https://youtu.be/XOJpzGws4mY |
戦禍が続くシリア内戦において、アサド政府軍と反政府軍などとアレッポの町で戦闘を続けているイスラム過激派組織のアルヌスラ戦線が7月28日に発表を行い、母体となる国際テロ組織アルカイダから離脱することを表明しました。
アルカイダの内部分裂ではないようで、中東のテレビ放送局アルジャジーラで公に姿を初めて見せたアブムハンマド・ジャウラニ最高指導者(写真真ん中)は「アルカイダ司令官らが関係解消の必要性を理解してくれた」と説明しています。
関連記事:アレッポでの停戦合意。シリア全土の戦争終結につなげられるか
「シリア征服戦線」に込められた意味
また、アルヌスラ戦線という組織の名前も「ジャブハト・ファタハ・アルシャム(Jabhat Fateh al-Sham)」に改めるとしています。アラビア語で「シリア征服戦線」という意味で、もともとアルカイダの中でシリアを拠点とする組織だったものが、さらに独立性を高めてシリアでの生き残りをかけようという意思がかいま見られます。
ジャラウニ指導者はアルジャジーラの録画された動画の中でシリア戦線の性格についてこう述べています。
「海外のいかなる組織とも連携を取らない」
「我々はアルヌスラ戦線という活動を止め、新たな組織をつくる。新体制では海外のいかなる組織とも連携を取らない」
これはアルカイダと距離を置き、さらには同じくアレッポで戦闘を繰り広げているISとの区別をつけるためであると思われます。
先のリンクの関連記事のように、政府軍を支援するロシアと反政府軍を支援するアメリカは綱渡りの状態であるとはいえ、アレッポでの停戦状態をつなぎ、第3勢力であるISへの攻勢を強めようとしています。
いずれは政府軍あるいは反政府軍との衝突は避けられないにしても、まずは対抗勢力であるISの力を2大国の支援によって弱めてもらい、同時にイスラム勢力ということで一緒に標的にされてしまうことも避ける目的があります。
ジャラウニ指導者はシリア征服戦線が「海外組織との連携」を取らず、あくまでシリア国内の勢力として存在し、ISやアルカイダのように国際テロ組織として活動しないのだからこれからはアメリカもロシアもを標的にする理由がないはずだと主張しています。
アーネスト報道官「アメリカとしての認識は変わっていない」
しかしアメリカはそうしたシリア征服戦線の言うシリア国内だけの勢力という宣言によって認識をあらためる意志はなく、ジョシュ・アーネスト報道官は「ヌスラ戦線の指導者たちはこれからも西側の国に対してあるいはその国内での攻撃の意図を捨てていないと判断している」とコメントしています。
2012年に初めてアレッポとダマスカスでの自爆テロについて犯行声明を行ったアルヌスラ戦線はその後国連安全保障理事会でも存在が確認され、ロシアとアメリカのテログループにリスト入りしました。
2月のアレッポでのロシアとアメリカの停戦協定の中でもIS勢力と同じくアルヌスラ戦線もこの話し合いのメンバーから除外されています。
関連記事:アサド政権がシリアの一部地域で停戦。アメリカとロシアの働きかけで
<追記>
シリア征服戦線は1月28日に同組織の解散を宣言。シリアの反政府勢力と統合しています。
参照
http://www.newsweek.com/nusra-front-splits-al-qaeda-and-renames-itself-avoid-us-russia-strikes-485277
http://www.afpbb.com/articles/-/3095621
http://www.aljazeera.com/news/2016/07/al-nusra-leader-jolani-announces-split-al-qaeda-160728163725624.html
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