningham https://t.co/7aGffzNNZS pic.twitter.com/y66EiBiWzw— NYT Styles (@NYTStyles) 2016年6月26日
カニンガム氏はニューヨークの通りで撮影するときにも華やかなパーティで著名人を撮るときでも、トレードマークの青いフランス製のジャケットを羽織っていました。それは彼にとっての仕事着であり、場所や被写体が変わろうとも写真家として同じように一生懸命に撮影、仕事をするという気持ちの表れだったのです。
そしてジャーナリズムの公平さを保つためにフリーな立場でいることを望み、映画の公開によって見も知らない人たちが自分にさまざまな声をかけてくるようになり、仕事がしづらくなったと嘆いていたと言います。カニンガム氏の有名な言葉にこのようなものがあります。
“If you don’t take money, they can’t tell you what to do. Money is the cheapest thing. Liberty and Freedom are the most expensive.”
「お金を受け取らなければ、相手は君ああしろこうしろとは言えないはずだ。お金とは何よりも安いものなんだ。勝ち取った自由や享受している自由、何にもまして高価なものとはそういったものだ」
こちらをクリックして2016年に亡くなったモハメド・アリ氏について読む
参照
http://www.cbsnews.com/news/bill-cunningham-new-york-times-fashion-photographer-dies-at-87/
http://www.nbcnews.com/pop-culture/lifestyle/bill-cunningham-iconic-new-york-times-street-style-photographer-dies-n599021
http://www.nytimes.com/2016/06/25/fashion/bill-cunningham-social-media-reactions.html
http://www.huffingtonpost.com/entry/bill-cunningham-dead-dies_us_55e47499e4b0c818f6187671
https://www.wwdjapan.com/business/2016/06/26/00020860.html
https://www.washingtonpost.com/news/arts-and-entertainment/wp/2016/06/26/what-bill-cunningham-taught-us-about-ethical-journalism/
スポンサーリンク
こんな記事もあります
